【聖なる経済学】 社会・環境コストの内部化
訳者コメント:
「環境に優しい」という触れ込みでハイブリッド自動車と電気自動車の普及が推し進められてきました。実際には、政府による購入補助金がなければ、ハイブリッド車の経済性も環境負荷も、従来のガソリン車からほとんど改善していません(製造時の排出量も含めれば、CO2排出量はコストに概ね比例します)。さらに、希土類元素や銅、ニッケル、リチウムといった電動車に不可欠な資源の採掘は、どれも深刻な環境汚染を伴うので、さらに膨大な隠れたコストが潜んでいます。何より、自動車を1人1台所有し、24時間のうち20時間以上は駐車場を占拠しているだけという非効率的な資源使用のあり方が「モータリゼーション」なのであり、いつでも移動できる「モビリティ」至上主義が生む犠牲なのです。モビリティとは移動可能性、つまり土地から切り離された生き方です。
◆
4.社会・環境コストの内部化
動機:今日、社会に何の代償も払わずに地下水を枯渇させることが可能であるのと同様に、地球の廃棄物吸収・処理能力、地圏の炭素循環能力、そして人体が有毒汚染物質に対処する能力を枯渇させることも可能です。今日、汚染やその他の環境悪化によって生じるコストは、通常、汚染者ではなく社会や将来の世代が負担しています。これは明らかに不公正であるだけでなく、汚染と環境悪化の継続を助長することにもなります。
移行と政策:現在、汚染に対する経済的動機を逆転させる主な手段は、違反に対する罰金を伴う規制ですが、実際には、その根底にある理論においても、多くの欠陥を抱えています。まず、基準を満たす動機はありますが、基準以上に改善する動機はありません。また、特定の汚染物質の総排出量や天然資源の総消費量に全体的な上限を設けることもできません。これらの欠点を是正するための現在の提案には、排出量取引制度や環境税などがあります。こうした制度は数多く提案され、一部地域では既に実施されています。排出量取引制度は、二酸化硫黄の場合、酸性雨の削減にはかなり効果がありましたが、二酸化炭素排出量の削減にはあまり効果がありませんでした。規制によってであれ利用料によってであれ、最終的には生態系を害する活動から利益が上がらないようにすべきです。
結局のところ、単に価格を高くするだけでは、生態系の破壊を食い止めることは不可能です。無限に貴重なものに対して、有限の価値を当てはめることは不適切です。しかし、いかなる生態学的関係においても、与え奪うことには持続可能なレベルというものが存在します。つまり、ある基準値以下であれば、ある程度のオゾンが排出され、ある程度の銅が採掘され、ある程度の木が木材として利用され、ある程度の水が帯水層から汲み上げられ、ある程度の魚が海から捕獲されてもよいということです。その基準値には経済的な価値判断を反映させることができ、それによってそれらの資源を必要とする活動に相応のコストがかかるようになり、リサイクル、再利用、および保全を行う動機が生まれます。
これを実現するための最も簡単な手段は環境税です。将来的には、通貨を地球の資源や、廃棄物を吸収・変換する能力で裏付けることで、貨幣制度そのものを地球からの恵みに基づいたものにできるかもしれません。
経済生活への影響:これらの措置は、環境保護と経済の対立を解消します。最良の経営判断と最良の環境判断を一致させ、企業家精神に基づくイノベーションの力を地球環境への貢献へと転換させます。環境保全、汚染対策、有害廃棄物処理に特化した巨大な新産業が誕生するでしょう。廃棄物ゼロの製造が当たり前となるでしょう。原材料費の高騰は、小型化と効率化に向けた継続的な進歩を促すでしょう。
安価で使い捨ての商品を避ける経済的な動機によって、工業製品はより高価になり、より耐久性が高く、修理しやすくなるでしょう。私たちは自分の持ち物をより大切にし、手入れをし、長く使い続けるようになります。自動車、機械、特定の工具や家電製品といった、資源集約型の大型商品は、近隣地域などのコミュニティ内で共有されるようになるでしょう。居住地域はよりコンパクトになり、家はより小さくなり、大きな家には近親者を含む拡大家族や、核家族以外の様々な形の家族が住むようになるでしょう。
経済レントの排除と同様に、これらの措置は課税対象を所得から資源へと移行させ、税は私たちが貢献するものに対してではなく、私たちが奪うものに対して課されるようになります。最終的に所得税は完全に廃止され、煩雑な記録管理の義務や政府による過剰な監視から解放されることになるでしょう。
前< 経済レントの撤廃、およびコモンズの枯渇に対する補償
目次
次> 経済・通貨の地域化
◆
原文リンク:https://sacred-economics.com/sacred-economics-chapter-17-summary-and-roadmap/
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

