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第058話|声を聞く者|教団に利用された勇者たちの戦記|ココ編【……ん?臭うな】

———上空

反響音が、人間の輪郭を捉えた。

——翼の胸が跳ねた。

もう一度、落ち着いてその輪郭を見た。

人間は二人。

だが、約束の人物ではなかった。

姿を見られないよう、距離を取った。

その日は時間をずらして、出直すことにした。

だが、腹は満たされていない。

翼は、別のリンゴの木を探した。

人の手が入ったリンゴの実ほど美味いことを、翼は知っていた。

だからといって、人に見つかる危険を冒すわけにはいかない。

夜間は、人が少ない。

翼は、夜でも飛ぶことができた。

食事を目的とするときは、夜間に行動することが多かった。

———森の中

パックが村を出てから、まもなく丸一日が経とうとしていた。

辺りは、すでに暗くなっていた。

だが、森の中は静けさとは無縁だった。

虫の声、葉のざわめき、川の流れ。

森は、さまざまな音で溢れていた。

ふと、“お節介な風”が異変に気づいた。

“寡黙な土”は、パックの足元に気を配った。

“優しい光”は、パックの足元を照らした。

“冷静な水”は、川の流れで音をかき消した。

“慎重な闇”は、影の存在を闇に紛れ込ませた。

———精霊たちは“異変”を察し、一斉に沈黙した。

パックは気づかないまま、歩を進めた。

次の瞬間、パックの足元を影が横切った。

身体が一瞬強張るほどの、大きな影。

音もなく滑空してきたその存在は、一度だけ大きく羽ばたき、前方の開けた場所に舞い降りた。

精霊たちはそわそわした。

パックの手が震えた。

恐怖ではなかった。

闇に佇む、大きな翼のシルエット。

光る金色の目。

次の瞬間、その影が声を発した。

「……小僧、生きてたか」

パックは言葉を失った。

「……」

「……小僧じゃないよ」

アーラが鼻を鳴らす。

「……待たせすぎだ」

パックは肩をすくめた。

「……けっこう頑張ったんだけどな」

雲の切れ間から、月明かりが差した。

アーラの首に、パックのマフラーが巻かれているのが見えた。

「———!」

パックの足が、少しずつ速くなった。

そして、走り出した。

アーラは身を屈めた。

パックは———

その背中に飛び乗った。

「……落ちるなよ?」

アーラは助走に入った。

パックの身体が、後ろに引っ張られた。

アーラは一瞬、身体を沈めて———飛び立った。

アーラは“荷物”の分だけ、力強く羽ばたいた。

懐かしくて、心地良い重さだった。

パックの髪が、後ろへ流れた。

緩やかに、左旋回。

夜空へ舞い上がる大きな翼は、瞬く間に大地を小さくした。

二人は、しばらく黙っていた。

再会の風を感じていた。

パックはふと、手綱代わりに握っていたマフラーを見た。

「……」

そして、匂いを嗅いだ。

「……」

「……これ、洗おっか」

アーラは無表情で答えた。

「……頼む」

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