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『2040年の新社会人へ』④ いよいよ始まる教育の「OSアップデート」!次期学習指導要領が描く未来の羅針盤』

「正解のないAI時代」。 この連載の第1部(第1〜3回)を通して、2040年の社会がどれほど激変するのか、そして子どもたちを取り巻く就業構造がどう変わっていくのかを、お伝えしてきました。

では、そんな予測不能な未来に向けて、学校はただ指をくわえて時代が過ぎるのを見ているだけなのでしょうか?

結論から言います。 国は今、本気で学校教育のあり方を根本から変えようとしています。

それが、現在盛んに議論が進められている「次期学習指導要領の改訂」です。私はこれを、単なるルールの変更ではなく、「日本の教育の巨大なOSアップデート」だと捉えています。

今日から始まる第2部では、この教育のアップデートの真の狙いがどこにあるのかを、現役校長の視点からお話ししていきます。

学習指導要領は「未来の羅針盤」

そもそも「学習指導要領」とは何でしょうか? 私たち学校の教員にとっては最も身近な言葉ですが、保護者の皆様にとっては「国が決めた、なんだかお堅いルールブック」というイメージかもしれません。

簡単に言えば、学習指導要領とは「全国どこの学校でも、一定の水準の教育を受けられるようにするためのゴール設定」です。約10年ごとに時代に合わせて見直される、「学校教育の未来の羅針盤」と言ってもよいでしょう。

これまでの日本の教育は、ある意味で「昭和のOS」のまま走り続けてきた部分がありました。 高度経済成長期に求められたのは、「みんなが同じことを、正確に、素早くできる力(均質性)」でした。

決められたマニュアル通りに動き、同じ知識を正確に暗記し、同じ正解を早く出せる人が「優秀」とされた時代です。

しかし、社会の前提が根底から覆りました。 2040年の社会で求められるのは、「一人ひとりが違う強みを活かし、予測不能な変化に柔軟に対応する力(多様性と主体性)」です。

私たち大人が毎日使っているスマートフォンも、定期的に「OSのアップデート」を行います。古いOSのままでは、最新の便利なアプリは動きません。 それと全く同じです。

子どもたちが未来の社会という新しいステージで自分らしく生きていくためには、教育という土台のOSを「2040年仕様」にアップデートしなければならないのです。

これは「国から言われたからしぶしぶ変わる」といった受動的なものではありません。子どもたちに希望ある未来を手渡すための、前向きでワクワクする挑戦なのです。

「何を知っているか」から「知っていることをどう使うか」へ

では、新しい教育のOSでは、具体的に何が変わるのでしょうか。 最大のポイントは、「何を知っているか(知識の量)」から「知っていることをどう使うか(知識の活用)」への劇的な転換です。

少し前まで、英単語や歴史の年号をたくさん暗記していることは、受験や社会で大きな武器になりました。 しかし今はどうでしょう。スマートフォンに話しかけたり、生成AIに質問したりすれば、人間が一生かかっても覚えきれないほどの情報を、一瞬で提示してくれます。

 知識を頭にただ詰め込むだけの教育は、すでに意味を成さなくなってきているのです。

これからの時代に本当に必要なのは、得た知識を「ツールとして使いこなす力」です。 「これはどういうことだろう?」と自ら問いを立て、多様な考えを持つ周りの人と対話しながら解決策を探り、誰も思いつかなかった新しい価値を生み出していく力。

これを教育の世界では「コンピテンシー(資質・能力)」と呼んでいます。 少し難しい専門用語に聞こえるかもしれませんが、要するに「激動の社会を生き抜くための、実践的なたくましさ」です。知識という「材料」を使って、どんな「自分だけの料理(解決策)」を作れるか、ということです。

この新しい学びを実現するためには、私たち教員のあり方も大きく変わらなければなりません。 ただ黒板の前に立って一方的に知識を教え込む「ティーチャー」から、子どもたちの興味・関心を引き出し、ともに考えながら伴走する「ファシリテーター」へ。

現場の校長として、教員自身のマインドチェンジには、試行錯誤が伴うことも事実です。しかし、教室で子どもたちが目を輝かせ、教員の想像を軽々と超える「自分なりの答え」を見つけ出す姿を見るたびに、「この方向は絶対に間違っていない」と確信しています。

新しい学力はどうやって測るのか?

さて、ここまで読んでいただいた保護者の方や先生方の中には、ある疑問が浮かんでいるかもしれません。

「コンピテンシーのような新しい力を育てるのは分かったけれど、それって今までのようなペーパーテストで測れるの?」

まさにその通りです。 育てる力のゴールが変われば、当然、その力をどう見取るかという「テストの形(評価方法)」も根本から変わらなければ矛盾が生じます。

次回(第5回)は、この「評価のアップデート」について詳しく紐解いていきます。 キーワードは、タブレット端末を使った新しいテストの形「CBT(Computer Based Testing)」そして世界基準の学力観である「PISA型の読解力・思考力」です。

「点数」だけでは見えない子どもたちの力を、学校はどのように見取り、育てようとしているのか。
教育評価の大転換ともいえるこのテーマについて、次回詳しくお伝えします。

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