そのコンサル、脳を殺してませんか? 〜「正解」を教わると、人はバカになる〜
こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。
今日は、次男のサッカーの試合の応援で静岡に来ています。
新チームになって初めての公式戦。スタンドで見ている親の私まで緊張してしまいます。
ピッチ上では、監督やコーチから熱い指示が飛び交っています。
「そこ、開いてるぞ!」「打て!」「戻れ!」
選手たちはその声に反応して必死に動くのですが、ふと、職業柄(研修講師)の癖で冷静に見てしまう瞬間があるのです。
「今、彼は自分で考えて動いたのか? それとも、言われたから反射的に動いただけなのか?」
もし、ベンチからの指示が、未来ある選手たちの「考える力」を奪ってしまっているとしたら……。
今日ご紹介する本の一節を読んだとき、これはスポーツだけの話ではなく、私たち大人のビジネス社会でも全く同じことが起きていると戦慄しました。
「専門家の助言が、実は脳をシャットダウンさせている」
今日は、そんな残酷すぎる思考の罠と、そこから抜け出すためのヒントをお話しします。
🧠 専門家の前で、脳は「ログアウト」する
『残酷すぎる成功法則』(エリック・バーカー著)に、こんな衝撃的な記述があります。
専門家が何かを助言すると、人びとの脳の一部は実際にシャットダウンしてしまうことがわかっている。
(中略)
「脳活動パターンに見られるこのような結果は、専門家への信頼感によって意思決定の転嫁が引き起こされることを示唆している」
これ、比喩ではありません。
fMRI(磁気共鳴機能画像法)で見ると、本当に脳の「意思決定をつかさどる領域」がオフになってしまうそうなのです。
なぜ、私たちはこんなにも簡単に思考を手放してしまうのでしょうか?
💡ちょこっと理論紹介💡
👛認知的節約家(Cognitive Miser)
人間の脳は体重の約2%の重さしかありませんが、エネルギーの約20%を膨大に消費します。
そのため、脳は常にカロリー消費を抑えようと、思考の近道を探す性質を持っています。
「専門家=正解」というショートカットを使うことで、脳は自分で考えるという「高コストな計算」を節約(オフロード)しようとするのです。
要するに、脳がこう言っているわけですね。
「あ、詳しい人がいるなら、もう私が働かなくていいですね。おやすみなさい」
そしてスリープモードに入ってしまう、と。
🏃♂️ トレラン初心者の私が陥った「思考停止」
実はこの現象、私自身も痛いほど心当たりがあります。
私は来月2月、知人の誘いでトレイルランニング(山岳マラソン)の大会に初めて出場することになりました。
正直、練習不足で焦っています。
するとどうなるか。
ネットや書籍で「トレラン 初心者 完走」と検索し、専門家らしき人が書いた「これをやれば大丈夫!」という記事を見つけると、根拠も吟味せず、反射的に飛びつきたくなるのです。
・「このシューズが良いと言われたから買う」
・「このペース配分が良いと言われたから守る」
そこには、
「自分の体力ならどうなるか?」
「今の天候ならどうか?」
という自分なりの思考(シミュレーション)が、すっぽり抜け落ちています。
もし当日の山で想定外のことが起きたら、マニュアル頼みの私は一歩も動けなくなるでしょう。

仕事も同じです。
「コンサルタントが言ったから」「社長が言ったから」「マニュアルに書いてあるから」。
そう言った瞬間、私たちの責任感と当事者意識は蒸発し、失敗した時の言い訳だけが残ります。
💡ちょこっと理論紹介💡
🥼権威への服従(ミルグラム実験)
心理学者スタンレー・ミルグラムの実験では、人は白衣を着た権威ある博士の指示であれば、罪のない他者に電気ショックを与え続けることが示されました。
このとき人は「代理状態(エージェント状態)」に入ります。
つまり、「自分がやったのではなく、指示されたからやった(自分は代理人に過ぎない)」という心理状態になり、自律的な道徳心や責任感が麻痺してしまうのです。
🛠 「オヤジ」の教えに学ぶ、自律の極意
では、どうすれば「脳のシャットダウン」を防げるのでしょうか?
ここで思い出すのが、ホンダの創業者、本田宗一郎のエピソードです。
彼は、海外の技術提携や専門家の意見を、ただ模倣することを極端に嫌いました。
部下が「他社ではこうしています」「専門家によると理論的にはこうです」と報告すると、カミナリを落としたと言います。
「見たり聞いたり試したりの三つの知恵で考えろ」
専門家の意見(聞く知恵)は大事だが、それだけで決めるな。
自分の目で見て、自分で試して、自分の頭で考えろというわけです。
彼は専門家を「答えを教えてくれる人」ではなく、「自分の思考を刺激する材料」として扱っていたのでしょう。
私も研修講師として「型」や「理論」をお伝えする立場ですが、それを鵜呑みにされると少し不安になります。
「足立講師はそう言うけど、ウチの現場ならどうだ?」
「もし、この専門家が間違っているとしたら、最大のリスクは何か?」
そんなふうに、私の言葉を「疑う」ことから始めてくれる受講者に出会うと、実は一番嬉しく、信頼できるなと感じるのです。
サッカー少年たちも、私たち大人も。
ベンチや権威からの指示は、あくまで「ヒント」。
ピッチの上で最後に決断を下すのは、いつだって自分自身でありたいですね。
よければ、あなたの職場で最近あった「思考を外注してしまった瞬間」をひとつだけ、思い出してみてください。
そこに、次の成長の入口が隠れているはずです。
それでは、また。
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■書籍『リーダー1年目から結果を出す人がやっていること』
「上司の指示待ち」から脱却し、自律的に動くチームを作るための具体的な手法をまとめました。
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