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地方で疲れた看護師、美容クリニックの求人票にまんまと惹かれる

※前回はこちら
↓東京の地名も家賃も分からず、求人票の時点で固まった話です。

東京の求人票を見て、私は少し疲れていた。

地名は分からない。
家賃は高い。
職場の雰囲気も分からない。

求人票を見ているだけなのに、すでにお腹いっぱいになっていた。


1. 美容クリニックの求人だけ、妙に色気があった

どの駅がいいのか分からない。
どの職場が現実的なのか分からない。
給料が高く見えても、家賃を見た瞬間に夢が一回しぼむ。

そんな中で、ひときわ目に留まった求人があった。

美容クリニックである。

きれいな院内と制服。
日勤のみ。
高年収。
未経験歓迎。
都会っぽい勤務地。

出た。

地方の病棟で疲れた看護師が、いちばん弱いやつである。

きれい。
夜勤なし。
給料もよく見える。

これはもう、かなり都合がいい。

他の求人が、
「条件をよく確認してください」
という顔をしている中で、

美容クリニックの求人だけは、
「あなた、こっち側に来てみない?」
みたいな顔をしていた。

求人票なのに、妙に色気があった。

やめてほしい。
こっちは疲れているのだ。

2. 日勤のみ・高年収・未経験歓迎に弱すぎた

病棟看護師にとって、夜勤は大きい。

夜勤手当はありがたい。
ありがたいけれど、体は削られる。

肌は荒れる。
生活リズムは崩れる。
休みの日も、なんとなく回復で終わる。

性格も少し曲がる。

いや、性格が曲がったのを全部夜勤のせいにしてはいけない。
そこは元からの可能性もある。

でも、とにかく疲れていた。

そんな私の目の前に、

日勤のみ。
高年収。
未経験歓迎。

この三つが並んでいた。

強い。

その下に小さく、

「今の自分から抜け出せるかもしれません」

と書いてある気がした。

書いていない。
幻である。

でも私は、求人票の余白に、勝手に自分の願望を書き足していた。

3. そこまで不幸じゃないのに、このままが怖かった

その時働いていた病棟が、全部嫌だったわけではない。

たぶん、私はどこにでもいる普通の看護師だった。

このまま地元で働くこともできた。
それなりに暮らしていくことも、きっとできた。

でも、その「できる」が怖かった。

何も起きないまま、
家と職場を往復して、
いつもの道を通って、
いつもの人間関係の中で、
少しずつ年を取っていく。

それが、妙に怖かった。

地元が嫌いだったわけじゃない。
親が嫌いだったわけでもない。
病棟が泣くほどつらかったわけでもない。

ただ、このまま何もせず、

「まあ、こんなものか」

と自分を納得させていくのが怖かった。

そんな時に見た美容クリニックの求人は、
人生の出口に見えた。

大げさである。

ただの求人票に、人生の非常口みたいな役割を背負わせていた。
美容クリニック側も、そこまで頼まれていない。

でも、あの頃の私は本気だった。

都会で働く、少しきれいな私。
今より少し違う場所にいる私。

言っていて恥ずかしい。
でも、こういう恥ずかしい願望ほど、人を動かすことがある。

これは立派なキャリア戦略ではない。

もっと成長したいとか、
専門性を高めたいとか、
そういうきれいな理由だけではなかった。

きれいな場所で働いてみたい。
都会っぽい自分になってみたい。
今の自分を、少しだけ脱ぎたい。

そういう、口に出すと少し恥ずかしい願望があった。

履歴書の志望動機には書けない。

「都会っぽい自分になりたいため」
なんて書いたら、普通に落ちる。

面接でも、もちろん言わない。

でも、人生を動かす本音って、案外そういうところにある気がする。

4. 正論より、見栄と憧れが強かった

きっと周りに相談したら、こう言われたと思う。

「看護師なら地元でも働けるでしょ」
「わざわざ東京に行かなくても」
「美容クリニックって大丈夫なの?」
「今の職場を辞めるのはもったいないんじゃない?」

全部、正しい。

本当に正しい。

でも、正しい言葉で納得できるなら、私は夜な夜な東京の求人票を見ていない。

きれいな志より先に、見栄があった。
ちゃんとした計画より先に、憧れがあった。
冷静な判断より先に、

「このままは嫌だ」
があった。

正論に負けそうになる。

でも、私の中の見栄と憧れは、まだ黙ってくれなかった。

私は、美容クリニックの求人にまんまと惹かれていった。

5. そして、転職サイトに登録する

美容クリニックに惹かれた。

でも、東京のことは分からない。
転職のことも分からない。
どの駅がいいのかも分からない。

こういう時、人はプロに頼りたくなる。

私は人生で初めて、転職サイトに登録することにした。

プロに相談すれば、きっと何とかなる。

そう思った。

ここから少しずつ、人生が動き出す。

……はずだった。

そして普通に失敗する。


次の話はこちら

美容クリニックに惹かれた私は、
人生で初めて転職サイトに登録した。

でも、転職サイトは人生の引っ越し業者ではなかった。

↓画面越しのある一言で、
私は顔が熱くなるほど悔しくなります。


↓ 実際に美容クリニックで働いた後の話はこちらにまとめています。


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