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【聖なる経済学】 マイナス金利通貨

訳者コメント:
老後2000万円問題」は、2019年に金融庁の「市場ワーキング・グループ」が発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」 をきっかけに話題となった問題です。平均的な高齢夫婦の場合、老後30年間で約2000万円の金融資産が不足する可能性があるというものです。そして勧められるのが「運用」つまり株投資です。少しでも有利な条件を求めて、経済成長している分野に投資するのです。本書のこれまでの議論からわかるように、経済成長はコモンズの現金化であり、何らかの収奪を伴います。高齢者の年金も、若い頃に自分が積み立てた貯金であるという建て付けになっています。この両方が、「自分さえ良ければ」という考えから発したものであると同時に、その考えを強化します。マイナス金利は「増やさねば」という強迫観念を減らすでしょう。高齢者を「社会で養う」という考えに立てば、当年度収入でまかなう年金制度も可能になるでしょう。


2. マイナス金利通貨

動機:準備預金に対するマイナス金利と、時間とともに価値が下がる有形通貨は、金利の影響を逆転させます。成長を伴わない繁栄を可能にし、経済全体にわたって富の公平な分配を促進し、将来のキャッシュフローの割引を終わらせることで、短期的な利益のために将来を担保にする必要がなくなります。さらに、あらゆるものが朽ちてその源に戻るという世界の真実を具体化します。もはやお金は自然の法則に対する幻想的な例外ではありません。最後に、お金はある意味で数千年にわたる技術発展が蓄積した力を表していて、それはすべての人類の共通の遺産であるため、現在のような無リスクのプラス金利制度のように、単にお金を所有するだけで利益を得るのは不当なことです。

移行と政策:2009年以来、劣化する通貨への移行が目前に迫っていて、各国の中央銀行が準備預金の金利をゼロやわずかにマイナスにまで引き下げました。現在、経済は停滞し、特に新型コロナウイルスに伴って、債務はかつてない水準まで増加しました。いま私たちの目前にある選択肢は、極端な緊縮政策によって負債を維持しようとするか、富を再分配するプロセスを開始するかの二つです。新たな危機が発生し、新たな救済措置が発動されるたびに、劣化する通貨で返済不可能な債務を買い取り、富の集中を激化させることなく金融インフラを救済する機会が生まれます。さらに、従来の金融刺激策やケインズ主義的な財政刺激策が明らかに失敗した場合、中央銀行は金利をマイナスに引き下げるという明白な次の段階を無視することができなくなります。通貨戦争を防ぐために、これはすべての主権国家による協調政策として実施されるか、あるいは世界共通通貨に組み込まれるべきです。

連邦準備銀行は現在、準備預金にマイナス金利を課したり、価値が下がる銀行券を発行したりする権限を持っていません。そのためには政治的なプロセスが必要です。中央銀行家が金融政策手段の無力さに悩む中、この考え方が経済・政治の議論に加わる機は熟しています。過去10年の景気低迷は、金利をゼロに引き下げても、大幅な経済成長の見込みがある場合にしか貸し出しが促進されないことを示しています。何度にもわたる量的緩和がもたらしたのは、超過準備金、役員の大幅昇給、投機、企業株の買い戻しだけでした。これを強欲のせいにすることはできるでしょうが、成長がなければ貸し出しを正当化するに足る生産資本投資もありません。銀行は資金を低成長経済に貸し出すよりも、ゼロ金利で保有する方を選びます。しかし、マイナス2%、あるいはマイナス5%の金利なら、はたして保有する意思があるでしょうか。

経済生活への影響:投資家階級を除くすべての人にとって、お金を使う日常的な体験は変わらないでしょう。富裕層には想像しにくいかもしれませんが、今日ではほとんどの人が給料ギリギリの暮らしをしており、月給数ヶ月分以上の貯蓄をすることはめったにありません。貯蓄にゼロやマイナスの金利がかかるといっても、その影響は取るに足りないものです。より裕福な人々にとって、貯蓄は依然として可能ですが、リスクを負って投資しない限り、貯蓄の価値は時間とともに徐々に減少します。リスクなしでお金を増やし、「お金に働いてもらう」方法はなくなります。国債でさえ、利子はゼロかそれ以下になるでしょう。個人レベルでも企業レベルでも、高額な買い物には貯蓄ではなく低金利または無利子のローンが主な資金調達手段となります。(どのみち、これは既に起こっていることです。)企業は利用する投資資金は、将来のキャッシュフローの大部分を債務返済に充てる必要がなくなり、今日の経済生活を支配している「成長するか、死ぬか」という強迫観念がなくなります。

最後に、年金基金や保険は、おそらく社会化されるか、あるいは当年度の歳入によって賄われることが必要でしょう。


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原文リンク:https://sacred-economics.com/sacred-economics-chapter-17-summary-and-roadmap/


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