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「鬼平犯科帳」を今の時代に作り続ける挑戦~プロデューサーが語る凄みと継承~

時代劇の名作「鬼平犯科帳」が、今なお進化を続けている。松本幸四郎を主演に迎え、放送ごとに話題を呼ぶ新シリーズ。2025年7月に、2026年に放送することが発表された最新第7弾「鬼平犯科帳 兇剣」を機に、制作の裏側を担うプロデューサー・河野愛弥さん(日本映画放送株式会社 編成制作局制作部)にインタビューを実施。映像美へのこだわり、キャスティングの視点、そして時代劇を“今”につなげる想いを語ってもらった。


映像づくりの原点と“鬼平”に込めた二面性

――まずは、河野さんご自身について教えてください。

「学生時代から映画はもちろん好きでしたが、元来テレビっ子であったので、漠然とテレビのお仕事をしたいと考えておりました。もともとはバラエティやドキュメンタリーなどに関わりたかったのですが、縁あって日本映画放送に内定をいただき、映画やドラマの世界に踏み入ってみようと、流れのままに入社を決めました。入社後、CMや単発の番組などの様々な制作現場を経験させていただき、今は『鬼平犯科帳』を担当しております」

――新作撮影にあたって、最も大切にされたテーマを教えてください。

「まだ詳細なことは申し上げられませんが、やはり平蔵の鬼としての一面と、情け深い一面、その両面を映像に移すことは脚本の段階から大切にしている点でした。先日、7月5日に発表された『兇剣』というタイトル、『兇』の字にある通り、穏やかなお話ではありません。鬼の平蔵が今回はどのように悪党を追い詰め、またどのような人間を救うのか、ぜひ続報をお待ちいただければと思います」

――キャスティングにあたってのこだわったポイントを教えてください。

「やはり『鬼平犯科帳』は原作から、登場人物一人一人の人間というものが深く描かれていると思います。人間誰しも表向きの顔とそうでない顔、抱えている何かの罪の意識・誰にも言えない隠し事があるように、単純ではない人間像・二面性を演じていただけるような方というのはキャスティングにあたってのこだわりの一つかもしれません」

 「鬼平犯科帳 暗剣白梅香」 (C)日本映画放送

“見逃してしまう”魅力に光を~映像の細部に宿る魂~

――現場に入って感じる、ファンの方も見逃しがちな魅力はありますか。

「もちろん、一つの部門には絞り切れないほど魅力は沢山あるのですが、鬼平犯科帳は夜のシーンも多いので、照明にぜひ注目いただきたいです。今のように電気のなかった江戸の夜は、文字通り“闇夜”が広がっていたのだと思います。一方で、他の光源がない分、月は今よりも明るく人々を照らしていたのかもしれません。
 水面の反射、木漏れ日、ここに見える“光”は、いったいどのように表現されているのだろう、そうお考えいただけるとまた違った魅力を感じていただけるのではないでしょうか」

――セットをご紹介いただいたときも触れていただきましたが、夜のシーンを演出する”照明”も”鬼平”の世界観の魅力ですね。

「はい。少し話は逸れますが、本編をご覧になった皆様が“見逃す”点というのは、いわば技術の結晶であるといえると思います。まるで自然光のように見える照明、長い間そこにあったものをそのまま映しているような美術セット、本当に自分の持ち物のように役者さんが持っている煙管(きせる)などの持ち道具、そして映像になじんでいるBGMや効果音。
 “見逃してしまう点”というのは、凄まじい完成度によるもので、なによりも作品に没入感があることの証明なのかもしれません」

 「鬼平犯科帳 老盗の夢」 (C)日本映画放送

時代劇は遠くない…”今”に通ずるテーマ


――江戸の世界について、現代の視聴者に気づいてほしいポイントはありますか。
「気づいてほしいというと、皆様すでにお気づきかもしれませんが、物語のテーマの現代との『共通性・持続性』でしょうか。
時代劇というと、舞台は何百年も前のことなので私たちの日常生活からは遠いですし、身分制度が当たり前にあった時代ですので、“当時の常識”と“現在の常識”との大きな違いがあります。時代劇を“ファンタジー”として楽しむという見方もある通り、なにかとても遠い世界のことのように感じられる方もいらっしゃると思います。
ただ、物語の根底にあるテーマは現代でも通ずるのではと考えるのです」

――現代にも通ずるテーマですか。

「はい。例えば2025年2月に時代劇専門チャンネル放送された、第5弾『老盗の夢』は、橋爪功さん演じる本格の大盗賊・蓑火の喜之助の最後の大仕事を描く物語でした。もちろん盗人の話ではあるのですが、彼を動かし続けたのは“盗み”ではなく自分自身の仕事への“プライド”だったのではと。先日、7月5日(土)に初放送を迎えた第6弾『暗剣白梅香』は、早乙女太一さん演じる仕掛人・金子半四郎が長谷川平蔵の暗殺を企てる物語でした。金子半四郎はなぜ仕掛人(暗殺者)になったのか?また何故平蔵という強敵を執拗に狙うのか?そこにも、“仕掛け=暗殺”から切り離すと思いがけずに感情移入できるような点があるように思います。
 もちろん、“外見(そとみ)”では、とても我々の私生活に落とし込み、共感する内容には感じられない、全くのファンタジーです。ただ、今も昔も変わらずあり続けるのは『人が生きている』という現実の生活です。
 少し視点を変えてご覧いただくと、現代にも通ずるメッセージがあると思うのです」

 「鬼平犯科帳 老盗の夢」 (C)日本映画放送

――たしかに、現代でも感情移入できるテーマが含まれているのですね。これまで携わった「鬼平」シリーズのなかで、印象に残っているシーンやキャストはいますか。

「『暗剣白梅香』のクライマックスである松本幸四郎さんと早乙女太一さんの一騎打ちは圧巻のシーンです。スピード感はもちろん、何よりも間合いの駆け引きの緊張感などはすさまじいものがありました。
また、7月5日(土)に解禁された最新第7弾『兇剣』の特報映像、その中に意味深に“目”が登場するのですが、このシーンの撮影は実際に現場で見ていて演出に惹きこまれました。この目はいったい何を見ているのか?ぜひ最新作をご期待ください」

 「鬼平犯科帳 暗剣白梅香」 (C)日本映画放送

――撮影を終えて改めて感じた"鬼平"の魅力、凄みがあれば教えてください。

「YouTubeにも公開されている第6弾『暗剣白梅香』メイキングにて、脚本を担当いただいている大森寿美男さんもお話しされていたのですが、『鬼平』の魅力としてまずはなによりも、池波正太郎先生の圧倒的な原作の力があるのだと改めて強く感じました。作り手によって、演じ手によって、『鬼平犯科帳』は新たに生まれ変わりますが、生まれ変わっても『鬼平犯科帳』には原作が確かなことによる、揺るぎがたい魅力があります。その原作の魅力、そしてこれまで様々な方が演じられて長きにわたって続いてきた映像作品の魅力に、ファンの皆様、そしてスタッフも惹きこまれているように感じます。その堅固な原作と伝統の土台、作り手によって大きく印象が変わる柔軟性が、まさに凄みであると強く感じた撮影でした」

――長年見続けてくれている"鬼平"ファン、そして新たに見る方に向けてメッセージをお願いいたします。

「『鬼平犯科帳』という名作を、今の時代に新たに作り続けることは紛れもない“挑戦”です。その“挑戦”は続けていく必要があると強く思います。時代劇は継承しなければいけない日本の大切な文化です。
 そして何よりも作品をご覧いただける皆様に、お楽しみいただければ嬉しく思います。
スタッフ一同、これからも挑戦を続けて参ります。変わらぬご愛顧を、どうぞよろしくお願いいたします」

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