寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第6回 バルカン前篇〜ザクレブからモスタルへ(7)
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(7)ローマ皇帝宮殿跡で結婚パーティに興じる人々
朝7時、人どおりまばらな広場を見下ろす窓辺で、昨日市場で買ったザクロを山盛りの朝食を食べながら、1日の予定を決めた。午前中に宮殿をゆっくり見学したら、午後は海岸沿いのベンチで読書とうたたねといこう。
宮殿へは前日の下見の甲斐あって難なく入場。宮殿跡として見学できるいくつかの建物群のうち、まずはメインの大聖堂へ向かった。
コリント式とよばれる8本の柱が円形に並ぶカトリックの大聖堂は元はといえばキリスト教迫害者だった皇帝の霊廟という信じられない来歴。
迫害者の墓を、よりによってその神が宿る最も神聖な場へとリフォームしてしまう裏にはどんな判断があったのか。古今東西、人間の考えることは一筋縄ではいかない。


周囲の旅行者の流れに漂うように、鐘楼、洗礼室、地下室を見学し、宮殿の玄関である前庭でたまたま遭遇した男性4人のクラッパ(アカペラのコーラス)に酔った。
午後はパンとビールと本だけをリュックに入れて海岸で過ごし、夕方、再び宮殿入り口を通りかかってみると、着飾って歌ったり踊ったりしている地元の人々に占拠されていた。
近づくと、どこからか私の名を呼ぶ声が。
誰も知らないこの街で誰が?
声の方向を見ると家主のイヴァナだった。髪を結い上げ、着飾り、知人友人らしき人たちに囲まれた彼女は息をのむほど美しかった。友人の結婚式パーティだという。
なんてきれいなの。俳優かと思った、と言うと、彼女はいかにも言われ慣れているように、ありがと、と女王のように微笑んだ。
彼女を含めた背景全体が映画みたいだった。スプリトっ子たちは2000年近い歴史をもつこの街でこんなふうに暮らしているのだ。

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【著者プロフィール】
寺田和代(てらだ・かずよ)
立命館大学卒業後、会社員を経てフリーライター・エディター。
女性誌、文芸誌、総合誌などの取材・執筆、単行本の企画・制作に携わる一方、2000年に社会福祉士資格を取得し、高齢者介護の分野でも取材活動を続ける。
単著に、長年の欧州ひとり旅の経験を元に中高熟年女性が安全・リーズナブル・自分らしく海外ひとり旅を楽しむガイドブック『Soliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり旅』『Soliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり歩き』(ともにKADOKAWA)ほか、最新刊『きらいな母を看取れますか? 関係がわるい母娘の最終章』(主婦の友社)
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