見出し画像

【ショートショート】高校野球怪談

「さあ、今年もこの季節がやってまいりました。第250回全国高校野球選手権大会の開幕です。

 今年は新しい試みとしまして、夏の風物詩である怪談を実況に織り交ぜていこうと思います。実況兼解説は私、怪談師の稲田純一がお送り致します。

 さて、私も高校野球の経験がありまして、忘れられないのが2年生のときの夏合宿でのことでした──さあ、ピッチにナインが揃いました。審判から白球が渡され、プレイボールです!

 補欠だった私は合宿中も悔しくて悔しくて夜も眠れませんでした。そんなときレギュラーのT君から肝試しをしようという話が持ち上がりました。ピッチャー高橋君投げた!ストライク!絶妙なコントロールです。緊張は感じられませんね。

 私は昔から怖がりでして、そのときもみんなの後ろを歩きながら、怖いなぁ怖いなぁなんて震えながらデッドボール!これは危ないですねぇ。だいじょうぶでしょうか……だいじょうぶそうです。

 えー、古びた廃寺に着いたんですね。当時はスマホなんて持っていませんでしたから、ひとつだけの懐中電灯を打ったー!左中間を抜けていく!伸びる、伸びる、その懐中電灯の灯りがチカチカ、チカチカって暗闇をストロボのように写しまして……

 *

 *

 *

 さあ9回裏2アウト3塁、カウントは2-3助けて、バッターは菅原君、3塁の高橋君はホームに帰れるか助けて。ピッチャー投げました!打った!打ちました!三遊間を抜ける助けて!ホームまで全力疾走だ!助けてくれよ!逆転、逆転です!

 

 早々に怪談のネタが尽きてしまい、普通の解説になったことをお詫び致しま……え?……途中音声が乱れましたことを、深くお詫び致します」

 

終 


怖いのは苦手です。でもなぜか観てしまいます。何かに誘われるように。
『リング』の小説がこの世で一番怖いと思っています。

田原にかさまの毎週ショートショート【高校野球怪談】に参加させて頂きました。

前回のお題はこちらです。

こちらも野球実況のショートショートです。


#毎週ショートショートnote
#高校野球怪談
#ショートショートnote
#ショートショート
#短編小説
#掌握小説
#創作

 

 

いいなと思ったら応援しよう!