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【登山×行動食】行動食はただの「おやつ」ではない、「技術」だ。効率と栄養から考える補給ハック


はじめに:ただ「腹を膨らます」だけの行動食は、エラーの元だ

こんにちは、シュガーです。 登山中に足が鉛のように重くなり、一歩も動けなくなる「シャリバテ(ハンガーノック)」。
これは気合の問題ではなく、「バッテリー切れによる強制シャットダウン」ともいえる立派な非常事態です。

このエラーを防ぐため、多くの人が登山前や休憩時にパンやおにぎりをドカ食いしたり、大量の「ナッツミックス」でお腹を膨らませようとします。 しかし、エンジニア的視点で言えば、それは非効率です。

そこで、理想の補給方法と、自分のお勧め補給食を紹介します。

1. 理想の補給法:「一括補給」のバグと「トリクル充電」

バッテリーと人体はよく似てる?やってはいけない補給法

行動食の運用において、最もやってはいけないのが「短時間での大量補給(ドカ食い・ガブ飲み)」です。これらはエネルギー補給というシステムに深刻なバグを引き起こします。

行動中の補給はバッテリー充電によく似ています。
バッテリー:
・空になるまで放電すると、バッテリーが急速に劣化する
・高速充電すると急速に電圧が上がる
・充電速度に比例して発熱(エネルギーの無駄)と劣化(不全)が起こる

人間の体 :
・水分やエネルギーが枯渇すると、低血糖や脱水で行動不能になる
 →熱中症やけいれん等のリスクも増加する
(ドカ食い)
・大量の糖質を入れると一時的に元気になる。(血糖値スパイク)
・直後にインスリンが過剰分泌され、急激なダルさ(電圧降下)に襲われる
・消化のために血液(CPUリソース)が胃腸に集中
 →足や脳が「処理落ち」を起こして極端にバテやすくなる
(がぶ飲み)
・短時間に大量に水を飲むと、乾きは収まる
・胃腸で処理しきれる水分量を超えると、尿や汗で急激に排出される
・体内の電解質、浸透圧バランスが崩れ、消化不良や足の攣りにつながる

スマホに倣え?理想的な補給法

逆に言えば、効率的な補給方法もバッテリーと同じです。
「バッテリーが減りきる前に、常に微弱な電流を流し続ける」こと。

30分〜1時間ごとに、その時の状況(タスク)に合わせて、以下のリソースを「意図的に切り替えて定量ずつ給電」します。

  • 登り(高負荷): 即効性の糖質でダイレクトに電力を供給。

  • 稜線歩き(長時間の低負荷): 脂質・タンパク質で長期的な電源(持続力)を確保。

  • 発汗時(排熱): 水分と合わせて、クエン酸・ミネラルを補給し、バッテリー自体を健常に保つ。

これにより、胃腸の処理負荷を最小限に抑えつつ、ゴールまで全く出力(パフォーマンス)を落とさずに歩き続けることが可能になります。 ここからは、この「理想の給電プロトコル」を実現するための、私の具体的なDIY行動食ハックを紹介します。

2.おすすめ行動食

今回は、よくある「おすすめのおやつ紹介」ではありません。 効果、効率、コスト、そして過酷な環境への耐性を論理的に満たした、**「自作(DIY)燃料ハック」**を共有します。

【効率的】一石三鳥のマルチタスク。「粉飴入り温紅茶」

秋冬の登山や、早朝の冷え込む時間帯。さらには沢登の最中でも。
私は必ず保温ボトル「粉飴(マルトデキストリン)を溶かした温かい紅茶」を入れていきます。

「粉飴」とは、アスリートが使う純粋な炭水化物(糖質)の粉末です。
甘さが控えめなのに吸収効率が極めて高く、ダイレクトにエネルギー(電力)に変換されます。


これを温かい紅茶に溶かすことで、以下の3つのタスクを1アクションで並列処理できます。

  • 水分補給:ラジエーター液の補充

  • エネルギー補給(水筒1本で400kcal):高効率バッテリーの給電

  • 熱水摂取による体温の維持:システム低下を防ぐ熱源の確保

冷たい固形物を無理に胃に流し込むより、温かい液体で給電するほうが内臓への負荷(処理落ち)を圧倒的に抑えられます。

【他分野の流用】トレラン用チューブ×「自作粉飴ジェル」

極限まで荷物を削り、走り続ける「トレイルランナー」たちの知恵は、
一般登山にも大いに役立ちます。

彼らは固形物ではなく、歩きながら片手でチューッと吸える「エナジージェル」を多用します。

しかし、市販のスポーツ用エナジージェルは、小さなパックで1個300円〜500円と非常に高価です。毎回の登山で浪費して山に行けなくなるようでは本末転倒です。

そこで私は、「ソフトフラスク(トレラン用の柔らかいジェルチューブ)」を買い、中身を「粉飴+少量の水+好みのジュース」で自作しています。
これに加えて、アミノ酸やクエン酸、マグネシウムなどを追加すれば機能性ジェルも作れます

これなら、マテリアルコスト(材料費)は市販品の1/10以下。手が汚れず、歩みを止めずに、必要な分だけ瞬時に給電できる最強の外部バッテリーが完成します。


【節約×栄養】DIY「プロテイン・マシュマロシリアルバー」


「それでも、少しは噛みごたえのある固形物が欲しい」 そんな時は、市販の栄養バーを買うのもよいですが、自分で自作することもできます。

【シュガー式・DIYシリアルバーの作り方】
材料:フルーツグラノーラ100g、マシュマロ10個、バター10g
   (好みで)プロテインパウダー
作り方:
1.
フライパンにバターを入れ、溶かす。
2.そこにお好みのフルーツグラノーラを投入。
3.ここでプロテインパウダーを追加(筋肉へのアミノ酸供給)
4.火を止めて混ぜ合わせてまとめる
5.バットに広げ、冷やし固めてから一口大にカット。

マシュマロのゼラチンと糖分が接着剤となり、ボロボロ崩れない完璧なシリアルバーが完成します。
プロテインを混ぜることでPFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物の比率)を自分好みに最適化でき、何より圧倒的に安上がりです。


【効果的】排熱処理を加速させる「クエン酸ドリンク」


以前、『サプリメントによるデバッグ術』の記事でも詳しく書きましたが、行動中にはエネルギーを入れるだけでなく、「疲労物質の処理(排熱)」を同時に行う必要があります。

そこで活躍するのが「クエン酸ドリンク」です。
クエン酸回路(TCAサイクル)を回すことで、蓄積する疲労物質を素早くエネルギーに再変換してくれます。

自作の粉飴ジェルにクエン酸を混ぜたり、ハイドレーション(水筒)の水をクエン酸入りドリンクにしておくことで、行動中常に「冷却ファン」を回し続けるような強力な疲労軽減効果が得られます。

【極地環境に】凍らない塩気「徳用カルパス」

最後に、私の失敗談(エラー)を一つ。

昔、冬山で「カロリーが高いから」とスニッカーズ(チョコバー)を持っていったことがあります。
いざ食べようとすると、氷点下の環境でカチカチに凍結(フリーズ)しており、噛んだ瞬間に歯が折れそうになりました。
雪山の氷点下の影響を軽視した痛恨のミスです。

それ以来、寒冷地でも凍らず、かつ「塩気」と「肉っけ(ゆっくり燃え続ける脂質とタンパク質)」を補給できる最適解としてたどり着いたのが、「徳用カルパス」( スーパーのおつまみコーナーにあるアレ)です。脂質が含まれているため凍結せず、汗で失われた塩分を補え、甘い行動食に飽きたときの「味覚の再起動」として完璧に機能します。

おわりに:自分の「燃費」を把握する楽しみ

車に燃費や油種があるように、人間も燃費があり、必要な栄養も違います。

「自分は1時間にどれくらいの燃料(カロリー)を消費するのか?」
「どんな味の組み合わせなら、疲れていてもバグらずに食べられるか?」

ただお店で売っているものを買うのではなく、自分の身体というシステムの仕様に合わせて、燃料を自作(DIY)し、最適化していく。これもまた、登山の立派な楽しみ方の一つです。

次回の山行では、ぜひ「トリクル充電」を意識して、自作の行動食を試してみてください。驚くほど足が前に出続けるはずですよ!

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