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一軒家に住み続けたいなら、覚悟をしたほうがいいと思う | 老後の暮らしを整える

何十年もローンを払い続け、家族との思い出がつまっている、人生の思い入れが凝縮した存在そのもの、ともいえるマイホーム。最期まで、自分の家で過ごしたい、と思う気持ちは、当然だと思う。

その一方で、その家は、老後を暮らす環境として、果たして、本当にふさわしいものだろうか?

「老後」とひとことで括られてしまうことも多いが、実は、「老後」にもさまざまなステージがある。

年金をもらい始める、65歳くらいからを「老後」ととらえるのが、一般的だろう。もちろん個人差はあるが、65歳って、ぜんぜん元気だ。現役世代と変わらない。(私の父は、割と責任ある仕事をフルタイムで続けていた。)

それが、後期高齢者、という、その呼びかたはどうよ?と思うものの、75歳を超える頃から、少しずつ状況が変わってくる。本人の自覚が追いつかないことも多いような気もするものの、はたからみると、気力、体力、そしてなによりも、判断力が著しく低下してくる。もともとが、すごくしっかりされていたり、理性的だった方でさえ、ちょっと話をしているだけでも、あれ?と思う場面が増えてくる。

そして、80歳を超え、85歳に近づくにつれて、健康そうだったかたも、びっくりするほど身長が縮んできたり、足元がおぼつかなくなってくる。この頃になると、本人も、自分の老いを自覚せざるを得ない、という感じだ。活動量が減ってくるため、現役世代のひとの目に触れる機会も減ってくる。長年、尊敬し、親しくさせてもらっていた歳上の友人、知人が、久しぶりに会うと、ものすごく小さくなっていたりして、驚愕する。

今後のことを考え、自分の環境を整える、という発想を持ち、かつ、必要と思う行動を起こすことができるのは、私の肌感覚としては、70歳くらいまで、だと思う。

私が尊敬している、母と同世代の女性で、75歳前後に、家の住み替えをした友人、知人が、ふたりいる。おふたりとも、とても合理的にものごとを考える聡明なかたで、ご家族の介護も経験されてきた。圧倒的な聡明さだけでなく、行動力も半端ない、いわばスーパーウーマンだ。その彼女たちが、自分の住み替えを終えたときの感想が、そろって、

「本当にたいへんだった。もう無理かと思ったわ。」

だった。何年も前から準備をし、万全の体制で住み替えを実行した彼女たちでさえ、である。もはや常人には不可能なことなのだろう、と思った。

ちなみに、おふたりとも、素晴らしいお庭のある立派な一軒家から、おひとりは有料老人ホーム、おひとりはコンパクトな一軒家(お嬢さんご家族と同居予定)への引っ越しだった。それぞれ新しい環境で、今も、のびのびと、軽やかに暮らされている。

70歳を超えるころから、まず、庭の管理が難しくなる。もちろん、定期的にプロの業者さんに入っていただければ、管理はできる。が、毎年、何十万円もの費用がかかる(もちろん、庭の大きさにもよる。私の実家のような小さな庭でも、草取りなどの手間はかかっていた)。

近所でも、だんだん庭が荒れてくる家が、本当に多い。家の掃除と同様、年齢を重ねるにつれて、目も行き届かなくなってしまうのだ。玄関まわりに物が散乱するようになると、転倒等のリスクも高まる。

そして、2階建の家の場合、階段を上ることがたいへんになってくる。

もちろん、65歳前後の頃は、階段の上り下りはかえって運動にもなり、健康にもいいだろう。しかし、年齢を重ねるとともに、目が悪くなり、バランス感覚も衰え、足腰の筋肉も弱った状態で、階段は、上り下りがたいへん、というよりも、危険だ。

自分の身体能力の低下を自覚できないまま、まだだいじょうぶ、と、今までと同じ暮らしを続け、怪我をする。骨ももろくなっているので、あっけなく骨折してしまう。入院等による急激な環境変化で、認知能力が低下してしまうケースもある。

ご近所に、おふたりとも大学で教員を長くされていたという80歳を超えるご夫婦がいらっしゃる。犬の散歩中に声をかけていただき、コーヒーをご馳走になったりする。今も研究を続けられ、論文を書かれているという。おふたりとも元気で、今の生活を楽しまれている様子だが、気がかりなこともある。

私の暮らすところは標高1000メートル、夏は冷涼で過ごしやすい反面、冬は氷点下の日々が続く。温暖化の影響で、以前よりは冬も過ごしやすくなったと言われるものの、今年の冬も、早朝には氷点下10度近くまで気温が下がることがあった。

比較的新しい家は断熱性能も高く、外気温が下がっても、家の中の気温はそう下がらない。が、その老夫妻のお宅は、築20年を超えており、この冬、何度か、家の中の水道が凍ってしまったという。

この地域では、水道管が破裂すると、噴き出した水が凍り、家の中がスケートリンクのようになるという。そこまでの地獄にはならなかったと聞き、ほっとする反面、家の中の水道が凍るほどに、家の中の気温が下がっているということ。ヒートショックのリスクも高いだろう。高齢になるにつれて、血管も脆くなり、心臓等への負担もはかりしれない。

電気代や灯油代なども高騰する折、暖房を節約したい気持ちもわかる。が、健康を害しては本末転倒だ。とにかく、水道が凍らないよう、家の中を暖めることを強くすすめた。大事なのは、水道管ではなく、血管だ。

自分の親だったら、転居をすすめるだろう。もちろん、親は抵抗するだろうが。

豊かな自然に囲まれ、家族や、遊びにきていた学生さんたちとの、たくさんの思い出のある家で過ごしたい、その気持ちもわかる。

思い出か、自身の健康へのリスクをどこまで許容するか、難しい問題だ。
ただ、一軒家に住み続けようと考えているのなら、70代、80代になっても暮らしやすい状態に整えることができるのか?自身の健康リスクをどこまで許容できるのか?も含めて、相応の覚悟が必要だと思う。


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