#017|売上をつくるより、利益を残す方が難しい。
2026 夏|THOUGHT
売上が一億円ある。
聞こえはいい。
でも、一億円売って一円も残っていなければ、
僕にはあまり意味がない。
逆に、売上はそれほど大きくなくても、
ちゃんと利益が残る。
働く人に還元できる。
次の投資もできる。
僕は、そちらの事業の方が強いと思っている。(昔は真逆の思考でしたが。)
事業を考える時、
僕が最後に見ているのは、
「で、いくら残るの?」という、とても単純なことだ。
(昔はいくら売れるの?でしたが)
——
売上という数字は分かりやすい。
一億円。
三億円。
十億円。
大きければ大きいほど、
なんとなく会社も大きく見える。
だから僕も当然、売上は見る。
でも、
売上だけを見て事業を判断することは、ほとんどない。
例えば、
一億円売って、
最後に一千万円残る事業。
同じ一億円を売って、
ほとんど何も残らない事業。
売上だけ見れば、
同じ一億円だ。
でも僕にとっては、
全く違う事業だ。
飲食店をやっていると、
これはものすごくよく分かる。
お客様がたくさん来る。
店は満席。
予約も取れない。
スタッフも忙しく働いている。
売上も上がっている。
傍から見れば、
ものすごく繁盛しているように見える。
でも、
食材原価が高すぎる。
人件費がかかりすぎる。
家賃が高い。
光熱費も高い。
設備も壊れる。
修繕もある。
決済手数料もある。
全部払ったら、
「あれ、何が残ったんだ?」
ということが普通にある。
これは宿泊事業でも同じだ。
一泊30万円で売れた。
それだけ聞けば、
ものすごく儲かりそうに聞こえる。
でも、
一泊30万円という数字だけでは、
僕には何も分からない。
年間何泊売れるのか。
清掃はいくらかかるのか。
料理をどうするのか。
サービススタッフは必要なのか。
予約をどう取るのか。
建物の維持費はいくらなのか。
温泉や庭の管理はいくらかかるのか。
だから僕は、
「一泊いくらで売れます」
と聞いても、
それだけではあまり興奮しない。
その次に知りたい。
「で、いくら残るの?」
事業開発でも同じだ。
格好いい企画がある。
建築も素晴らしい。
場所もいい。
話題にもなりそうだ。
僕はそういうものが大好きだから、
放っておくと、いくらでも夢中になってしまう。
だからこそ、
意識的に数字へ戻る。
いくら投資するのか。
いくら売れるのか。
粗利はいくらなのか。
固定費はいくらなのか。
何年で投資を回収するのか。
借入をするなら、
返済したあとにいくら残るのか。
そして、
想定より売上が二割落ちても耐えられるのか。
僕は事業計画を考える時、
うまくいった時の数字だけではなく、
少し失敗した時の数字を見る。
事業計画なんて、
数字を良く見せようと思えば、
いくらでも良くできる。
客単価を少し上げる。
稼働率を少し上げる。
原価率を少し下げる。
それだけで、
Excelの中では素晴らしい会社ができる。
でも、
現実の商売はExcelほど素直ではない。
雨も降る。
雪も降る。
台風も来る。
人も辞める。
機械も壊れる。
食材も値上がりする。
工事費も上がる。
競合もできる。
だから、
少しくらいうまくいかなくても死なない事業にしておく。
僕はその方が大切だと思っている。
もちろん、
利益だけを追えばいいわけでもない。
料理の質を落とす。
人を減らす。
サービスを削る。
建築も家具も安くする。
それで利益率だけを上げても、
お客様が来なくなったら意味がない。
難しいのは、
価値を落とさずに、利益を残すこと。
僕らは商売をやっている。
実際のお金を使っている。
そこで働く人がいる。
取引先がいる。
借りたお金は返さなければならない。
店をつくれば、
その店を守らなければならない。
だから僕は、
プロとして商売をしている以上、
利益を残すことは責任だと思っている。
売上をつくるのも難しい。
でも、
売上をつくりながら、
価値を落とさず、
人にも還元して、
必要な投資もして、
最後にちゃんと利益を残す。
僕は、その方がずっと難しいと思っている。
失敗すれば修正する。
数字から逃げない。
守るべきものを守る。
それが、
商売をするプロとしての仕事だと思っている。
