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【登山×救助】私が山で「救助ヘリ」を呼んだ日



1.静寂を破る落下音


突然の滑落事故

ある岩場で4人パーティでのクライミングを楽しんでいた時のことです。
同パーティのAさんが約10メートルの高さから、滑落しました。

急いで駆け寄ると、幸い意識はありましたが、明らかに片腕を骨折して動けない状態。

救助を呼ぶしかない…
20年の登山人生の中でも、これは最大の非常事態です。

2.救助要請、そして準備

パニックを防ぐ「最初の行動」

事故が起きた時、一番怖いのは周りの人間がパニックになり、二次遭難を引き起こすことです。

極限状態の中では、人間は「普段からやり慣れていること」か「事前に決めていた手順(フロー)」しか実行できません。

その為、私は緊急事態に遭遇した時、最初はなるべく簡単な行動をするように決めています。

この時、 私が真っ先に行ったのは「その場の全員で水を一口飲むこと」です。

これだけで、焦っていた頭がクールダウンされ、次に何をすべきか冷静に考えられるようになります。

救助要請と、見落としがちな役割分担

「指示役」というポジション

落ち着きを取り戻した後、私はあえて「指示役」に回ることにしました。

事故の際、「手当」や「通報」といった行動はすぐに思いつきます。
しかし、現場では他に必要な行動は多くあります。

だからこそ、私は「みんなが見落としやすい仕事(荷物まとめや全体の段取りなど)」を考え、振り分ける役目、つまり「指示役」に回りました。

この時、私を含め3人に、下記の分担を指示しました。
A:電話での救助連絡
B:周辺確認、用具回収、山岳会と家族への連絡、搬送時の付き添い準備
自分:応急処置、けが人Cの様子確認、荷物まとめ

救助要請、現在位置の伝え方

救助要請の結果、町から遠い山奥であることからヘリが来ることに。

この通報の際、スムーズに場所を伝えるには、スマホのGPSを使って「緯度・経度」を伝えるのが一番確実です。
またヘリ救助の場合、ヘリが下りれる場所があるか、周囲を確認して報告する必要もあります。
そのため、2名以上で救助の電話を掛けると対処しやすいです

この時は、Aさんが電話する横で、Bさんが登山アプリで緯度経度を調べたり周辺確認をしていました。

忘れると「詰む」3つの準備

Aさんに通報を任せつつ、私は自分の着ていたシャツをひねって即席の三角巾を作り、Cさんの腕を応急手当で固定しました。

ヘリコプターは、要請すると驚くほどすぐにやって来ます。 準備に使えるわずかな時間で、私は猛スピードで以下の準備を進めました。

  1. 連絡先の確保と、携帯・財布を持たせる
    最悪はぐれても連絡が取れるよう、私の連絡先を渡し、Cさんのポケットにスマホと財布をねじ込みました。

  2. 荷物の片付けと周囲への声かけ
    ヘリの風圧で飛ばされそうなものを一箇所にまとめて固定し、周りの登山者にも安全確保の声をかけます。

  3. 車の鍵の回収
    これが超重要です。Cさんの車の鍵を回収し忘れてヘリに乗せてしまうと、下山した後にCさんの車が動かせず、残された私たちが完全に「詰み」ます。

    もしほかに車があっても、Cさんの車が山奥に置き去りになるため、後日回収に来る必要が出てしまいます。

ヘリ到着:想像を絶する爆風と「置き去り」

しばらくすると、上空に救助隊のヘリコプターが到着しました。
その瞬間、現場は想像を絶する「爆風」と「爆音」に包まれます。

枝葉や砂が弾丸のように飛んできて、目を開けることもできません。
ヘリの爆音の下では、全力で叫ばないと会話もできません。
ヘリが起こす風圧の前では、人間はただ地面に伏せて耐えることしかできないのです。

プロの救助と、残された荷物

いざ吊り上げの作業が始まると、救助のプロたちのルールが最優先されます。

私が作った即席の三角巾やポーチはサッと外され、現場でしっかり固定できないケガはそのままの状態で、Aさんは空へと引き上げられていきました。

そして、Aさんのポケットに入り切らなかった大きなザックやロープなどの荷物は、すべて現場に「置き去り」になります。

残された者たちの「後始末」と「合流」

まさかの「搬送先不明」

ヘリが飛び去り、静寂が戻った後、ふもとから地上部隊の消防や警察が登ってきました。

現場検証などは行われず、簡単な事情聴取が行われただけでした。 ここで私たちは、驚くべき事実を知ります。

なんと、「Cさんがどこの病院に運ばれたか、現場の警察官も知らない」というのです。

しかも事情聴取後、下山方法など確認されずに警察は去っていきました。

自力下山と「車」の重要性

残された私たちは、自分たちの荷物に加えて、Cさんの大量の置き去り荷物を手分けして背負い、フラフラになりながら自力で下山するしかありませんでした。

もしここで、ふもとに自分たちの車がなかったら、重すぎる荷物で身動きが取れず、本当に途方に暮れていたと思います。 救助要請後の下山には、やはり車の存在が不可欠でした。

病院での再会と、痛恨のミス

本人からの電話

下山して車に戻った後、Aさん本人から直接電話がかかってきて、ようやく運ばれた病院が分かりました。 (事前に連絡先を渡しておいて、本当に良かったです)。

車を運転して病院へ急行し、無事にAさんと合流。 幸い命に別状はないと聞き、心の底から安堵しました。

しかし、Aさんはこう言いました。

「薄着のまま吊り上げられて、ヘリの中も病院も寒くてキツかった……」

私は、ハッとしました。 骨折の固定や荷物の整理には気を配ったのに、「ヘリの上は寒い」という環境の変化をすっかり忘れていたのです。

救助を待つ間、可能な限りAさんに「厚着をさせて送り出す」べきでした。 これは私にとって、痛恨の反省点です。

おわりに:命をつなぐ「手順(フロー化)」の大切さ

この事故から得られた最大の教訓は、緊急時の手順(フロー化)がいかに大切かということです。

  • パニックを防ぐために、まずは全員で水を飲む。

  • 通報の段取りや、見落としがちなタスク(鍵の回収や荷物まとめ)を事前に考える

  • 現場で誰が何をやるか、役割分担を必ず行う

  • ヘリの風圧や寒さに備えるなど、何が必要か事前に知っておく。

登山の安全対策とは、注意して事故を防ぐことだけではありません。
「もしもの事故が起きた後に、いかに冷静に対処するか」という手順を先に作っておくことです。

この救助活動では、職場の避難訓練の経験が大いに役立ちました。
そのため、「面倒くさい」と思っても、ぜひ真面目に参加してみてください。

この私のリアルな体験談が、皆さんの安全な登山の参考になれば嬉しいです。

また、この体験以外にも自分の経験や知識を投稿していますので、興味があれば読んでみてください。


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