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小説『魔法少女なんてごめんですけど!』第1話

【あらすじ】
二四歳の疲れたOL・朝霧芽衣子は、謎のもこもこ生物・ピーとポーに突然「魔法少女になれ!」と強制される。
変身すると黒と紫のゴスロリドレスを着た、小学生にしか見えない「黒薔薇のメイ」にされてしまう。「魔法少女なんてごめんですけど!」拒否したいのに、次々とトラブルに巻き込まれていく。
面倒くささ全開の、完全振り回され系コメディ。
全6話の予定。

第1話 魔法少女なんてごめんですけど!


 残業続きでへとへとだった金曜の夜。
 近道の公園を横切ろうとした瞬間、突然二つのもこもこした物体が目の前に浮かび上がった。

「見つけたッピ!」
「見つけたッポ!」
「……はい?」

 朝霧芽衣子・二十四歳は、脳が真っ白になるのを感じた。

(……は? 何これ。今日も残業で四時間しか寝てないのに、幻覚まで見るようになったの?)

 絶対に関わりたくない。
 そう判断した芽衣子は、即座に回れ右をした。

「すごいオーラッピ!」
「やっと見つけたッポ!」
「うるさいっての! 幻覚は今すぐ消えろーっ!!」

 我慢の限界だった。芽衣子はパステルピンクの生き物をガシッと掴むと、力任せに遠くへ投げ飛ばした。

「ピーーーーーーっ!!」
「次はお前!」

 水色のほうも掴んで、別方向へ全力でぶん投げた。

「ポーーーーーっ!?」

 二匹が夜空の彼方へ飛んでいくのを見て、芽衣子は肩で息をしながら呟いた。

「……これで終わりでしょ。頼むから終わりで」

 ***

 マンションに帰り着き、鍵を開けた瞬間——

「待っていたッピ!」
「やっと来たッポ!」

 玄関の前に、二匹が嬉しそうにふわふわ浮かんでいた。
 芽衣子は膝から崩れ落ち、床に手をついた。本気でorzだった。

「……なんで家にいるのよ。マジでやめてほしい……」

 それから三十分後。
 温めたコンビニ弁当を機械的に食べ終えた芽衣子は、こたつに突っ伏しそうになりながら二匹を睨んでいた。

「アタシはピーナ・ピーアス・ピーパルクって言うッピ!」
「ボクはポール・ポーリアス・ポーンティップって言うッポ!」
「何それ? いい加減長いんだけど。ピーとポーでいいじゃん」
「ダメッピ! ちゃんとフルネームで呼んでほしいッピ!」
「略されるの、すごく嫌なんだッポ……」

 二匹がそろって頰を膨らませるのが、妙に可愛らしくて余計に腹立たしい。
 長い説明を聞き流しながら、芽衣子は心の中で何度も「面倒くさい」を繰り返していた。
 遠い星から来たとか、悪の組織が地球を狙っているとか、オーラがどうとか——全部どうでもよかった。
 ただ、この二匹を早く帰して、風呂に入って寝たい。それだけだった。

「……で、私に何をさせたいわけ?」
「これをはめて『変身』って言ってほしいッピ!」

 差し出された紫の宝石付きブレスレットを、根負けした芽衣子は適当に手首に通した。

「ほら……変身」

 ——次の瞬間、ブレスレットが激しく輝いた。

「え、ちょっと待っ——!?」

 光の中で体が浮かび上がり、服が光の粒になって消えていく。
 代わりに幾重にも重なる黒いレースのスカートが広がり、胸元に大きな紫のリボン、袖はゴシック調のパフスリーブ、首元にはレースのチョーカー。
 髪が腰まで伸び、ゆるやかなウェーブを描き、顔立ちも一気に若返った。
 光が収まったとき、鏡に映っていたのは、十〜十二歳くらいの少女だった。
 黒と紫を基調とした、華やかで少し背伸びしたゴシックロリータドレスを着た、自分とは思えない姿。

「……うそでしょ」

 声まで少し高くなっている。
 スカートのフリルを慌てて押さえながら、芽衣子は顔を真っ赤にして叫んだ。

「ちょっと! なんでこんなに若くなってるのよ! しかもこの服、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど!?」

 そこへピーとポーが大興奮で飛び回ってきた。

「すごいッピ! メイコ、すっごく可愛くなったッピ!」
「これなら絶対に頼もしい味方になれるッポ!」

 そんなのどうでもいいから、この二匹をどつき落とす力が欲しいと、切実に思う。
 そんな願いが反映されたのか、手のひらが熱くなり、紫色のオーラのようなものが伸び、二匹をガシッと掴んで床に叩き落とした。
 二匹は「ピー……」「ポー……」とうめき声をあげている。

「可愛いとか、どうでもいいから! それより、コレ、どうやったら戻るの?」
「……すぐ戻るッピ」
「メイコはまだ慣れていないから、そんなに変身していられないッポ」
「……そう」

 二匹の言う通り、しばらくして芽衣子は元のスーツを着込んだ状態に戻った。

(……なんか、どっと疲れた)

 敵に遭遇していないのに、疲労感が半端ない。
 これで敵と遭遇して、戦うことになったらどうなることか。

「で、結局、敵はどこなの?」

 二匹は同時に首を傾げた。

「知らないッピ」
「さあッポ?」

 …………。

 芽衣子は茫然自失した後、しばらくしてから部屋中に響く声で叫んだ。

「ふざけんなああああぁっ!!」

▼次の話


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