高校生採用なら採れる、は間違い|全国4.12倍・東京16.12倍の採用市場
「大学生の採用が難しくなってきたので、高校生採用に切り替えよう」
最近、このように考える中小企業も増えているのではないでしょうか。
大学生の採用では、知名度の高い企業が積極的に採用を行い、初任給を引き上げる動きも続いています。
中小企業が大手企業と同じ条件や知名度で競争することは、簡単ではありません。
そのため、高校生採用を新しい採用経路として検討すること自体は、間違った判断ではないと思います。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
高校生採用は、大学生採用より競争の少ない市場ではありません。
厚生労働省が公表した最新の全国確定値では、2026年3月卒の高校新卒者に対する求人倍率は、全国で4.12倍です。
東京都に限ると、16.12倍に達しています。
「高校生採用へ切り替えれば採用できる」という考えだけで参入しても、応募者が集まらない可能性があります。
今回は、高校生採用市場の現状と、中小企業が高校生から選ばれるために必要な考え方を整理します。
高校新卒の求人倍率は全国4.12倍
厚生労働省が公表した、2026年3月卒の高校新卒者に関する数値は次のとおりです。
求人数:49万8,722人
求職者数:12万1,079人
求人倍率:4.12倍
就職内定者数:11万9,770人
就職内定率:98.9%
ここでいう求職者数は、学校またはハローワークの職業紹介を希望した高校生の数です。
約49万9,000人分の求人に対して、求職者は約12万1,000人。
単純計算すると、就職を希望する高校生1人に対して、約4.1人分の求人があることになります。
就職内定率も98.9%です。
企業が高校生を選ぶ市場というよりも、高校生が複数の求人から就職先を選べる市場になっていると考える必要があります。
なお、一般の雇用統計で使われる「有効求人倍率」と、高校新卒者を対象にハローワークが集計する「求人倍率」は別の統計です。
高校生採用について発信する際は、厚生労働省の正式な表記である「高校新卒者の求人倍率」を使用します。
東京都の求人倍率は16.12倍
全国平均の4.12倍だけでも高い水準ですが、地域によって採用環境は大きく異なります。
2026年3月卒の都道府県別求人倍率で、最も高かったのは東京都です。
東京都の状況は次のとおりです。
求人数:6万2,066人
求職者数:3,850人
求人倍率:16.12倍
就職内定率:99.4%
数字上は、求職者1人に対して約16.1人分の求人がある計算です。
東京都には企業と求人が集中する一方、学校やハローワークの紹介によって就職を希望する高校生の数は限られています。
都内で高校生採用を行う会社は、同じ地域の中小企業だけと競争しているわけではありません。
大手企業や知名度の高い企業、待遇改善を進める企業とも、限られた高校生をめぐって競争することになります。
求人倍率が高い都道府県トップ3
2026年3月卒の高校新卒者に対する求人倍率が高い都道府県トップ3は、次のとおりです。
1位 東京都
求人数:6万2,066人
求職者数:3,850人
求人倍率:16.12倍
2位 大阪府
求人数:4万683人
求職者数:4,536人
求人倍率:8.97倍
3位 京都府
求人数:6,761人
求職者数:1,217人
求人倍率:5.56倍
東京都の16.12倍が突出していますが、大阪府や京都府も全国平均を上回っています。
ただし、求人倍率だけで採用難易度のすべてが決まるわけではありません。
高校生が希望する職種と、企業が募集している職種が一致しているかも重要です。
例えば、企業側の求人が多くても、その職種を希望する高校生が少なければ、採用競争はさらに厳しくなります。
反対に、地域全体の求人倍率が高くても、高校生が関心を持つ仕事内容や教育体制を具体的に伝えられれば、応募につながる可能性はあります。
今後の記事では、製造、建設、運輸、販売、サービス、事務など、産業・職業別の求人数と高校生の希望を確認していきます。
高校生採用へ参入する企業は増えている
リクルートワークス研究所の調査では、高卒者について採用数が「増える」または「変わらない」と回答した企業の割合は、2012年卒の30.1%から、2027年卒では46.4%に上昇しています。
約15年間で約1.5倍です。
また、この変化は中小企業だけではなく、大手企業にも見られると分析されています。
大学生採用が難しくなった中小企業だけが高校生へ目を向けているのではありません。
若手人材を確保したい大手企業や、現場の技術を継承したい製造・建設・運輸などの企業も、高校生採用を強化しています。
高校生採用は、すでに一部の企業だけが行う採用方法ではなくなっています。
大学生が採れないから高校生へ、では成功しない
高校生採用を検討することは、中小企業にとって有効な選択肢の一つです。
しかし、大学生向け求人の応募資格だけを「高卒」に変えても、高校生から選ばれる求人にはなりません。
特に、次のような状態では採用が難しくなります。
求人票に具体的な仕事内容が書かれていない
高校生にも入社直後から即戦力を求めている
研修や教育担当者が決まっていない
学校へ求人票を送っただけで終わっている
職場見学を受け入れていない
入社後の一日の流れが分からない
資格や免許の取得支援が分からない
高卒入社者の将来のキャリアが見えない
先生や保護者が確認したい情報を伝えていない
高校生本人だけではなく、進路指導の先生や保護者が安心できる情報を準備する必要があります。
中小企業は何を伝えるべきか
中小企業が大手企業と同じ知名度や初任給で競争することは、簡単ではありません。
一方で、高校生が会社を選ぶ判断材料は、知名度と給与だけではありません。
例えば、次の情報です。
入社後に担当する仕事
一日の仕事の流れ
入社後の研修内容
誰が仕事を教えるのか
一人で仕事を任されるまでの期間
資格・免許取得の支援
休日と残業の実態
配属先の人数や年齢構成
高卒入社者のキャリア
入社後の面談やフォロー体制
通勤、寮、住宅に関する支援
仕事の魅力だけではなく、大変な部分
「若い人を採用したい」という企業側の希望ではなく、高校生が入社後の生活と成長を想像できる情報を伝えることが重要です。
2027年3月卒の選考は9月16日から始まる
2027年3月卒の高校生採用は、すでに重要な時期に入っています。
全国共通の基本的な日程は次のとおりです。
6月1日:ハローワークによる求人申込書の受付開始
7月1日:企業から学校への求人申込み・学校訪問開始
9月5日:学校から企業への応募書類提出開始
9月16日:企業による選考・採用内定開始
現在は、学校から企業への応募書類提出が始まり、選考開始を迎える直前です。
応募予定者がいる企業は、面接日時、選考内容、合否連絡、内定後フォローの準備が必要です。
まだ応募が来ていない企業も、求人票を出したまま待つのではなく、学校へ採用継続中であることを伝え、職場見学や二次募集に備える必要があります。
高校生採用は、簡単な代替手段ではない
高校生採用は、大学生採用が難しくなった企業の逃げ道ではありません。
全国4.12倍、東京都16.12倍という数字が示すとおり、高校生から選ばれるための準備が必要な採用市場です。
ただし、知名度や初任給だけで結果が決まるわけでもありません。
仕事内容、教育体制、資格取得支援、職場環境、入社後のフォローを具体的に伝えられれば、中小企業にも採用の機会があります。
求人票を提出することは、高校生採用のゴールではありません。
学校、先生、高校生、保護者に会社を知ってもらい、安心して応募できる状態を作ることが、高校生採用のスタートです。
次回は、2027年3月卒の高校生採用スケジュールと、企業が時期ごとに行うべきことを詳しく整理します。
その後は、産業・職業別に、
どのような求人が多いのか
高校生はどのような職種を希望しているのか
どの職種で需給のずれが発生しているのか
製造・建設・運輸などの企業は何を伝えるべきか
をデータに基づいて解説していきます。
出典
厚生労働省
「令和7年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況取りまとめ(2026年3月末現在)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001716588.pdf
厚生労働省
「2027年3月新規高等学校等卒業者の採用選考期日等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/press20260216_job_application_schedule_of_2025_highschool_graduates_00003.html
リクルートワークス研究所
「2026年、新卒採用になにが起こるのか―『高校卒シフト』という知られざる変化」
高校生採用をこれから始める企業向けに、学校訪問・職場見学・面接・内定後フォローで使える実務テンプレート10点をまとめました。
▶ 高校生採用の実務テンプレ|学校訪問から内定まで
