【経営理念は現場から生まれる⑦】社長の手帳を見れば、本当の経営理念が分かる
経営理念には、立派な言葉が並びます。
「社員を大切にする」
「お客様第一」
「未来を創造する」
「人材育成を重視する」
「地域社会に貢献する」
どれも大切なことです。
しかし私は、経営理念を見るとき、そこに書いてある言葉だけでは判断しません。
むしろ、
社長が一週間、何に時間を使っているか
を見ます。
なぜなら、社長が本当に大切にしているものは、言葉よりも時間の使い方に表れるからです。
「社員を大切にする」と言いながら、社員と話していない
例えば、
「当社は社員を大切にします」
という理念を掲げている会社があるとします。
ところが、社長の一週間を見る。
社員との面談はない。
幹部との対話もない。
現場を見る時間もない。
社員の成長について考える時間もない。
一方で、
顧客対応。
営業。
会議。
メール。
トラブル処理。
外部団体の付き合い。
こうした予定で一週間が埋まっている。
私は、ここに違和感を持ちます。
本当に社員を大切にしているのであれば、
社員のための時間が、手帳のどこかにあるはず
だからです。
「未来をつくる」と言いながら、未来を考える時間がない
同じことは、未来についても言えます。
「未来を創造する会社」
「変化を恐れない会社」
「新しい価値を生み出す会社」
こうした言葉を掲げる会社は多いですね。
しかし、社長の予定を見ると、
朝から晩まで目の前の仕事。
お客様対応。
社内の確認。
見積もり。
承認。
会議。
問題処理。
これで一日が終わる。
では、
未来は、いつ考えるのでしょうか。
新規事業を考える時間。
業界の変化を見る時間。
新しい人に会う時間。
会社の3年後を考える時間。
こうした時間が一週間のどこにもなければ、
「未来を創造する」
という理念は、まだ経営に落ちていません。
時間は、言葉より正直である
人は、言葉では立派なことを言えます。
社員が大事。
家族が大事。
健康が大事。
未来が大事。
学びが大事。
でも、本当にそうかどうかは、
何に時間を使っているか
を見れば分かります。
時間は、一日24時間しかありません。
全部に使うことはできない。
だから、何かに時間を使うということは、
何かに使わないということです。
つまり、時間配分とは、
優先順位そのもの
なのです。
社長の手帳は、経営理念の実行記録である
私は、社長の手帳やカレンダーを見ることがあります。
すると、その会社の経営がかなり見えてきます。
誰と会っているのか。
どんな会議が多いのか。
顧客対応にどれくらい時間を使っているのか。
社内にどれくらい時間を使っているのか。
考える時間があるのか。
外部活動が多すぎないか。
移動時間はどうなっているか。
予定と予定の間に余白があるか。
これを見ると、
社長が実際に何を優先しているのかが分かります。
だから私は、
社長の手帳は、経営理念の実行記録
だと思っています。
理念と現実がずれている会社
例えば、
「人材育成を重視する」
と掲げている。
しかし、部下を育てる時間を取っていない。
「お客様を大切にする」
と掲げている。
しかし、目の前の要求を何でも受けて、社員が疲弊している。
「挑戦する会社」
と掲げている。
しかし、失敗すると社長が強く叱る。
「任せる経営」
と言っている。
しかし、すべて社長の承認が必要。
こういう会社は珍しくありません。
理念が間違っているのではありません。
問題は、
理念と、日々の時間配分・行動がつながっていない
ことです。
本当に大切なものには、先に時間を取る
多くの人は、
「時間ができたらやろう」
と考えます。
社員との面談は、時間ができたら。
新規事業は、時間ができたら。
経営を考えるのは、時間ができたら。
健康管理も、時間ができたら。
家族との時間も、時間ができたら。
しかし、時間はなかなかできません。
目の前の仕事はいくらでも入ってきます。
だから、
本当に大切なものほど、先に時間を確保する
必要があります。
これは時間管理の話ではありません。
経営理念の話です。
「人材育成を重視する」
なら、育成の時間を先に入れる。
「未来をつくる」
なら、未来を考える時間を先に入れる。
「健康を大切にする」
なら、健康のための時間を先に入れる。
理念とは、
時間の予約までして初めて、本当に経営に入る
のだと思っています。
社長の時間は、会社全体へのメッセージになる
社長が何に時間を使うかは、社員も見ています。
社長が売上の話ばかりする。
すると、
「この会社は売上が一番大事なんだな」
と社員は感じます。
社長が人材育成の時間を取る。
すると、
「人を育てることが大事なんだな」
と伝わります。
社長がクレームがあるたびに飛んでいく。
すると、
「何かあれば社長が出てくる会社なんだ」
と学習します。
社長が部下に任せて見守る。
すると、
「自分で考えなければならない」
と社員は学びます。
つまり、
社長の時間の使い方そのものが、社員教育
なのです。
理念を説明するよりも、毎日の時間の使い方の方が強いメッセージになることがあります。
社長が忙しすぎる会社では、理念が後回しになる
社長が忙しすぎる会社には、一つの特徴があります。
重要なことより、緊急なことが優先され続けることです。
顧客から電話が来た。
対応する。
社員から質問が来た。
答える。
トラブルが起きた。
処理する。
会議が入った。
出る。
頼まれた。
引き受ける。
こうして一日が終わる。
全部必要な仕事に見えます。
しかし、これを続けていると、
会社にとって本当に重要な仕事が消えていく
のです。
人を育てる。
未来を考える。
仕組みをつくる。
幹部と話す。
顧客構成を見直す。
新しい事業を考える。
こうした仕事は、今日やらなくても会社は止まりません。
だから後回しになります。
しかし、三年後には大きな差になります。
経営理念とは「時間配分のルール」でもある
私は、経営理念をもう少し実務的に考えてもいいと思っています。
理念とは、
「私たちは何を大切にする会社なのか」
を示すものです。
ならば、それは当然、
何に時間を使うのか
にもつながるはずです。
例えば、
「社員を育てる」
なら、
社長は育成に時間を使う。
「お客様との長期的な信頼を大切にする」
なら、
短期売上だけを追わない。
「未来をつくる」
なら、
考える時間を確保する。
「任せる」
なら、
社員が考える時間を奪わない。
ここまで具体化すると、理念が生きてきます。
「何をやめるか」も理念で決まる
時間は有限です。
新しいことを始めるには、何かをやめなければなりません。
だから理念があると、
何をやらないかも決めやすくなります。
この会合には出ない。
この顧客対応は社員に任せる。
この会議はやめる。
この仕事は受けない。
この付き合いは減らす。
なぜやめるのか。
それは、
もっと大切なことに時間を使うため
です。
これも、経営理念を実行するということです。
額縁の理念と、生きている理念
私は、経営理念には二つあると思っています。
一つは、
掲げている理念。
もう一つは、
実際に生きている理念。
掲げている理念は、会社案内やホームページに書いてあります。
実際に生きている理念は、
社長の判断。
社員への接し方。
お金の使い方。
そして、
時間の使い方
に表れます。
この二つが一致している会社は強い。
社員も迷いにくい。
社長も判断しやすい。
逆に、言葉と行動が違うと、社員はすぐに分かります。
「社長は人が大事と言うけれど、結局売上しか見ていない」
「任せると言うけれど、最後は全部社長が決める」
言葉よりも、毎日の行動の方を社員は信じます。
一週間168時間は、社長の価値観そのものである
一週間は168時間。
これは誰でも同じです。
その中で、
何に時間を使ったか。
誰と会ったか。
何を考えたか。
何を断ったか。
何を任せたか。
何を後回しにしたか。
そこには、社長の価値観が全部出ます。
私は、経営者にこう問いかけたい。
あなたが大切だと言っているものに、本当に時間を使っていますか。
社員が大切なら。
未来が大切なら。
家族が大切なら。
健康が大切なら。
会社の理念が大切なら。
そのための時間は、手帳のどこにありますか。
経営理念を見直すなら、まずカレンダーを見る
経営理念を見直そうと思ったとき、
いきなり文章を書き直す必要はないと思います。
まず、一週間のカレンダーを見る。
そして、
この時間の使い方は、自分が掲げている理念と一致しているだろうか。
と考える。
もし一致していなければ、
理念を変えるのか。
時間の使い方を変えるのか。
どちらかです。
私は多くの場合、
時間の使い方を変えることで、理念が現実の経営に戻ってくる
と思っています。
経営理念は、額に飾る言葉ではありません。
毎週のカレンダーに現れるものです。
社長が本当に大切にしているものは、言葉よりも時間が教えてくれます。
だから私は、
社長の手帳を見れば、本当の経営理念が分かる。
そう考えています。
次回予告
次回は、
【経営理念は現場から生まれる⑧】理念を掲げても会社が変わらない本当の理由
について書いてみます。
立派な経営理念をつくった。
社内にも掲げた。
朝礼でも唱和している。
それなのに、なぜ会社は変わらないのか。
私は、その理由はかなり単純だと思っています。
理念が、日々の判断基準まで降りてきていないからです。
次回は、「額縁の理念」を「使える理念」に変えるところまで考えます。
