【大学受験】「AIの時代だから大学は理系に行け」でいいのだろうか?私立理系学部の学費
大学受験の準備を進めるなかで、多くの保護者の頭を悩ませるのが学費の問題です。
医学部の学費が突出して高いことはよく知られていますが、実は医学部を除いた理系学部、いわゆる理工系・農学系・薬学系の学部も、文系学部に比べてかなり高額になります。
国公立志望から私立への切り替えを考える段階になって、初めて理系学部の学費の高さに驚くことは少なくありません。
今回は、文部科学省の調査データやネット上の最新情報をもとに、私立理系学部の学費の実態、学費が高い大学トップ5、大学院進学とその学費をまとめます。
私立理系学部の平均学費はいくらか
文部科学省が2025年に公表した私立大学の学生納付金調査によると、2025年度入学者の理科系学部の初年度納付金は、授業料・入学料・施設設備費・実験実習料などを合わせて平均約171万7000円でした。
これは文系学部の平均約130万円と比べて、40万円以上高い金額です。
ちなみに医学科を除く、医歯系学部は平均約621万円と、理科系学部よりもさらに突出して高額になっています。理科系学部のなかでも、薬学部は実習費が上乗せされる分だけ理工系より高くなる傾向があり、農学部・獣医学部も実験材料費の関係で平均をやや上回る水準にあります。
初年度以降も、施設設備費や実験実習料は毎年発生するため、4年間の総額でみると、私立理系学部は500万円台後半から600万円台に達するケースが多いといえます。
文系学部の4年間総額がおおむね400万円台前半であることを踏まえると、理系学部を選ぶだけで100万円以上の差が生まれることになります。
また、この理科系学部の初年度納付金は、2023年度の調査と比べて4.7%増加しています。
全学部平均の増加率が1.2%だったことを考えると、理系学部の学費は他の学部よりも速いペースで上がっていることがわかります。
物価や資材費の上昇、実験設備の更新費用などが背景にあると考えられ、今後も緩やかな上昇傾向が続く可能性は十分にあります。
数年先の入学時点でどのくらいの負担になるかは、余裕をもって見積もっておいたほうがよいでしょう。
学費が高い私立理系学部トップ5
ネット上で公開されている複数の学費比較データをもとに、医学部を除いた私立理系学部(主に工学系・理工系)の4年間総額が高い大学を見てみると、次のような顔ぶれが挙がります。
学科によって金額は前後しますが、いずれも首都圏や関西圏の知名度の高い大学が並んでいる点が特徴です。
1位 玉川大学 工学部 約711万円
2位 慶應義塾大学 理工学部 約685万円
3位 立命館大学 生命科学部 約668万円
4位 上智大学 理工学部 約666万円
5位 中央大学 理工学部 約663万円
これら以外では、早稲田大学の先進理工学部や同志社大学、関西大学の理工系学部も、4年間総額が600万円台前半に位置しています。
なお、薬学部は修業年限が6年であるため単純な比較はできませんが、私立薬学部の6年間総額は900万円から1400万円程度になることも珍しくなく、理系のなかでもとくに学費負担が重い分野といえます。
一方で、同じ工学系・理工系学部でも、都市部を離れた地方の私立大学や、実験設備への投資を抑えている大学では、4年間の総額が400万円台後半に収まるところも存在します。
トップ5の顔ぶれだけを見て「理系はどこも600万円以上かかる」と思い込むのではなく、志望する分野を学べる大学を幅広く比較したうえで、学費の高低を判断することが大切です。
ここで押さえておきたいのは、学費の高低は、偏差値の高さや知名度と直結しているわけではないという点です。
トップ5に挙がった大学は知名度の高いところが多いものの、同じくらいの偏差値帯の大学でも、学科によっては400万円台後半で収まるところもあります。反対に、偏差値がそれほど高くない大学の工学部でも、実験設備への投資次第で学費が高めに設定されているケースもあります。
学費は、大学の難易度そのものよりも、その学部・学科がどれだけ実験設備や研究環境にコストをかけているかによって決まる部分が大きいのです。偏差値だけを見て「難関大学だから学費も高いはず」「この大学なら安いはず」と思い込まず、志望校ごとに個別に確認することが欠かせません。
ランキングを見て「どうせ都会の大学ばかりだから、地方なら私立理系学部でもそこまでしないでしょ?」と思った方は、是非、調べてみてください。「え?この大学でこんなに高いの!?」ときっと驚くと思います。
なぜ理系学部は学費が高くなるのか
理系学部の学費が文系学部より高くなる主な理由は、実験・実習にかかるコストです。
化学系や生命科学系の学科では薬品や試薬、専用の実験器具が必要になりますし、工学系の学科では最新の機械や測定機器、ソフトウェアの整備が欠かせません。
少人数での実習やゼミ形式の授業が多いことも、教育コストを押し上げる要因になっています。
研究室に配属される3年次・4年次には、実験材料費や学会参加費用などが別途かかる場合もあり、こうした費用の一部が施設設備費や実験実習料というかたちで学費に組み込まれています。
私立大学は国からの補助が国公立大学ほど手厚くない分、こうした設備投資の費用を学費でまかなう必要があります。
そのため、同じ大学の中でも、文系学部より理系学部の授業料や施設設備費が高く設定されているのが一般的です。
大学によって最新設備への投資の力の入れ方はさまざまであり、それが学費の差につながっています。
理系学部の大学院進学率と、その学費
理系学部を語るうえで欠かせないのが、大学院進学という選択肢です。
文部科学省の令和7年度学校基本調査によると、理学分野の大学院進学率は47.5%、工学分野は40.4%、農学分野は28.1%となっています。
学部によっては卒業生の半数近くがそのまま大学院に進学する計算になり、とくに研究職や技術職を目指す場合は、大学院修了までを見据えて進路を考える家庭が多いのが実情です。
一般的に国立大学のほうが大学院進学率が高い傾向にあるとされていますが、私立大学の理工系学部でも、学科によっては進学率が3〜5割に達するところは珍しくありません。
そして偏差値が高い理工系大学ほど、大学院への進学率は高く、早慶ですと学科によっては6割以上の学生が大学院へ進学するというデータもあります。
学費の面では、私立大学院の修士課程(博士前期課程)の初年度納付金は、授業料・入学料・施設設備費などを合わせて平均約115万6000円です。2年目以降は入学料がかからない分、年間の負担は初年度よりやや軽くなりますが、2年間の総額でみるとおおむね210万円前後になります。
学部4年間の学費に、この大学院2年間分をあわせて考えると、理系学部進学から大学院修了までの6年間で、私立の場合は800万円前後の教育費がかかる計算になります。
「学部だけ」を前提に資金計画を立てていると、大学院進学の段階で想定外の負担が生じかねません。志望する分野の大学院進学率が高い場合は、学部の学費だけでなく、この先2年分の費用も念頭に置いておくと安心です。
保護者が考えるべきこと
理系学部を志望する場合、学費の高さを理由に選択肢を狭めてしまう前に、まず知っておいてほしいことがあります。
それは、大学によって学費に大きな差があるという事実です。
同じ工学部でも、大学によっては4年間の総額が400万円台に収まるところもあれば、700万円を超えるところもあります。
すでに触れたとおり、その差は偏差値の高さとは必ずしも一致しません。
偏差値や知名度だけで比較するのではなく、学費の内訳や4年間の総額、さらには大学院進学の可能性まで含めて早めに調べておくことが、後悔のない進路選びにつながります。
もう一つ意識しておきたいのが、国公立大学という選択肢です。
国公立大学の理系学部であれば、授業料は文系・理系を問わずほぼ一律で、4年間の総額はおよそ250万円前後に収まります。
私立理系学部との差は300万円以上になることも珍しくないため、お子さんの志望分野が国公立大学でも学べる内容であれば、併願校の一つとして検討しておく価値は十分にあります。
また、私立大学の多くには、成績優秀者向けの特待生制度や、入学試験の成績に応じた授業料減免制度が用意されています。国の高等教育の修学支援新制度や、大学独自の給付型奨学金も選択肢に入ります。
こうした制度は大学ごとに条件や金額が異なるため、志望校が固まる前の段階から、募集要項や大学の公式サイトで情報を集めておくと安心です。特待生制度は出願方式によって対象になるかどうかが分かれることも多く、出願を決める前に確認しておくと選択の幅が広がります。
子どもに納得感のある選択を提示できることが重要
理系学部は、学費こそ高くなりがちですが、専門性の高い教育を受けられることや、就職に直結しやすい実践的な学びが得られることも事実です。
学費だけで進路の可能性を狭めるのではなく、奨学金制度や特待生制度、大学院進学まで含めて、家庭でできる限り早い段階から情報を共有し、お子さんと一緒に現実的な選択肢を整理していくことをおすすめします。受験直前になって慌てないためにも、学部選びと並行して学費の計画を立てておくことが、今の時期にできる一番の備えになるはずです。
学費の話は、お子さんにとっても親にとっても、なかなか切り出しにくい話題かもしれません。ですが、進路が固まってから慌てて資金の相談をするよりも、志望校選びの早い段階で率直に話し合っておいたほうが、結果としてお子さんも納得したうえで受験に集中できます。
学費というお金の話を、進路選びの一部として早めに家庭の会話に組み込んでおくことが、これからの数年間を安心して過ごすための土台になるはずです。
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