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第6話|変わっていく家族との時間

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妊娠して、出産して、
気づけば私の人生は一気に
「家族の時間」へと舵を切っていた。

けれどその始まりは、
決して穏やかなものではなかった。

頼れない葛藤から始まった子育て

第一子を授かったとき、
私は実家から離れた土地で暮らしていた。

結婚して四年。
待ち望んでいた妊娠だった。

その頃、実家では弟夫婦が同居を始め、
弟の妻もまた、妊娠中だった。

もともと「頼ること」に慎重な私に対して、
彼女は、頼れるところには上手に頼れる人だった。

母の予定は、自然と彼女のサポートで埋まっていく。
その様子を見ているうちに、
私はますます、頼れなくなっていった。

距離があるからこそ、頼りたい。
でも、距離があるからこそ、頼りづらい。

そんな矛盾を抱えたまま、
私は最初の妊娠期を過ごしていた。

ほどけていく父の像

妊娠後期に入った頃、
父の重い病気がわかった。

私は遠くに住んでいて、
話を聞き、状況を想像することしかできなかった。

父の看病にかかりきりの母には余計、頼ることは難しくなっていた。

何度か帰省し、
母の愚痴や、父母それぞれの苛立ちを聞くうちに、
父への見方が、少しずつ変わっていった。

自己中心的で、
機嫌の波を隠さない人。

子どもの頃から、
「わかり合えない存在」だと思ってきた父。
それは父にとっての私も同じだっただろう。
この子の考えていることは、よくわからない、と。

けれど、
夫が父のことを尊敬し、
好意をもって接してくれたことが、
私の視点を、ゆっくりとほどいていった。

強く、
怖いばかりの印象しかなかった父の、
今まで見えなかった弱さ。

どんな状況でも仕事に対する、
冷静な判断力。

病床で、辛い治療をしていても、
弱音も吐かず、
仕事や遊びに行くことばかりに
思いを馳せている精神力。

私の進路に関しても、
父なりに素直に進ませられなかった、
何かがあったのだろう。

そんなふうに、
父をひとりの人間として見て、
理解を深める瞬間が少しずつ増えていった。


静かに変わったもの


入院中の父を見舞ったときのことだ。

入浴ができない父から、
「身体を拭いてくれ」
と言われた。

なぜ私に頼むのか。
私でいいのか。

勝手もわからず、
戸惑いながら、
私は父の身体を拭いた。

そのときの感触や
病室の空気を、
今でもはっきり覚えている。

あの瞬間、
父と私の間にあった何かが、
確かに変わった気がした。

お互いに素直になれず、
向き合うことから何となく逃げてきた父と私の間にあるものが、
静かに許されていくような時間だった。

それは同時に、
私の意識が「生まれた家族」から
「これから守っていく家族」へと、
移っていった瞬間でもあった。


このあと、
時間は一気に速度を上げていく。

震災の混乱。
父の死。
そして、立ち止まる余裕のない日々。

それらが、
私の記憶ごと塗り替えていくことを、
このときの私は、まだ知らなかった。



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第0話|揺れながら進む私

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