【あなたの2000年代を聞かせて】第4回ゲスト:九龍ジョー(その②)
サムオブメンバーが様々なゲストを招いて2000年代についてトークする連載。第4回のゲストは編集者の九龍ジョーさん。(その②)では、九龍さんと磯部涼さんの共著『遊び疲れた朝に 10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』を軸にした音楽の場についてのお話を伺いました。この回はポッドキャストでも聞くことができます。ポッドキャストと(その①)は下記リンクから。
YOU:この前、ゲンロンのイベントで九龍さんと矢野利裕さんと吉田豪さんのトークイベントを拝見しました。
YOU:結果として2000年代のサブカルチャーの話が多かったと思うのですが、登壇されたお三方は2000年代を経験したものとして、自身の血肉になってる感じがしたんですけど、僕らはアーカイブ化したものを引き取って見ているので。
カンノ:体験は伴ってないかもね。
YOU:ただ、俺たちが中高生の2000年代にこんなおもしろいものがあったんだっていうのを大学の部室に置いてある、たとえばさっきも話に上がった大橋裕之の『音楽と漫画』とか、そういうものを知っていく流れはありました。
九龍:いい時期だったと思うのは、90年代はインターネットがそこまで普及してなくて、2000年代のインターネットとローカルカルチャーがちょうどいい塩梅だったんだよね。それ以降になると、過酷なアルゴリズム闘争に巻き込まれていくんだけど(笑)。
カンノ:今はその果てですもんね。
九龍:2007年くらいにTwitterができて、2011年の震災以降で伸びてきたから、2000年代のインターネットはそこまでアルゴリズム的なものに支配されてなかった。当時は濃い趣味の人たちがネットで出会って、それを日記に書いたり、イベントをするにしても気軽に借りられるスペースがいっぱいあって、改めていい時代だったな。
YOU:九龍さんとライターの磯部涼さんの共著『遊びつかれた朝に 10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』でも書かれてますよね。
九龍:この本は俺も好きですね、Amazonでなぜか低評価だけど(笑)。
カンノ・オノウエ・YOU:アハハハハッ!
九龍:まあ、自分にとって2000年代のことは『メモリースティック』で書ききった感があるけど、『遊びつかれた朝に』は、これはこれでここにしかない話が満載というか。読む人にとってはどうでもいい話かもしれないけど、このどうでもいい話しか載っていないのがむちゃくちゃいいと思っていて。
YOU:僕は南池袋ミュージックオルグというライブハウスで大学生のときにインターンしていて、今はなくなってしまったんですけど。
カンノ:もう10年くらい経つかな。
YOU:そこで「ライブハウスってこんな感じなんだ」って知りましたね。ただ、そこの源流にあるものというのがイマイチ肌感としてわかってなくて。たとえば、のろしレコードの面々がいたり、ceroの高城さんがオープニングイベントに出演したり、まだメジャーになる前のスカートや大森靖子が結構な頻度でライブやってたりとか。
YOU:あとは、RAW LIFEのような国内のレイヴカルチャーみたいなものがオルグの根底にあったように思っています。あとはECDもイベントに出演されたりしていました。
九龍:ハードコアとラップミュージックが混淆してオーバーグラウンドに顔を出した感じがあったよね。
YOU:そういった世界を知った人たちがオルグに遊びに来る感覚はあったんですけど、そこでなにがあったかというのはリアルタイム世代じゃないからわからなかったんですけど、この本を読んで「そういうことだったんだ」と思いました。
九龍:いつの時代もあるといえばあるけど、ゼロ年代の東京を象徴する場所がいっぱいあったよね。オルグもそうだし、八丁堀の七針とか、高円寺の円盤とか三鷹のおんがくのじかんとか、なぎ食堂もRojiもそう。
カンノ:キャパは少し大きくなりますが、2000年代のO-nestもそんな空気があった気がしますね。
九龍:そうね。同じビルの7th FLOORも。
カンノ:ゼロ世代とか言われてるバンドってだいたいnestから出てきたイメージかもしれないです。
九龍:USインディのイメージはあったかも。磯部とゆらゆら帝国のツアーに付いていって、ニューヨークに行ったときに、ブルックリンのウィリアムズバーグとかが盛り上がっていて、そこでいろんなバンドの話を聞いてたら、例えば「ギャング・ギャング・ダンスは友達の中華料理屋でライブやってるよ」とか、思ってるよりもアットホームな感じだったんだよね。
カンノ:そうですね、生活と密着してますね。
九龍:基本はそういうところでやっていて、客はエディターとデザイナーと遊び人しかいない、みたいな(笑)。でも、それだったら東京にもそういう場所ってあるよなと思って。そこから、改めて足元を見直した感じもあった。まぁ、逆に言うと面白いカルチャーって「だいたい、そんなもん」っていうことなんだけど。昔のナゴムとかもそうだったという話を聞くし。いまだとすぐバズったとか、マネタイズがってなっちゃうけど、「面白いことは、だいたい50人くらいの場所で起きている」というのが実感としてはあって、それはいまでもそう。
カンノ:僕とオノウエ君は2010年代にOK?NO!!というバンドをやっていて、オルグにも出ていて、ふと横を見ると森は生きているがいて、失敗しない生き方がいて。
九龍:失敗しない生き方は素晴らしかったよね。そのバンドの天野君は今はタワーレコードのMikikiで編集で、たまに原稿を依頼してくれる。
オノウエ:九龍さんと磯部さんの『遊び疲れた朝に』の最後の章で出てくる固有名詞が、僕の大学生のころドンピシャで。
カンノ:僕らが音楽活動をしているときに並列でいた人たち。
オノウエ:ちょっとそれが”あの時”すぎて(笑)。それこそ、失敗しない生き方とか。
九龍:どついたるねん、NATURE DANGER GANG、Have a Nice Day!とかね。森は生きているは岡田くんも谷口くんも、今サポートやプロデューサーとして大活躍だもんね。
カンノ:岡田さんは柴田聡子プロデュースをはじめとして大活躍してますね。で、そこで話題で漏れちゃうのが失敗しない生き方とかになりますよね。
オノウエ:バンドキャリアとしてもアルバム1枚出して終わっちゃったからね。
九龍:すごくコンセプチュアルなバンドだった。
カンノ:この前、オノウエ君と久々に聴いたけど、やっぱり変なバンドだったよね。
オノウエ:不思議なバンドだったよね。
九龍:時代のなにかを掴んでたよね。
オノウエ:それこそ、当時やっていたバンドで一度対バンしたことがあって、そのときのステージのパフォーマンスもすごかったですよ。
九龍:あの女性のボーカルの人、すごかったよね。
オノウエ:ボーカルの蛭田さん。
九龍:ブリンブリンしていて。
カンノ:アハハハハッ!
九龍:当時、女性のフロントマンだともうちょっとナチュラル系の人が多かった気がして。ああいった煌びやかな存在感がある人って、海外のインディーロックだとわりといるんだけど、日本にはあんまりいないタイプだったから、稀有だと思ってた。
カンノ:オルグの規模ではより見ないかもね。
オノウエ:椅子の上に立ちながら歌ってたり、演奏の途中でいなくなったりして。
カンノ:それはコンセプチュアルだね。わからないけど、演劇的なメソッドがあったのかな。
オノウエ:そこはどうだったんだろうね。
九龍:そういう人って記憶に残るよね。鮮烈でしたね。
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