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強いコアアイデアは人を巻き込む求心力をもつ。重要なのは生活者を見つめる「構え」|フルファネルラボ

フルファネルマーケティングにおける「コアアイデア」。
フルファネルラボでは、コアアイデアを「人の心を動かす考え方​やメッセージ」と定義しています。

今日では、生活者の購買行動は複雑化し、SNS、動画、検索、店舗など、タッチポイントが分散しています。人の心を動かすためにも、どのタッチポイントでも一貫したメッセージを伝えるコアアイデアの存在が、フルファネルマーケティングの成功の鍵であるといえるのです。

今回は、コアアイデアの専門家、クリエイティブディレクターの青沼 克哉あおぬま かつやに、フルファネルラボの主席研究員亀ノ上 忠昭かめのうえ ただあき中村 太一なかむら たいちが、インタビューしながらコアアイデアに関する議論を深めます!


フルファネルマーケティングのなかのコアアイデアの役割

強いコアアイデアがあれば自ずと施策が生まれる


亀ノ上:「ソウルドアウトが考えるフルファネルマーケティング」を図式化すると、「コアアイディア」が最初にあって「認知~購入~ファン化」が1本のストーリーとなって連鎖するような構造をしています。青沼さんはこの構造をみたときに率直にどのようなことを感じられましたか?

青沼:私自身の実体験として、とても納得感がありました。強いコアアイデアがあると、自ずと様々な施策が生まれてきます。

私は博報堂で10年ほど、広告の企画に携わってきました。特に認知の領域では、数多くの切り口を考えてきた経験があります。無理やり繋ぎ合わせた企画はうまくいかないことが多い一方で、強いコアアイデアがあると、テレビCM、プロモーション、SNSの企画など、様々な施策が自然と立ち上がってくる。その感覚をこれまで何度も経験してきました。

ですのでこの考え方はよく理解できますし、そうあるべきだとも思えました。

亀ノ上:ありがとうございます!ご自身の経験からも、コアアイデアの強さが企画の肝だと考えていらっしゃるということですね。

クリエイティブディレクター
青沼 克哉

青沼:この「ソウルドアウトが考えるフルファネルマーケティング」にコアアイデアがある、という点がオリジナリティになっていると感じました。

これまでソウルドアウトが得意としてきた購入の領域では、王道といわれる正攻法があって、それを個々の企業に合う形に翻訳して、導入していく。そういったプロセスがあったと思うんです。

一方で、コアアイデアづくりには、攻略本のような必勝法はありません。ブランドや、商品やサービス、あるいは生活者と向き合い続けてようやく見えてくるものです。そこに、企業の伴走者であるソウルドアウトらしさを感じましたね。

亀ノ上:ありがとうございます。実は、当初はコアアイデアではなく「データ」を置いていたんです。ただ、データは現在のマーケティングでは基本ですし、わざわざ入れる内容なのかと考えていたなかで、コアアイデアにしてみたところしっくりきまして…。


コアアイデアはフルファネルマーケティングの拡張性を生む


青沼:「BAKUNE」や「食べチョク」がコアアイデアのある事例として紹介されていたのも、おもしろいなと感じました。広告の話というより、事業領域の話ですよね。コアアイデアは、事業のサービス設計の根っこにあるものなのだと主張している。

そこには「デジタルマーケティングの支援に留まらず、事業開発の領域にまで積極的に関わっていかなければならない」というソウルドアウトとしての宣言めいたものを感じました。

亀ノ上:フルファネルラボでは、コアアイデアは「認知~購入~ファン化」という一連のストーリーにおいて、横ぐしのような、非常に重要な役割を果たすものと捉えています。

青沼:なるほど。私はコアアイデアには、「横向き」の役割に加えて、「縦向き」に拡張させる力もあるのではと考えています。

コアアイデアは、フルファネルマーケティングという「木」の「種」。いい種であればあるほど、大きな木が育ちます。強いコアアイデアは、大きなフルファネルマーケティングの設計図を生み、世の中に大きなインパクトをつくり出せるのではないでしょうか。


フルファネルマーケティングははひとつの言語である


亀ノ上:では、違和感のある部分はありましたか?

青沼:違和感というわけではないのですが…世の中のものすべてにフルファネルマーケティングが必要ではないと思っています。

たとえば安価な日用品や、BtoBの商品・サービス、不動産など、商材によって事情が大きく異なります。そうした商材では「心理」よりも「効果」、つまり生活者の心が動くかどうかよりも、その商品・サービスの内容が価格に見合っているのか、実際に成果につながるのか、といったことのほうが重視されますよね。

亀ノ上:たしかに、おっしゃるとおりです。生活者に選んでもらうための手法としてフルファネルマーケティングが適しているのかどうかは、商材によって異なりそうですね。

青沼いろいろなコミュニケーションの方法があるなかで、フルファネルマーケティングを「ひとつの言語」として捉える感覚がよいかもしれません。「選択肢の一つ」として相対的に位置づけておくことが大事だと思います。


いいコアアイデアをつくるには

社内外を巻き込む求心力がある


亀ノ上:では、青沼さんが考えるいいコアアイデアとはどのようなものでしょうか?

青沼:難しい質問ですね…。

いいクリエイティブとは何かと聞かれたとき、「人の心が動くもの」という答えは腑に落ちる気がするんです。一方コアアイデアの場合は、心が動かなくても、強いコアアイデアは存在すると思っています。

たとえば、比較サイトのようなサービスでは、設計そのものは合理性や機能性が中心です。ですがUI設計においては、人の心をつかむ工夫が求められますよね。強いコアアイデアであれば、そこから派生していろいろな企画が生まれ、人が動きます。そして巻き込まれた人からもまた新しい企画が生まれます。いいコアアイデアは「求心力」をもっていると思うんです。

亀ノ上:いいコアアイデアは人を動かし、そこに集まった人たちの新たな発想でさらにアイデアが広がっていく…といういいサイクルが生まれるということですね。

Gデジタルマーケットデザイン本部
本部長
亀ノ上 忠昭

青沼:そうです!みんなのテンションが上がるようなコアアイデアがあると「じゃあこうしたらもっとおもしろそう」という発想が自然と生まれ、議論が盛り上がると思うんです。

お客さまに対しても、初回の提案でテンションが上がるかどうか。盛り上がらなければ一度持ち帰って、無理に説得するようなことはしません。そんな状態では、いいアウトプットにはつながりませんし。

また、コアアイデアは、人に「こういうことを思っていて」と一言で話せるよう、できるだけ文字数を少なく、シンプルに表現するようにしています。

中村:なるほど…コアアイデアを出したときの相手の反応から、いいコアアイデアかどうかがわかる、と。青沼さんは、いいコアアイデアに対する嗅覚をほかの人よりももっているのかなと感じています。

青沼:入社以来、10年以上ずっと企画職ですからね。企画を考えて、それを実行して…の回数が多いから、というだけだと思います。

その経験のおかげで、これはうまくいきそうだとか、いやうまくいかなさそうだとか、そういった感覚があとから身についてきましたね。いいコアアイデアに対する嗅覚は、「センス」より「スキル」に近いです。


起点は「どのような景色を見たいのか?」


亀ノ上:青沼さんがコアアイデアを生み出すとき、まずは何から考えていますか?

青沼:まずはゴールイメージから考えます。

バズらせたいとか、新聞に記事を載せたいとか、単純に売りたいとかでもよくて。目に浮かぶ風景と、今の状況の差分を埋めるための手段を考えていきます。

たとえばたくさん売りたいなら、「コンビニの店員さんが棚に並べたいと思うには?」というゴールイメージをおいてみる。パッケージを変えるのか、おまけをつけるのか、広告をやるのか。いろいろな手段があってそのなかにも選択肢があり、アイデアがどんどん広がっていきます。

亀ノ上:私たちが主戦場とするデジタルマーケティングの場合、定量的なKPIはしっかり設定しますが、「こうありたい」という定性的な目標をもつことは少ないかもしれません。

青沼:一度自分なりに設定してみるといいかもしれませんね。

定量的な目標はあっても、定性的な目標がないケースが多いのですが、おそらく言語化できていないだけなんだろうと思います。

ある食品メーカーで、ブランドの認知拡大のためのプロモーションの提案をしたことがありました。求められてはいなかったのですが、今後を見据え、ブランドがその食品ジャンルを背負えるようなパッケージリニューアルを考えて提案させていただいたんです。すると、見た瞬間に「私たちがやりたかったのは、まさにこういうことだ!」という反応をいただいて。

お客さまには、ゴールイメージがまったくないわけではないんです。具体的なビジュアルを見ていただくなどして、ゴールイメージを具体的にしていくといいのかもしれません。

Gデジタルマーケットデザイン本部 Gストラテジックプランニンググループ
スペシャリスト
中村 太一


自分の言葉だけで書く


亀ノ上:ゴールの「ありたい姿」のレベル感は人それぞれだと思うのですが、大きく広げてみるのか、小さくより具体的にしていくのか、青沼さんはどちらでしょうか?

青沼:めちゃくちゃ小さくていいと思います!

自分がほしいかどうか。どうしたら自分がほしくなるのか。自分ごと化できないのであれば、家族や友人で考えてみます。あの人に好きになってもらうためにはどうしたらいいのか、とか。

「きおくひとえ」もそうでした。私がどうしたらひな人形を買いたくなるのか、を考えてできあがった企画です。

中村:自分や身近な周りの人を見つめてみることが大事なんですね。

亀ノ上:たしかに、青沼さんの提案書には「私はこう思う」がよく入っていますよね

青沼:メソッドやフレームワークに頼らないこと、必ず自分の言葉でしか書かないことを守るようにしています。

世の中で既に評価されている仕事のフレームワークをそのまま応用したような企画は、一見すると形にはなっているのですが、だいたいうまくいかないんです…。自分の熱量を込めること、お客さまのオーダーメイドになっていること、が大切だと思います。

中村:世の中には、提案の焼き直しになっているものもあります。

青沼:良くはないですよね…。

企画書を書くときは、お客さまにお手紙を出しているような気持ちで書いています。よく「企画はラブレター」と言われますが、ラブレターを書くときに、同じ内容で宛名だけ変えて書いてたら絶対に相手に届きません。それと同じです。

抽象化されたフレームワークが活きることもあるとは思うのですが、企画やコアアイデアにおいては自分の言葉で書くことが大切です。


強いコアアイデアに育てるために「構え」をもっておく


中村:では、生み出したコアアイデアを強いコアアイデアにしていくためには、どのようなことが必要なのでしょうか?

青沼:本当に人の心を動かすことができるのか、真剣に向き合う姿勢をもっておくことです。一人で完結する仕事はありません。チームメンバー全員に必要です。

チームで議論するとき、まず目指しているゴールイメージを共有します。すると、誰かの口からポロッと出たような固まり切っていない言葉がいいコアアイデアになったり、普段アイデアを考える側ではない営業メンバーがどんどん発想を広げていったりする。

ただアイデアを拡散させるだけではなく、チームメンバーがそれぞれの立場で、「ゴールイメージは達成されるんだっけ?」「それで本当に心が動くんだっけ?」と問う回数を増やすほどコアアイデアの強度は高まるはずです。

中村:なるほど、チームでコアアイデアを育てていくというイメージですね。

青沼:後輩によくいうのは、打席に立ったときに「構え」を崩さないようにしてほしい、ということです。

企画が世の中に出ることを、ヒットを打つ、ホームランを打つ、とよく例えます。企画を考え始めて最初のうちは、ヒットもホームランも打てないと思うんです。ですが構えが良ければ、そのうちヒットも打てるようになるかもしれない。構えを崩していると、打てるはずのヒットも打てない。

目先の数字、トレンドではなく、その先の生活者を見つめる「構え」。本当に人を動かすことができるのか。よそ見をせずに、自問自答できるかが重要です。


人間が生む「ノイズ」が人の心を動かす


亀ノ上:最後の質問です。生成AIの登場によって、コアアイデアをつくる過程に変化はあると考えていますか?

青沼:少なくとも、いいブレストの相手にはなると思っています。一方で、最後のアウトプットは、自分の頭から出てきたものでないと人の心を打つことはできません。

あるBtoBのメーカーさんでパッケージ提案をさせていただいたときのことです。デザイナーさんの手書きの文字を、AIに整えてもらって提案書に載せていました。私たちとしては、AIが生成した文字のほうがいいと思っていたんです。ですが、採用されたのはデザイナーさんの手書きの文字でした。

デザインも、文章も、人がつくるものだからこそ生まれる「ノイズ」。人の「念」みたいなものでしょうか。心が動くとか、愛着をもてるとか、そういったものはAIではつくりだせないのだと改めて思いましたね。

亀ノ上・中村:コアアイデアに対する理解が深まりました、本日はありがとうございました!

編集後記
青沼さんの言葉にあったように「ノイズ」や「念」という不完全さや人間らしさが心を動かします。フルファネルマーケティングにおける正解は、目の前の生活者の心のなかにしかありません。「構え」を崩さずに目の前の生活者と向き合い続けることが、フルファネルラボが掲げる「コアアイデア」を生む第一歩だと感じました。

【執筆・編集:みやたけ(@udon_miyatake)】


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