「あなたはお姉ちゃんなんだから」①
以前、「弟の“やいと”の記憶」という記事を書きました。
その記事を書いた後、ふと気がついたことがあります。
私たちは姉と弟の二人きょうだいです。
私はずっと、弟の方がはるかに優遇されていたと思っていました。
ところが当の本人は、かわいがられたことよりも、やいとを据えられたことなど、自分が「された側」の記憶の方をよく覚えているようです。
うちの父は田舎出身で、どちらかというと封建的な考えの持ち主でした。
そのため、男子が生まれた時には「後継ぎができた」と喜んだそうです。
もっとも、うちはそんな由緒ある家系でもなんでもないのですが。
母は私と弟の間にも一度妊娠しましたが、流産してしまいました。
やっと生まれた念願の男児だったこともあり、父は余計にうれしかったのかもしれません。
母はそうでもありませんでしたが、父は弟に激甘で、幼い頃はずいぶん甘やかされていたように思います。
今では、「男の子だからよかった」「女の子か……」と考える人は、以前ほど多くないと思います。
でも、当時はまだ、そうした風潮が残っていました。
一方、都会で育った母には、その意識があまりなかったのでしょう。戦時中、疎開していた時期は田舎で暮らしていましたが、「自分が産んだ子どもは平等」という思いがあったのかもしれません。
それでも、私は中高生くらいまで、
「あなたはお姉ちゃんなんだから」
という言葉を、呪いのように感じていました。
もちろん、激しく反発したこともあります。
「なぜ先に生まれたというだけで、私が我慢しないといけないの?」
先に生まれたことを恨み、「下の子に生まれたかった」と思うこともしばしばありました。
父は、乗り物が好きだった弟を、バスや電車に乗せるためによく連れ出していました。
電車が好きだと言えばプラレールを買い、少年野球を始めた時には、バットやグローブだけでなく、家庭用のバッティングマシンまで買っていました。
そんな様子を見ていた私は、父が弟の「好き」や「やりたいこと」には、すぐに応えているように感じ、それをうらやましく思っていました。
一方、私がよく覚えているのは、中学一年生の時のことです。
当時、好きなアイドルがいて、その人のアルバムが欲しかった私は、父に、
「今度の誕生日プレゼントに、そのアルバムを買って」
と頼みました。
父は、そのアイドルの名前とアルバムのタイトルを手帳に書いてくれました。
だから私は、次の誕生日にはきっとプレゼントしてもらえるのだと期待していました。
ところが、もらったのはまったく別の物。
正直、がっかりしました。
「あの手帳にまで書いていたのは、いったいなんだったの!?」
子ども心に、怒りさえ覚えました。
また、長子には、こういう経験もあるのではないでしょうか。
それまで親が自分のことばかり見てくれていたのに、ある日突然、見慣れないちっこい奴が現れ、親の関心を一気にさらっていく。
その時に感じる嫉妬や寂しさ。
私は覚えていないのですが、弟がまだ赤ちゃんだった頃、わざと泣かせたり、意地悪をしたりしていたそうです。
けれど、数年もすると立場は逆転しました。
弟はかなりのやんちゃ坊主でした。
三、四歳くらいになると、私が寝ているところへ、オルガンの上から「ライダーキック」をしてくることもたびたびありました。
そのたびに、私は母に言いつけていましたけどね。
そんなやんちゃな弟だったので、親に叱られることは、私より多かったのかもしれません。
「やいと」も、当時の親なりの「しつけ」の一つだったのでしょう。
私は、お灸を据えられたことは一度もありません。
もしかすると、「女の子の体に傷をつけてはいけない」という気持ちもあったのかもしれません。
そう考えると、私は弟ばかりが優遇されていると思っていましたが、私もまた「女の子だから」と守られていた部分があったのでしょう。
親の関心が下の子へ移ってから年月がたち、
「お姉ちゃんなんだから、我慢してよね」
「弟にもっと優しくしてあげて。あなたは上なんだから」
と言われることにも、次第に慣れていきました。
そして、いつの間にか、
「甘えられないのなら、自分でなんとかしなきゃ」
と考えるようになり、親をあまり頼らなくなりました。
今振り返ると、「お姉ちゃんだから」と言われ続けたことが、かえって私を強くしたのかもしれません。
甘え下手にはなったけれど、「自分でなんとかしよう」と考える癖もつきました。
当時は理不尽だと思っていたけれど、今となっては、結果オーライだったのかなと思っています。
🍀おまけ🍀
6分ほどの音声トークです。よかったらどうぞ
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