「カトパコ(CA7RIEL & PACO AMOROSO)」の新アルバムPVがブラックユーモアに満ちている
昨年、日本のフジロックを含め、世界中のフェスを渡り歩いていたアルゼンチン発のデュオ「CA7RIEL & PACO AMOROSO」(カトリエル&パコアモロソ/日本での通称:カトパコ)。
彼らの人気が「ピーク(Top of the hills)」に差し掛かっていた2025年末、予定されていた新アルバム「Top of the Hills」のリリースが急きょ延期となった。
過酷なスケジュールにより、休息が必要になったと公表し、心身のバランスを崩していることをほのめかしていた。
3カ月後、仕切り直してリリースされたアルバム「FREE SPIRITS」。
リリースからの5日間、私は新アルバムを何度もリピートして聞いているのだが、延期からの流れが「前振り」だったのではないかと思うほど、物語として完成されている。
12曲の歌詞には、商業的な成功に飲み込まれ、心身がむしばまれてしまったことが生々しく描写されている。
経済的に成功しても決して満たされることのない心、ツアー中のホテルの部屋で1人になったときの消えたくなるような孤独感、希死念慮、自分を愛してくれる人との関係性の変化、高級ブランドでは満たされない心、愛のないセックス、自分の才能に酔いしれる瞬間と自分の平凡さに直面する時期が交互にやってくる感覚……
紹介動画と一挙に公開されたPVを見ると、燃え尽きてしまった2人がセラピーやケア、宗教的(というよりカルト)な行為を次から次へと体験して、自らの癒しにつとめるというコンセプトになっている。(メンターは、大御所アーティストのスティングという設定)
しかし、すべての施術がヤバすぎる(笑)。私は「(笑)」をつけたけれど、ブラックすぎて笑えない人もいるかもしれないし、見ると不快になる人もいると思う。PVの中で自分の弱さやエゴを克服するためにカルトや詐欺のような療法に課金を続ける2人の演技は、まるで現代の風刺映画のようだ。
前作のアルバム『PAPOTA』の紹介フィルムでは、スターダムを駆け上がる2人に筋トレやステロイド、美容医療がなんか手招きしていたけど、きらびやかな場所から距離を置いても、別の依存先が待ち受けているホラーにも見える。
歌詞で生々しく内面をさらけだしているのに悲壮感がないのは、サウンドが躍動しているから。アジア、南米、北米、ヨーロッパを暴れるように飛び回り、他のアーティストの力も借りながら、時代も越えていくダイナミックな音楽に耳が吸い寄せられてしまう。
新たなアルバムを発表した今、これからもあちこちからオファーが絶えない日々が続くだろう。どこまでがフィクションかわからないけれど、歌詞の中で自らとアヴィーチーに心を重ね合わせていた彼らは、日常を大切にしながら仲間たちと刺激的な音楽を作り続けてほしい。
