『アベンジャーズ・ドゥームズデイ』向けのネタバレ⑩『デッドプール&ウルヴァリン』

ドゥームズデイまでのタイムライン

読者諸君、これよりお話しするのは、旧世紀の遺物として捨て去られようとしていた20世紀フォックスのヒーローたちが、崩壊の危機に瀕した自らの世界(アース10005)を救うため、血と肉を撒き散らしながら時間の狭間を暴走する破天荒な救済の記録、映画『デッドプール&ウルヴァリン』である。


【あらすじ】

かつて世界を救うことを諦め、中古車販売員として冴えない日々を送っていたウェイド・ウィルソン。

しかし、時空統制組織TVA(時間変異取締局)の異端児パラドックスが、ウェイドの生きる世界を独断で消滅させようと暗躍。彼らの世界を繋ぎ止めていた絶対的存在(アンカー)であるウルヴァリンの死によって世界が枯れゆく事実を知ったウェイドは、愛する人々を守るため並行世界へと飛び立つ。

他次元から「最低のウルヴァリン」を引きずり出すも、二人は時空のゴミ箱「虚無(ボイド)」へ突き落とされ、そこに君臨する残酷な能力者カサンドラ・ノヴァとの命懸けの死闘へ巻き込まれていく。


1. 構造の解剖:死せる世界の救世主と破滅への狂想曲

物語は、ライアン・レイノルズ演じるデッドプールことウェイド・ウィルソンが、映画『LOGAN/ローガン』で壮絶な死を遂げたウルヴァリンの墓を掘り返すというショッキングな奇行から幕を開ける。伝説のヒーローが実は生きているという淡い期待は脆くも崩れ去り、遺体は痛々しいアダマンチウムの白骨と化していた。そこへ現れた時空統制組織TVAの兵士たちを、ウェイドはローガンの遺骨を凶器に変えて血みどろに殺戮していく。

物語の時間は、彼がなぜTVAの追手に追われることになったのかという「過半年前の回想」へと遡る。ヒーローとしての目的を失い、モレナ・バッカリン演じる最愛の恋人ヴァネッサとも破局して中古車販売員として失意の日々を送っていたウェイドは、誕生パーティーの最中にTVAへと強行拘束されたのだった。

TVAの変容とパラドックスの暴走、そして「アンカー」の呪縛

ドラマ『ロキ』シーズン2の結末において、ロキが自らの身を捧げて「世界の樹(ユグドラシル)」となり、時間の玉座に着いたことで、TVAはかつての「不要な時間軸を理不尽に剪定(消滅)する危険組織」から「無限のマルチバースを保護・監視する組織」へと生まれ変わっていた。ウミ・マサク演じる最高幹部B-15らが平和的な監視体制を敷く中、それに不満を抱いていたのがマシュー・マクファディン演じる管理官パラドックスであった。

パラドックスは、ウェイドの属するアース10005が、その世界の基軸存在である「アンカー・インディビジュアル」——すなわちヒュー・ジャックマン演じるローガン(ウルヴァリン)の死によって、数千年かけて緩やかに崩壊する運命にあると告げる。パラドックスは時間が枯れるのを待つ焦燥に耐えかね、独断で「タイム・リッパー」という巨大兵器を用い、アース10005を即座に消滅・処分しようと画策していたのだ。

愛する人々を救いたい一心で、ウェイドはTVAからタイムパッドを強奪。並行世界の生きているローガンをスカウトしようと多次元を暴走する。小柄な原作忠実版、長髪の変異体、カジノで佇むパッチ姿など、無数のウルヴァリンに接触を試みるも悉く拒絶・失敗。最終的に彼が強引に連れ出したのは、自分の世界でX-MENの仲間たちを見殺しにし、自暴自棄となって酒に溺れる「全宇宙で最も失望された最低のローガン」であった。

虚無(ボイド)の支配者カサンドラと「ドゥームズデイへの因果」

パラドックスの企みを阻止しようとした二人だったが、激怒したパラドックスによって、あらゆる剪定された世界の吹き溜まりである「虚無空間(ボイド)」へと突き落とされてしまう。そこで二人が直面したのは、プロフェッサーXの双子の妹であり、相手の頭部に物理的に指を突っ込んで精神を汚染・操作する凄惨な能力を持つ、エマ・コリン演じるカサンドラ・ノヴァの絶対的支配であった。

カサンドラはTVAからボイドへ棄てられた変異体であり、ボイドを自らの王国として牛耳っていた。彼女はパラドックスと裏で密約を交わし、ボイドでの自由と権力を引き換えに暴君として君臨していたのだ。

この「剪定された世界の破片が集積する虚無(ボイド)」の存在こそが、今後の『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』および『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』へ繋がる最大の物理的・構造的伏線となっている。現在海外のファンや考察陣の間で熱く議論されているのが、「アンカー・インディビジュアルとは何なのか」という真理だ。

特定の重要人物が死ぬことで世界そのものが崩壊に向かうというこの残酷なシステムは、メイン世界(アース616)における「ロバート・ダウニー・Jr演じるトニー・スターク(アイアンマン)の死」と強く呼応している。トニーの死によってアース616もまた緩やかな崩壊(インカージョン)のカウントダウンに入っており、その残骸の上に降臨するのが、トニーと同じ顔を持つ男、ロバート・ダウニー・Jr演じるドクター・ドゥームではないかという考察である。壊滅したアースの破片(ボイドに漂うような空間)をドゥームが力づくで強奪・縫い合わせることで、絶対統治国家「バトルワールド」が完成するのだ。

反乱軍との結託、デッドプール軍団の襲来と「ピーター」の救い

ボイドへ突き落とされた直後、二人はクリス・エヴァンス扮する旧『ファンタスティック・フォー』のヒューマン・トーチことジョニー・ストームと遭遇するも、カサンドラに捕らえられ、ウェイドの告げ口によってジョニーはカサンドラの超能力で全身の皮膚を剥ぎ取られて即死してしまう。

拠点から脱出した二人は、荒野での血みどろの互傷を経て、ジェニファー・ガーナー演じるエレクトラ、ウェズリー・スナイプス演じるブレイド、チャニング・テイタム演じるガンビット、ダフネ・キーン演じるローラ(X-23)ら「反乱軍」と合流。彼らと結託してカサンドラの拠点へ乗り込み、マグニートーのヘルメットで能力を封じた末に現実世界へ生還する。

しかし追ってきたカサンドラはパラドックスのタイム・リッパーを奪い、全時間軸の消去を試みる。タイム・リッパーのある地下へと向かう二人だったが、そこへ次元の裂け目から無数の「デッドプール軍団(レディ・デッドプール等)」がなだれ込み、絶体絶命の死闘へと発展する。この絶望的な乱闘を収拾させたのが、何の能力も持たない平凡な男、ロブ・ディレイニー演じるピーターであった。全並行世界のデッドプールから無条件で愛される彼の登場によって軍団の戦意は喪失し、ピーターはウェイドにとって「システムのアンカー」を超えた『魂の真のアンカー』としての役割を果たしたのである。

軍団を退けた二人は地下へと突入。物質と反物質のエネルギー流が渦巻く中、ウェイドとローガンは互いに手を繋ぎ、過剰負荷を肉体で分配。タイム・リッパーは逆流・爆発し、その破壊エネルギーに巻き込まれたカサンドラ・ノヴァは肉体が蒸発して完全消滅を遂げ、アース10005は壊滅から救われたのだった。

ポストクレジットシーンの真実と多次元の因果

本作のポストクレジットシーンにおいて、デッドプールはTVAの記録映像を提示し、虚無空間でカサンドラに皮膚を剥ぎ取られて惨殺されたジョニー・ストームが、実はデッドプールの濡れ衣ではなく、実際に自らの口でカサンドラに対する酷烈な悪口を言い放っていたという「決定的な証拠」を暴露して笑いを誘う。

一見するとデッドプールらしいメタ的なギャグシーンであるが、ここには非常に深いMCUマルチバースの構造的意味が隠されている。

かつてクリス・エヴァンスが演じたジョニー・ストームの存在がボイドに漂流していたという事実は、映画『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップス』で描かれるレトロフューチャーなアース(別次元)の存在と直接結びついている。異なるアースから流れてきたヒーローたちがボイドを経由して消滅・交錯するこの一連のシステムは、今後の『ドゥームズデイ』において様々な次元のファンタスティック・フォーやアベンジャーズが衝突し、マルチバースの境界が完全に崩壊していくことを証左しているのである。

かつて歴史の陰に捨て去られた者たちは、血反吐を吐きながら己の存在を刻み込み、世界の崩壊を繋ぎ止めた。


2. 異彩を放つ空間美と技術の対比

  • 虚無(ボイド)のビジュアルディレクション: 巨大な20世紀フォックスのロゴマークが砂に埋もれる不気味な荒野の美術デザインは、実写の旧映画セットと最新のVFXを高度に融合させて作成された。実物大のアナログな残骸と超現実的なVFX空間の対比が、旧世代ヒーロー映画の終焉と新たなMCUマルチバースへの接続というテーマ性を強烈に際立たせている。


3. 総評

かつて他社レーベルの陰で歴史の泡として消えかけていたヒーローたちが、過剰な暴力と溢れんばかりの愛によってMCUの本流へと鮮烈に合流を果たした、マルチバース編最大の金字塔。

本作で確立された「アースの消滅を食い止めるアンカー・インディビジュアル(基軸存在)」という概念や、TVAのB-15らによる新たな組織統治は、ドラマ『ロキ』シーズン2で誕生した「世界の樹(ユグドラシル)」の基盤の上で機能しており、今後の『ヤング・アベンジャーズ』結成に向けた若きヒーローたちの動向や、別次元から飛来する『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップス』のキャラクターたちがMCU本流アース(アース616)へと流入する巨大な「受け皿」となっている。

そして何より、ウルヴァリンという基軸を失いかけた世界がボイドの破片と交錯したこの事件こそが、やがて『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』および『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』において、絶対的統治者ドクター・ドゥームが壊滅した多次元の残骸を強奪し、パッチワークの「バトルワールド」を創り上げる最大の物理的・構造的伏線となっていくのだ。

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