寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第4回 イタリア・プーリア州篇(6)
←イタリア・プーリア州篇(5)へ戻る
←イタリア・プーリア州篇(1)(著者プロフィールあり)へ戻る
←寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」マガジン topへ
←寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」総目次へ
←けいこう舎マガジンtopへ
(6)アドリア海の月を見ながら平和の尊さかみしめた
奥歯の空洞とブルーな気持ちを抱えたまま、夕闇迫るバーリ旧市街へ。 バーリは南イタリアではナポリに次ぐ経済都市で、バーリ大学ほかいくつかの大学を擁する大学都市。古くは古代ギリシャの植民都市、やがてローマ帝国の商業都市に、その後はイスラム帝国や東ローマ帝国、12世紀前半にはシチリア王国の統治下に、と帝国の歴史が綾織りされた一大港湾都市だ。
両側に民家や商店がぎっしり軒を連ねた旧市街の狭い路地を、日没方向(西)にゆったり歩く人々に混じって流されていると、すべてが周囲500m以内にあるおかげで、サンタクロースの由来となった聖ニコラを祀るサン・ニコラ教会、ノルマン時代(11世紀)に建てられたスヴェーボ城跡、同時代のカテドラルなど、バーリを代表する歴史的建築物を順にたどることになった。

サンタクロースの由来となった聖ニコラを祀るため12世紀に建てられたサン・ニコラ教会の金箔ばりの豪華な天井に見惚れ、遺骨を安置した祭壇で人々の列に混じり、皆と同じようにひざまずいて祈った。
サンタクロースへの願いは、これ以外になかった。
パレスチナで続くジェノサイドが1日も早く終わりますように。
遅くともこのクリスマスまでに。
そして世界から戦争や虐殺がなくなりますように。


教会を出て、背後に回ると鏡のように凪いだアドリア海だった。
海岸沿いの歩道は友だちやワンコと黄昏の海を眺める地元の人や旅行者でいっぱい。
海面にオレンジの影を落としながら、すみれ色の空に輝いていたのは、昨夜バーリ駅駅舎の上に見たのと同じ満月。
平和とはなんて尊く、美しく、かけがえのないものだろう。幸せそうな人々の気配を感じながら海岸で過ごしたひとときが、トラブル続きだったこの日一日の落胆や苦労をいつしか流し去ってくれた。
そして、不思議なことに、この晩から旅はほぼ順調に繋がっていったのだ。まるで歯の詰め物が旅のトラブルをすべて引き連れてこの身から離れてくれたように。

→イタリア・プーリア州篇(7)へつづく
←イタリア・プーリア州篇(5)へ戻る
←イタリア・プーリア州篇(1)(著者プロフィールあり)へ戻る
←寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」マガジン topへ
←寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」総目次へ
←けいこう舎マガジンtopへ
*****
このページの文章・写真の著作権は著者(寺田和代)に、版権は「編集工房けいこう舎」にございます。無断転載はご遠慮くださいませ。
もちろん、リンクやご紹介は大歓迎です!!(けいこう舎編集部)
