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利用者五人、開発者はAI。わが家のアプリ三本

毎月、AIに道具代を払っている。メインはClaudeのMaxプラン。本の執筆やアプリの開発、この記事のような文章も、相棒として大活躍している。ChatGPTのPlusも並行して払っていて、こちらはもっぱらレビュー係だ。Claudeが書いたアプリや文章を、別の目で点検させるのに使う。調べ物は無料のGeminiで足りている。

2つ合わせると、安くはない。かなりの負担だ。それでもなんとか支払うことができるのは、私にゴルフも酒もないからだ。趣味に消えるはずだった分をそのままAIに向けている。妻はAIを趣味の代わりとして認めてくれた。

noteでは、AIと本を作った話を3本書いてきた。ビジネス書がひとつ、小説がふたつ。その小説の記事に1行だけ、AIでアプリ開発もやっていた、と書いた。今回はその中身について書いていきたいと思う。

家の中では、AIと作ったアプリが3本動いている。子供のお小遣い台帳、中学英単語の学習アプリ、図書館で借りた本の管理アプリ。利用者は妻と子供3人と私の5人で、ストアには出していない。

私はコードが書けない。デザインもできない。コードはClaudeが書き、画面のデザインはClaude Designに任せた。私の仕事は、何を作るかを決めることと、家族の文句を聞くことだ。文句の話は、このあとたっぷり出てくる。

お小遣いに利息がつく

1本目はお小遣いの台帳だ。子供3人のお小遣いを、わが家では現金ではなくポイントの残高で管理している。毎月のお小遣いは決まった日に自動で入金され、お手伝いをこなせばその報酬も積まれ、現金化すれば減る。入出金の操作は親にしかできない。子供は自分のスマホで残高と履歴を見る。銀行アプリの家庭版だとイメージしてもらえばいい。

7月、ここに利息の機能を足した。親が月利と付与日を決めておくと、毎月その日、残高に応じた利息がつく。ついた利息は翌月から元本に入るので、複利になる。わが家の月利は1パーセント。1ポイント1円の台帳としては銀行ではありえない数字だが、効果が実感できる利率でないと面白くない。

子供の画面には、使わずに置いておいた場合の残高が、1ヶ月後・6ヶ月後・1年後の3段で出る。2万2,000ポイント持っている子なら、1年後は2万5,400ポイント。使うか貯めるかは、この数字を見て本人が考える。

これが大受けだった。現金派を貫いてきた娘までが、手持ちの現金をポイントに換えようかと検討を始めている。

ただ、入れて2週間で苦情も来た。アプリが重い、と子供が言う。測ってみたら、開いてから残高が出るまで2秒かかっていた。

犯人は当の利息だった。開くたびに「今日は利息をつける日か」の確認を待ってから画面を出す作りになっていて、利息がつくのは月に一度なのに、残りの29日も全員が毎回その確認に付き合わされていた。確認を裏に回して、2秒は0.1秒になった。

作って配って終わりのアプリなら、この2秒には誰も気づかない。毎日開く人間が家の中にいると、こうして翌日には返ってくる。

いちばん貯め込んでいる子の残高は、この記事を書いている時点で2万2,000ポイントあまり。円に直せば2万2,000円を、利息付きで寝かせている計算になる。

残高、複利の見通し、最近の履歴。英単語アプリからの入金とお手伝いの報酬が並ぶ

合格すると小遣いが増える

2本目は中学英単語のアプリで、お小遣い台帳の隣に建て増しした格好になっている。収録は約2,300語。1日1回、その日の分をやる。最初は四択、慣れると例文の穴埋め、日本語で意味を打つ問題、最後は英語で綴りを打つ問題へと上がっていく。忘れかけた頃に同じ単語が戻ってくる出題方式で、ここは昔からある学習研究の知見をそのまま借りた。

目玉は台帳との連携で、その日の分に合格すると、お小遣いへ自動で入金される。初めて本番で連携が動いた日の入金額は5ポイント。7日続けると50ポイントの上乗せもある。夜9時には、その日まだやっていない人へだけ通知が飛ぶ。済ませた子の端末は鳴らさない設定にしてある。

使い手として想定していたのは高校生の息子で、実際いまも復習用に使っている。ところが、いちばんはまったのは妻だった。はまった人の目は肥える。同じ問題ばかり出る、単語が全然増えない、と言われて、調べたら本当だった。

2,300語も積んでおきながら、先頭の300語しか出題されない。設計書には「進み具合に応じて範囲が広がる」と書いてある。書いてあるだけで、実装されていなかった。範囲を1,000語に広げ、新しく出会う単語を1日5個から15個に増やし、次の段階に上がるまで25日かかっていた昇格の条件も11日に縮めた。

ついでに妙なことも分かった。英語で最も頻繁に使われる語であるはずの the が、一度も出題されていなかった。収録順で1,772番目、300語の圏外にいたからだ。

採点にも穴があった。日本語で意味を打つ問題で、「る」と1文字打つと433語が正解になる。部分一致の判定が緩すぎた。答えを知らなくても正解できてしまう。

見つけたのは家族ではなく、冒頭に書いたレビュー係のAIだ。小説のとき、何も知らない白紙のAIに原稿を読ませて検品した話を書いたが、アプリでも同じことをしていて、書いたAIとは別のAIにコードを点検させている。身内で褒め合っていても、穴は見つからない。

1日1回、その日の分だけ。合格すればお小遣いに入金される

わが家では一度に15冊借りる

3本目は妻のアプリだ。わが家は図書館のヘビーユーザーで、妻と娘と次男を中心に、一度に15冊借りてくる。よく借りるのは娘で、中身はオオカミ関連の本とファンタジー小説。小説の記事に書いた、オオカミの本ばかり読んでいる娘である。

15冊分の返却期限を頭で覚えておくのは無理がある。借りた本を登録して、期限を数えるアプリを作った。管理を受け持つのは妻だ。

裏表紙のバーコードを読ませると、書名と著者が入る。日本の本はバーコードが2段並んでいて、要るのは上の段だけだから、下の段を拾わない細工がしてある。返却期限は図書館ごとの貸出日数から自動で決まり、スマホのカレンダーには「図書館返却 何冊」とまとまった予定が入る。町の図書館の蔵書検索と、予約した本が用意できたかの確認も、アプリの中で済む。

要望は本人から次々に来る。最初は、一覧に本物の表紙を出してほしい。次は、妻の機種のカメラが近くにピントを合わせられず、バーコードに寄れないことが分かって、写真に撮って静止画から読み取る方式を追加した。

履歴が増えてくると、書名で探したい、つけた評価で絞りたい。図書館ごとの絞り込みはどうかと、こちらから提案したこともあるが、それは要らないと言われて入れていない。起動が若干遅い、と言われたときは、起動時に読み込む量を4割削った。

借出中がちょうど15冊。返却期限はアプリが数える

アプリの本棚から本が消えた

5月のある日、妻の画面から本棚がそっくり消えた。

このアプリはログインなしで使える代わりに、端末ごとの匿名のIDでデータを預かる作りだった。設定の奥に「セッションを終了する」というボタンがあり、妻がそれを誤って押した。押すと新しいIDが発行され、古いIDに紐づいた本棚は見えなくなる。画面から、登録してあった12冊が消えた。

さいわい、データそのものはサーバーに残っていた。古いIDから新しいIDへ12冊分を移して、本棚はその日のうちに戻った。戻したその日のうちに、あのボタンは削除した。

いまはメールアドレスで本棚を保護できるようにし、同じ本棚を夫婦2台のスマホで見られるようにもしてある。妻の端末に何が起きても本棚は私の端末に残るから、あの日のような復旧作業は、もう要らないはずだ。

ストアに無いアプリを、家族に配る

3本とも、正体はPWAと呼ばれる仕組みのウェブアプリだ。ストアからは落とさない。ブラウザで開いたページを「ホーム画面に追加」すると、アイコンが並び、あとは普通のアプリと変わらない見た目と使い勝手で動く。英単語アプリの夜9時の通知も、この形のままiPhoneに届いている。個人が審査を通さずに家族へアプリを配るなら、いまのところこれがいちばん手軽だ。

とはいえ、5人のために作ったものを、ずっと家の中に置いておくつもりもない。ゆくゆくはSwiftというアップル純正の言語で作り直して、App Storeに出すのが目標だ。その検討も始めている。

注文主は食卓にいる

開発の回し方は、最初の記事に書いた本の作り方と変わらない。AIに役割を与えて、議題を出して、決めるのは人間。アプリになって変わったのは、注文主が同じ食卓にいることだ。

重い、と言われれば「開いてから残高が出るまでの時間を測って、原因を特定してほしい」とAIに渡す。直れば翌日から使われるし、しくじれば翌日また言われる。原稿の読者は顔が見えないが、こちらの利用者は夕食どき、向かいに座っている。

直した新版は、家族が次にアプリを開いたとき自動で入れ替わる。ただし妻が本の題名を打っている最中に入れ替えが走ると、打ちかけの文字が消える。だから入力中は更新を保留して、手が離れてから切り替える。こういう細かい作り込みも、注文したのは私で、手を動かしたのはAIだ。

AIに任せて回すには、覚えていてもらう必要がある。3本分の設計、過去にやらかした失敗、妻や子供の要望の履歴。AIは自分のノートにそれを書き溜めていて、新しい作業の前に、まず読み返してから始める。このAIに記憶を持たせる仕組みの話は、また別の機会に書く。

おわりに

小説の記事を待ってくださっていた方には毛色の違う話でしたが、アシエラの物語は終わっていません。娘の注文が、まだ残っています。

このあと、他人が作ったソフトを家に入れて台帳を13本作った話を、前編と後編に分けて書きました。

AIに役割を与えて働いてもらうやり方は、仕事向けに書いた最初のKindle本にまとめてあります。
▼ Kindle本『非・入力型AI活用術』

オオカミの本ばかり読んでいる娘のために書いた小説は、こちらです。

▼ 1作目『だれも呼ばない名前 アシエラⅠ』(250円・Kindle Unlimited 対象)

▼ 続篇『還る温もり アシエラⅡ』(450円・Kindle Unlimited 対象)


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