『カフネ』Audible感想|買い出しの帰り道、耳で物語を連れて帰る
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Audibleで阿部暁子さんの『カフネ』を聴いた日の、雑貨店の午後の話です。
今日は珍しく、お出かけをします。
店を少しだけ留守にして、雑貨の買い出しへ。
プクはいつもの椅子の上で、あまり興味のない顔をしていました。
出かける前、プクはいつもの椅子の上で、
こちらを見ても見ていないような顔をしていた。

店番を頼むつもりで声をかけても、
しっぽの先を一度だけ動かしたきり。
あれでは「まかせておけ」ではなく、
「勝手に行けばいい」のほうだろう。
今日は雑貨の買い出しだった。
紙ものを少し。
小さな皿をいくつか。
あとは、見たとたん、うちの棚に置きたくなったものを少しだけ。
買い出しの日は、たいてい電車に乗る。
そして、だいたい本を読む。
でも今日は、本を開かなかった。
いま聴いているのは、『カフネ』。
イヤホンを耳に入れると、電車の揺れのあいだから、
声がするすると入ってきた。
帰り道に聴くには、少しやさしすぎる気もしたけれど、
今日はそれが悪くなかった。
ページをめくらなくていいぶん、
窓の外の景色も、膝の上の紙袋の重みも、そのまま残っている。

向かいの席では、小さな子が靴をぶらぶらさせていた。
ドアの上の路線図が、一駅ごとに灯りを移していく。
紙袋の持ち手が、手のひらに少し食い込む。
そういう帰り道の細かいことを残したまま、
物語だけが耳から入ってくるのが、今日はなんだかよかった。
しかも今回は、仕入れもたぶんよかった。
棚の端に置いたら似合いそうなものがいくつか見つかったし、
布ものもいい。
店に並べてみるまではわからないけれど、
帰りの電車で少し機嫌がいいなんて、店主としては珍しい。

こういう日は、だれかに報告したくなる。
店に戻れば、プクがいる。
たぶん寝起きの顔で。
そして、私が一日かけて選んだ雑貨より、
袋の中の猫缶に先に気づく。
今日はその猫缶も買った。
少しだけ、いいやつである。

もうすぐ最寄り駅に着く。
『カフネ』の続きはまだ気になるし、
袋の中には今日の戦利品が入っている。
帰ったら荷物を置いて、棚を見て、
それからプクに猫缶を見せようと思う。
猫缶だけ歓迎されて、私はついでかもしれない。
まあ、たいていそうだ。
店主が一日かけて選んだ雑貨より、
猫缶ひとつのほうに、たぶん、わかりやすく心が動く。
そういう店である。
今回、電車の中で聴いていた本
『カフネ』は、派手に引っ張るというより、人と人の距離や、言葉にしにくい気持ちを静かに見せてくる作品でした。
Audibleで聴くと、会話の間や声の温度が残ります。文字で読むよりも、登場人物の気持ちが少し近く感じられる場面もありました。
一気に聴くというより、帰り道や夜に少しずつ聴く方が、私には合っていました。
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