どんな方かって思ってたんですけど、可愛い方なんですね… 環! それって年上の女性に言うことば? あら、そうだったかしら。ごめんなさい! 綺麗な方っていうの間違えちゃった… 再編 不器用な先生 第171回
十月一日(日)
来週八日は大岡茂樹と岡田充恵の結婚式だ。その予行で会場となるホテルに行った。
環が岡田充恵を早く見たいと言ってたから連れていくことにした。それは彩が言い出したことだったが。
ホテルのロビーに着いたのは約束の十時より二十分ほど早かった。でも大岡茂樹と岡田充恵の二人ともすでに来ていた。大岡茂樹は笑顔だったが、岡田充恵は少し緊張しているようだった。
大岡茂樹がぼくに気が付くと手を振った。三人でそこまで行くと、近くに五十代と思われる男女がいた。それは岡田充恵の両親だった。
「この度は娘がお世話になります」
二人からの丁寧な挨拶だった。とくに父親の挨拶には娘への愛情が感じ取れた。環を振り返ってしまった。
緊張していた充恵だったが、彩や環と話を始めると笑顔が観えてきた。環の遠慮ない口ぶりが良かったみたいだ。
「どんな方かって思ってたんですけど、可愛い方なんですね」
「環! それって年上の女性に言うことば?」
「あら、そうだったかしら。ごめんなさい! 綺麗な方っていうの間違えちゃった」
充恵とその母親が噴出してしまった。
父親が言った。
「可愛いお嬢さんですね。わたしが可愛いって言うのは許してくれますね」
機知にとんで優しさを窺わせる父親だった。充恵の感性は父親から貰ったものなんだろう。
各人の役割分担などが一通り決まった。式の最後の挨拶は充恵の父の岡田治樹がやるらしい。
大岡茂樹の両親も充恵が一人娘であることを考慮して、岡田治樹がやることに賛成しているらしい。娘を持つ父親の気持を誰もが理解していることに、同じ立場の人間として嬉しさが沸いてくるのを感じていたと思う。
打ち合わせが終わったとき、十二時半を少し過ぎていた。岡田治樹が近くのレストランを予約していて、それにぼくたち親子三人も誘われた。
また大岡茂樹の両親もそこに現れた。職人肌の夫婦で気さくな人柄のようだが、結婚式は苦手のようだった。だから岡田治樹にすべてを任す方が気楽だと思っていたに違いない。
環はよほど嬉しいらしくって岡田充恵と話し続けていた。姉ができたような気持なのかもしれない。
岡田充恵のほうは妹を持ったような気持だったのだろうか?
