【脚本】『QOL』⑤(全8話)|「人が死んで感動する物語なんか、もうたくさんだ」
※脚本①は無料で公開しています。
②以降は各話100円でお楽しみいただけます。
以降、隔日で更新していきます。
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これまでのあらすじ
泰子の小説は反響を呼び、なぜか尾野も執筆に協力することに。
そんな中、泰子はいつも明るいりんが悪性リンパ腫を患っている事実を知る。
夜の病室で「死にたくない」と本音を漏らすりんや、娘・美礼との約束で前を向こうとする尾野。
それぞれが切実な思いを抱える中、りんが突如苦しげに胸を押さえ込み——
登場人物
秋葉 泰子(30)
主人公。「乳がん」と診断された恋愛小説家。
佐月 りん(21)
泰子と同じ病棟の患者。泰子に懐く。
尾野 和雄(55)
泰子と同じ病棟の患者。治療を拒否している。
空知 充(33)
御門病院の外科医。フィギュア製作が趣味。
高峯 誠司(34)
御門病院の外科医。カリスマイケメン医師。
澄川 美礼(29)
御門病院の内科医。尾野の娘。
谷田部(49)
ベテラン看護師。肝っ玉母さんのような存在。
七海(26)
新人看護師。何事にも一生懸命だが、不器用。
栗木 圭介(30)
泰子の幼馴染。泰子に密かな恋心を抱く。
秋葉 セツ子(57)
泰子の母。かなりの自由人。
八雲 定(28)
週刊ウィークエンドの編集者。泰子の担当。
翠(26)
小説の中の登場人物。アキハの友人。
豊(26)
小説の中の登場人物。アキハの友人。
アキハ(26)
小説の主人公。進行性の乳がんを患っている。
【脚本⑤】
本作は2013年上演当時の医療状況や情報を参考に制作されたフィクションです。現在の標準治療や医療制度、表現等と異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
#9 御門病院・泰子の病室(日替り)
ベッドの上に泰子がいる。
その横には谷田部。
椅子に座っているセツ子と圭介。
圭介 「・・・ズキズキ?」
泰子 「違う」
谷田部 「チクチク?」
泰子 「んー違う」
セツ子 「わくわく!」
泰子 「うん全然違う!」
セツ子 「えーわかんなーい」
泰子 「違うんだよ、もっとこうハッキリしない感じ」
圭介 「もやもや?」
泰子 「それ!それだ!もやもや!」
圭介 「しゃあ!正解!」
セツ子 「もやもやかぁ!ま、本当はそうだと思ってたんだけどねぇ」
圭介 「お母さん負け惜しみですよ」
セツ子 「くぅ!」
谷田部 「うん、ていうか、患者の訴えをクイズにしない」
圭介 「あ、すみません」
泰子 「あーでもスッキリしました」
セツ子 「え、スッキリしたの?」
泰子 「ああ、いや、治まってはいないんだけど」
谷田部 「胸がもやもやねぇ」
谷田部、手元の用紙に記入する。
セツ子 「てかあんたも面倒な子だねぇ、もやもやでもムカムカでもどっちでもいいじゃない」
泰子 「良くない!こう、作家として、わずかな表現の違いというか、自分の症状も、完璧に伝えたいじゃない、届けたいじゃない」
セツ子 「ああそう」
泰子 「そう!」
圭介 「てか!うっかり盛り上がっちゃったけど、胸がもやもやって!大丈夫なの!?」
泰子 「まぁがん的な感じではないと思うんだけど」
圭介 「ほんとかよ?」
泰子 「多分、精神的なものだと思う」
谷田部 「一応、先生に言っとくわね」
泰子 「あ、すみません」
セツ子 「医者って凄いよねぇ、そういうさ、患者のわけわかんない擬音を聞いて、ちゃんと判断するんだもんねぇ」
谷田部 「なんか、こういう擬音の時はこういう病気が疑われるかもっていうのがあるみたいですよ」
セツ子 「へぇ、じゃあ胸がキュンキュンするとか言ったらどうなるんですかねぇ?」
谷田部 「・・・恋の病?」
セツ子 「やっぱりぃ?」
谷田部 「なんて言うわけないじゃないですか」
セツ子 「えーそうなのぉ?面白いと思ったのにぃ」
泰子 「面白いって」
谷田部 「まぁ冗談はさておき、恋の病でもなんでも、心に負担がかかるってことは良いことではないからね、ストレスは万病のもと」
泰子 「んー」
圭介 「え、泰子恋の病なの!?」
泰子 「ちげぇよ、バカ」
圭介 「バカって・・・」
谷田部 「何か心配事があるなら言っていいのよ?」
泰子 「いや、その・・・りんちゃんは、大丈夫なんですか?」
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