同窓会の案内状が来ていた。 一九九〇年代前半の文学部卒業生を対象としたもの… だが同窓会は今まで一度も行ったことがない。一つのことを避けていたからだ… 再編 不器用な先生 第172回
十月二日(月)
文系学部倫理学
『エマ』の二回目
みどり山ではエマが人間として大きく成長していく箇所に感動する学生が多かった。
ここでも大差はないのだが、ナイトリーをエマが愛していることに気づくとき、男子学生の多くがが安堵したような顔をしたのが興味深かった。
ぼくも『エマ』を初めて読んだとき、ナイトリーが最後どうなるのかって気になって仕方なかったことを思い出した。男と女で読み方が異なるとは思わないが、受け取り方に微妙な差異が生じるのは当然かもしれない。
終えたとき、佐竹依織から質問があった。
「次回は教育について話をされるんですね?」
不思議に思ったが、曽根君のことが思い起こされて可笑しくて仕方なかった。
「でも来週は休日だね」
「月曜日の授業は休日にかかることが多くって残念です」
「そうだね。年間を通して月曜日の授業は他の曜日の授業より二限ほど少なくなるからね」
少ないことを喜ぶ学生のほうが多いのが当然のようだが、佐竹依織たちは喜んではないようだった。
十月三日(火)
同窓会の案内状が来ていた。
一九九〇年代前半の文学部卒業生を対象としたものらしく、今回は浜村が幹事をしていた。添え書きには家族同伴で来られても構えわない旨が、書き添えてあった。
彩がどうしても行きたいという。浜村の家族に会ってみたいらしい。
だが同窓会は今まで一度も行ったことがない。一つのことを避けていたからだ。
「ちょっと考えさせてくれないか?」
彩には、こう答えておいた。
「なんか、行きたくなさそうな顔をしてる。浜村さんに、環を見せたら喜んでくれると思うんだけど?」
「うんそうだろうね。でも少しだけ考えさせてほしいんだ」
「おかしな、信ちゃん。
でも、考えるの。明日一杯しか、あげないからね]
不承不承ながら頷くしかなかった。
帰ってきた環に彩が案内状を見せていた。環も関心を持ったようだ。
「あの服着る機会が増えたんだよね!」
「でも、パパは行きたくないらしいよ」
「どうして、変だよね。パパ、何かあったの?」
環ににらまれてるような気がして、つい天井を見つめていた。
「こんな怖い雰囲気のパパって始めてだよ!」
「そうなのよ。この案内状を見てから機嫌が悪くなってるの。悪戯坊やみたいにね」
環が笑い出した。でもぼくは、なにか切なくなっていた。
