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小説『魔法少女なんてごめんですけど!』第2話

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第2話 コンビニ強盗なんてごめんですけど!


 次の日は朝から、もう嫌な予感しかしなかった。
 朝霧芽衣子・二十四歳はデスクで資料をまとめながら、小声で毒づいた。

「ねえ……本当に、ずっとついてくるのやめてくれない?」
「メイコのそばにいるのが任務だもんッピ!」
「ボクらはちゃんと見守ってるッポ!」

 誰もいない空間に向かってブツブツ言う芽衣子を、同僚たちが遠巻きに見ている。
 もちろんピーとポーは他の人には見えない。見えるのは芽衣子だけ。
 だから余計に『変な人』認定が進む。
 これでも今まで『普通』にしていたはずなのに、『変な人』へどんどんシフトしていってしまう。

(……もう死にたい)

 ***

 そして退勤後、いつものコンビニに立ち寄った瞬間——
 店内ではすでに強盗がナイフを突きつけ、レジを脅していた。

「不穏なオーラを感じたッピ!」
「かなり危険だッポ! メイコ、今すぐ変身ッポ!」
「え、ちょっと待って——」

 制止する間もなくブレスレットが熱を持ち、強制的に光が広がった。
 光が収まったとき、そこにいたのは黒と紫のゴシックロリータドレスを着た、十〜十二歳くらいの少女だった。

「ちょっ……! またこの姿!?」

 芽衣子(現在:メイ)はスカートのフリルを必死に押さえ、顔を真っ赤にした。
 強盗が振り返り、目を丸くする。

「……は? なんだお前、小学生がゴスロリのコスプレか?」
「小学生じゃないけど……!」

 芽衣子の嫌がる言葉を消すように、ピーが叫ぶ。

「夜の闇に咲く、黒薔薇のメイ、参上(ッピ)!」

 ピーの声に、芽衣子が慌てて「私の声で何言ってるよーっ!!」と心の中で叫ぶ。
 コンビニ強盗は「は? くろ、ばら……?」と怪訝そうな顔で芽衣子を見る。居合わせた客も同じく。
 その中で、明らかにテンションが違うのが。

「いけッピ! メイ、頑張ってッピ!」
「オーラ全開でやっちゃえッポ!」

 ピーとポー。二匹が、興奮気味に叫ぶ。
 苛立ちと恥ずかしさで頭が真っ白になりながらも、芽衣子は思わず手を振り上げた。
 すると手から黒紫の光が飛び出し、強盗のナイフを弾き飛ばした。
 男は尻もちをつき「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、店内から拍手と歓声が上がった。

「すごい……魔法少女だ!」
「可愛い……! ありがとう!」
「まさか、魔法少女を拝めるなんて……」

 一部、変な感想があったが、とりあえず強盗犯は叩きのめした。
 その瞬間、ブレスレットがチカチカと明滅し始めた。

(やばい……変身が持たない!?)

「メイ、変身の維持がまだ不安定だッピ!」
「早く逃げたほうがいいッポ!」
「は? あんたたちのせいでしょ!」

 芽衣子は慌てて後ずさり、強盗が起き上がる前に店を出ようとした。
 しかし変身はさらに不安定になり、ドレスの端が光の粒子になって消え始めている。

「待てよ! お前——」

 強盗が何か言いかける前に、芽衣子は全力で店を飛び出した。
 路地を曲がり、暗がりに隠れて息を殺していると、ようやく変身が解除された。
 元のスーツ姿に戻った芽衣子は、壁に背を預けてがっくりと肩を落とした。

「……あ、牛乳、買えなかった……」

 メイ=芽衣子とは思われないだろうが、あのコンビニにはしばらく立ち寄りたくないと思う芽衣子だった。

 ***

 その夜、布団の中でスマホを見ると、ネットニュースに小さく記事が載っていた。

『K県I市に、謎のゴスロリ少女がコンビニ強盗を撃退!?』

 そんな見出しで、ゴスロリ少女がどうやったのか不明だが、コンビニ強盗を倒し、消えていったことが書かれていた。
 感想欄には、「マジ、魔法少女? スゲー!!」「見てみたい!」「どうせガセだろ」「でもゴスロリ美少女だけでも見る価値アリ」「んだんだ」と、様々な意見が書かれていた。
 思わず、芽衣子は枕に顔を押し付けた。
 ベッドの上でピーとポーが楽しそうに浮かんでいる。

「今日もいい仕事をしたッピ!」
「『黒薔薇のメイ』ーーか、なかなか様になってきたッポ!」

 芽衣子は布団を頭までかぶりながら、くぐもった声で呟いた。

「……黒薔薇とか、メイとか、勝手に命名しないでよ……」

 ——魔法少女なんて、絶対にごめんなんだけど。


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