AIで経理はどう変わる?「入力する仕事」から「経営に活かす仕事」へ
こんにちは!SYNCA合同会計事務所 共同代表の吉井です。
これまで経理の仕事というと、領収書や請求書を整理し、仕訳を入力し、試算表を作るといった「数字を正しく記録する仕事」が中心でした。
しかし、AIやクラウド会計の進化によって、こうした入力・集計業務は少しずつ自動化されつつあります。
私は、経理の役割が「数字を作ること」から「数字を経営に活かすこと」へと、より大きく変わっていくのではないかと考えています。
今回は、AIによって経理の仕事がどう変わるのか、そして人が担うべき仕事はどこに残るのかについて書いてみたいと思います。
◆この記事を読んでほしい人
・AIやクラウド会計を使って、経理業務を効率化したい経営者の方
・経理担当者が1人しかいない、または社長自身が経理を確認している会社の方
・どの業務をAIに任せ、どこに人の判断を残すべきか迷っている方
◆この記事を読んでわかること
・AIやクラウド会計に任せやすい経理業務と、人の判断が必要な業務の違い
・月次決算を「過去の確認」から「未来の判断」に変えるための考え方
・AIを活かすために、経理業務をどう標準化し、設計しておくべきか
目次
AIが得意なのは「集める・入力する・整理する」
これまでの経理業務では、資料を集め、数字を入力し、会計ソフトに正しく反映させることに多くの時間が使われてきました。
請求書を見ながら仕訳を入力する
銀行口座の入出金を確認する
領収書を整理する
売掛金の入金を消し込む
月次資料をExcelにまとめる
といった業務です。
こうした「ルールが比較的明確な仕事」は、AIやクラウド会計が得意とする分野です。
すでに銀行口座やクレジットカードとの連携は一般的になり、請求書を読み取って仕訳候補を作成する機能も広がっています。
さらに生成AIを活用すれば、月次の数字をもとに「どの経費が増えているか」「利益率がなぜ下がったのか」といった分析を補助することもできます。
ただし、ここで重要なのは、単にAIツールを導入すればよいということではありません。
これからの経理では、
「人がどう入力するか」ではなく、「業務をどう標準化し、AIでも回せる仕組みにするか」
という視点が重要になっていきます。
例えば、
「どの資料を使うのか」
「どのルールで処理するのか」
「例外が起きた場合は誰が判断するのか」
といった業務プロセスを整理しておけば、AIやシステムに任せられる範囲は広がります。
つまり、AIを使うことよりも、AIが使えるように経理業務そのものを設計することが、これからはより重要になるということです。
月次決算も「過去の確認」から「未来の判断」へ
毎月試算表を作っていても、その数字を十分に経営に活かせていない会社は少なくありません。
月次決算が完成して、
「売上が前年より増えました」
「人件費が上がっています」
「利益率が下がっています」
と確認して終わってしまうケースです。
しかしAIを活用すれば、数字の変化を整理する作業はかなり効率化できます。
例えば、
「売上は前年比10%増加している一方で、広告費は30%増加している」
「人員を1人増やした場合、年間の固定費はどれくらい増えるか」
「このペースで資金が減った場合、あと何か月持つか」
といった内容を整理しやすくなります。
そうなれば、経営者や経理担当者は、数字を集めることではなく、その先の判断に時間を使えるようになります。
つまり月次決算は、
「先月どうだったかを確認するもの」から、「これからどうするかを考えるもの」へ
変わっていく可能性があります。
それでも人にしかできない仕事がある
もちろん、すべてをAIだけで判断できるわけではありません。
なぜなら、経営では数字だけでは判断できないことが多いからです。
例えば、人件費が増えていたとしても、それが単なるコスト増なのか、将来の成長を見据えた採用なのかによって意味は大きく変わります。
広告費が増えている場合も、効果が出ていない広告なのか、新規事業に対する先行投資なのかで判断は異なります。
AIは数字を整理することはできますが、
「会社として何を目指しているのか」
「どこまでリスクを取れるのか」
「今は攻めるべきなのか、守るべきなのか」
といったことまで含めて考えるためには、人の判断が必要です。
これからの経理や税理士には、数字を作る力だけでなく、数字を読み取り、経営者と一緒に考える力がより求められると思います。
中小企業こそAIを活かしやすい
生成AIは比較的新しい技術ということもあり、大企業では情報管理やセキュリティ、社内ルール、承認フローなどを踏まえて、慎重に導入を判断せざるを得ないケースも多いと思います。
一方で中小企業は、経営者の判断で比較的スピーディーに新しいツールを試しやすいという強みがあります。
意思決定が早い中小企業だからこそ、AIをいち早く業務に取り入れられる可能性があります。
もちろん、やみくもに導入すればよいわけではありません。
まずは小さな業務から試し、
「どの業務ならAIに任せられるか」
「どこに人の確認を残すべきか」
を見極めながら、少しずつ活用範囲を広げていくことが大切です。
中小企業では、経理担当者が1人しかいなかったり、社長自身が経理を確認していたりすることも珍しくありません。
だからこそ、AIやクラウド会計を活用して、これまで10時間かかっていた経理作業を5時間に減らすことができれば、その5時間を経営に使うことができます。
資金繰りを確認する。
予算と実績を比較する。
利益率を分析する。
今後の採用を考える。
新規事業を検討する。
こうした時間を増やすことこそ、AI導入の本当の価値ではないでしょうか。
AI時代の経理は「記録」から「経営」へ
これまで経理は、「過去の取引を正しく記録する仕事」という側面が強いものでした。
しかしAIが入力や集計を担うようになることで、これからは「数字を使って未来を考える仕事」へと変わっていくでしょう。
もちろん、AIの回答が必ず正しいわけではありません。
会計や税務には専門的な判断が必要ですし、最終的には人による確認も欠かせません。
経営者にとって大切なのは、
「AIを導入するか、しないか」
と考えることではなく、
「どの業務をAIに任せ、どこに人の判断を残すか」
を設計することだと思います。
AIに任せられる業務は任せ、その分、人は経営判断や顧客対応、業務改善など、より付加価値の高い仕事に時間を使う。
そのためには、業務を標準化し、AIでも回るように設計していくことが重要です。
経理の目的は、仕訳を入力することではありません。
会社の数字を正しく把握し、より良い経営判断につなげることです。
AIが急速に普及している今だからこそ、
「自社の経理は、経営に活かせているか」
を改めて考えてみてもよいのではないでしょうか。
当事務所でも、AIを経理や会計業務にどのように活用できるか、日々研究を重ねています。
単なる業務効率化にとどまらず、月次決算や経営分析、社内業務の改善など、AIをどのように経営に活かしていくかという視点で取り組んでいます。
「自社でもAIを活用してみたい」
「経理業務をもっと効率化したい」
「どの業務をAIに任せればよいのか分からない」
といったご相談がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
