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子どもが大泣きすると、妻の心も泣き出してしまう。だから作った、2つの安全ルール。

「妻の表情が消え、一点を見つめ始める――」

これが、我が家における解離性障害の発作の「前兆」です。このサインを事前にキャッチできるかどうかが、その後の家庭内の平和を大きく左右します。

一度スイッチが切り替わってしまうと、妻には主に2つの症状が現れます。

1つは、夫である私のことも、愛する息子のことさえも分からなくなってしまう【別人(交代人格)】の状態。目つきがガラリと変わり、家族をまるで「見たこともない知らない他人」として冷たくあしらう態度を取ることもありました。(※幸いなことに、この【別人】になる発作は最近はなくなってきています)

そしてもう1つが、壮絶な精神的虐待を受けていた「子どもの頃」に引き戻されてしまう【幼児退行】です。部屋の真ん中でガタガタと震えながらうずくまり、「学校に行かせてください」「ごめんなさい……」と過去の恐怖に怯えて泣き叫び、同じ言葉を繰り返します。

かつて、息子が2歳のイヤイヤ期で大泣きした時、この【幼児退行】の発作が重なったことがありました。 目の前には、泣き叫ぶ2歳の息子。 そして隣には、子どもをあやすどころか、過去のトラウマに囚われて「ごめんなさい」と泣き叫び、うずくまる大人の妻。

大人の体を持った妻が激しいパニックを起こして子ども返りしてしまう。その力も声も大きい大人を相手にしながら、同時に幼い息子の面倒も見る。まさに、泣き止まない子どもが同時に2人いるかのような、非常に手強い状況だったのです。

私は幼い息子を抱っこであやしながら、「妻をどうにかしなければいけない」と必死にその場を収めようとする毎日。心療内科の主治医からは、「解離の発作が起きたときは、本人の脳がパニックを起こしている状態なので、発作がおさまるまで静かに待つしかありません」と言われていました。

しかし、激しい恐怖に怯えて泣き叫んでいる最愛の妻を前にして、ほっとくわけにはいかないのが家族の本音です。どうにかお互いが疲弊せずにやり過ごすために、私はある「家庭内の決め事」をしました。

綺麗事ではない、我が家が泥沼のパニックを回避し、今も実践している「2つの安全ルール」をお伝えします。

ルール①:発作の「前兆」を捉え、部屋を物理的に分ける

先ほど書いた通り、妻の発作が起きる前は、決まって「一点を見つめて、顔から完全に表情が消える」という明確なサインがあります。

そこで私は妻に、体調が良いときに一つだけ、落ち着いてお願いをしました。 「私がこの前兆を感じて声をかけたら、何よりも優先して、すぐに寝室に行って横になってほしい」

これだけを徹底しました。発作がリビングの真ん中で起きてしまうと、子どもへの影響も大きく、私も同時に2人をケアしなければならなくなります。しかし、発作が本格化する前に、私がその前兆を察知して、妻に寝室という「安全なシェルター」に移動してもらうことで、私はリビングで息子の育児に集中できるようになりました。

お医者さんの言う通り「発作がおさまるのを待つ」にしても、寝室のベッドの上で安全に休んでもらう。これをするようになってから、夫である私自身の立ち回りが、劇的に楽になりました。

ルール②:子どもには、幼い頃から「ママの病気」をちゃんと伝える

もう一つのルールは、子どもから病気を隠さないことでした。 息子がまだ小さく、言葉の意味をすべて理解できない頃から、「ママはね、時々心が痛くなる病気んだよ。だから、急に元気がなくなっちゃうことがあるんだ」と、真摯に伝え続けました。

隠そうとすればするほど、家庭内の異様な空気は子どもに伝わり、余計に恐怖を与えてしまうと考えたからです。

治療3年目。現在、息子は4歳になりました。 今では、ママが一点を見つめたり、表情が消えそうになったりする前兆を察すると、息子はものすごく優しく接してくれるようになりました。お母さんの体調を思いやる、健気で優しい男の子に育ってくれたのです。

ただ、親としては「幼いながらに、周りに気を遣って無理をしていないだろうか」と、少し心配になり、胸がキュッとなることもあります。だからこそ、ママが寝室で休んでいる間は、私は息子を思いきり抱きしめて、「いつも優しくしてくれてありがとうね、大好きだよ」と、息子への心のフォローを何より大切にしています。

最後に:育児と看病のダブルパンチで限界を極めているあなたへ

パートナーの心の病気と、幼い子育て。この2つが重なったときの難しさは、なかなか周囲には伝わりにくいものです。

でも、お医者さんの「待つしかない」という正論を真に受けて、あなたがボロボロになる必要はありません。

まずは、

  • 発作が起きる「前兆(表情が消える、一点を見つめるなど、その人それぞれのサイン)」を冷静に観察すること

  • その前兆を感じたら、本格的なパニックになる前に、寝室へ誘導するルールを作ること

この「物理的に部屋を分ける」という選択をするだけでも、家庭内の安全を守り、あなた自身の心を守る大きな盾になります。完璧な看病を目指さず、まずは「家庭内の安全な仕組み」から作ってみてくださいね。


ひとりで抱え込まずに相談できる場所(お役立ちリンク)

もし、この記事を読んでいるあなたが、パートナーの心の病や子育ての両立に限界を感じ、誰にも言えずに苦しんでいるなら、まずはこうした専門の窓口やサポートを頼ってみてください。話を聞いてもらうだけでも、心が少し軽くなるはずです。

  • こころの耳(厚生労働省) 働く人のメンタルヘルスポータルサイトですが、家族の心の病への接し方や、メール・LINEでの無料相談窓口が非常に充実しています。

  • 精神保健福祉センター(全国一覧) 各都道府県にある公的な専門機関です。本人だけでなく、病気を支えるご家族からの相談も直接受け付けており、具体的な医療や地域の支援につなげてくれます。

  • ぷるすあるは(子どものための精神保健プロジェクト) 精神疾患を抱える親とその子どもをサポートしている団体です。親の病気を子どもにどう伝えるべきか、子どもの心をどう守るかについて、分かりやすいイラストや絵本で発信されています。

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