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ある日、一番弟子がいなくなった(第七話:飛躍)

第六話はこちら。

📌第七話:飛躍📌

🔶ナカノ、メイン担当者に抜擢される

ナカノが保守担当として不動の地位を築いた頃、ひとつの開発案件が持ち上がった。ナカノがチーム松田の一員として開発に携わった機能を大きく拡張するもので、彼を軸にやってもらえないか、という話だった。

というのも、筆者は別の開発で現場監督を務めており、先の案件を担当するのは物理的に不可能だったのだ。ならば、ナカノに白羽の矢が立つのは自然な流れといえる。もし受ければ、保守の業務はいったん外れることになる。

これはナカノにとって、大きなステップアップのチャンスだ。二つ返事で健太やります!と言いたいところだが、問題は奴のぷるぷる絹ごし豆腐メンタルである。おそらく首を縦には振らない。いや、不安で振れないだろう。

可能な限りプレッシャーを弱めるため、保守のボスに相談し、技能は並だがコミュ強のベテランおじさん(他社)を窓口担当にしてもらうことにした。その陰で存分に腕を振るってもらおうという算段である。マネージメントはせず、ひたすら開発に注力する。これならやれるのではないか。

最初に話をもらった時の狼狽ぶりは、さながら警察に追われる不審者のようであった。しかし、利害関係者との調整業務を切り離し、得意分野に専念できる環境が整ったことで、健太やります!と明確な意思を示してくれた。

こうして、ナカノは新規開発案件のメイン担当者になった。お前なら絶対にやれる。心を燃やせ!限界を超えろ!©煉獄杏寿郎

🔶ナカノ、責務を全うする

おっかなびっくりのスタートを切ったナカノだったが、持ち前の術式をフル回転させ、堅牢なシステムを着実に構築していった。奴はとにかく取りこぼし、抜け漏れが少ない。設計にしろテストにしろ、想定しうるほとんどすべてのケースを網羅できる。これは他を圧する長所といえよう。

ただ、発注元の担当者がクセ強で、仕様が急遽変更になったり、ボツになったりと一筋縄ではいかなかったようだ。それでも折れずに粘り強く対応し、ついにはリリースまでこぎつけた。関係者の評価も上々で、ナカノの存在感は揺るぎないものとなった。さすがワイが見込んだ男やで!ワイが!

厳しい時期もあっただろうが、このミッションを完遂したことで、ナカノはひと皮もふた皮もズルりとムケたと思う。もうどこへ出しても恥ずかしくない。ただ…この道のりは奴にとって過負荷だったのかもしれない。おそらくもっと慎ましい、平穏なキャリアを望んでいたと、今なら想像できる。

🔶ナカノ、卒業を考えはじめる

メイン担当者としての仕事がひと区切りし、達成感もあってか、外の空気を吸ってみたい、違う業務、技術に触れてみたいという気持ちが湧いてきたようだった。自然な衝動だと思うし、個人的には大いに賛成である。若い、吸収力のある時期に引き出しを増やしたほうがよい。

これまでもチーム松田からは何人も卒業者を出していて、適宜メンバーは入れ替えるようにしていた。ただ、ナカノの場合は貢献度が高いゆえに、顧客がそうたやすく離さないことは容易に想像がついた。しかるべき手順を踏まないと、円満に卒業はできないだろう。

ひとまず、保守界隈に長居するのは得策ではない。メイン担当の任を終えた後はまた保守にと要請されていたが、筆者の手元へ戻すことにした。当時、過去に類を見ないヨタトン級の大物案件を抱えており、体制を強化したかったのもある。個人的にも、成長したナカノの姿を楽しみにしていた。

第八話へ続く。

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