【ショートショート】じゃない不倫
「朝、か」
男は薄暗い洞窟に立ち込める霧をうんざりと眺めた。ここで暮らし始めて2年が過ぎた。すでに脱出は諦めていた。
食物には困らなかった。魚は水ごと、家畜は土ごと天井の穴から落ちてくる。
今日も物資を漁りに天積へとやってきた。そこに、人が落ちていた。若い女だ。
男は必死に介抱した。日を追うごとに女は回復した。ふたりが男女の中になるのに、そう時間はかからなかった。
*
「どうかお助けください、勇者さま」
村の長老の懇願に応じる形ではあったが、勇者としてもそれは望むところだった。もしかしたら、次こそは……その思いが勇者の足取りを急がせる。
大森林の奥地に、その魔物はいた。鎌首をもたげた姿は山と見紛うほどだった。しかし勇者は臆さない。魔王をも倒した剣が一閃する。小山ほどもある魔物の頭が地へと落ち、地響きを立てる。
頭を失ったその首には、巨大な洞窟のような食道がぽっかりと口を空けていた。勇者は小走りにその中へと駆け出した。
奥に進むほど内部の湿気は深まっていく。濃い霧の先に、女が立っていた。
「おお!よく、無事で。村に帰ったらお前が巨大な大蛇に食われたと聞──」
女の背後から、赤子を抱いた男が姿をみせる。その手は、優しく女の肩に置かれた。
「なんだ、その男は……その赤子は……これは、不倫だぞ!」
勇者は泣きながら王都へと飛んで返り、以下のことを後世に伝えた。
【蛇内不倫、ダメ、絶対!】
終
はい、だいぶ無理やりになりました。
じゃない→蛇内にすぐに変換されてしまいこんなことに。きっと私の脳内にあの方の影がちらついたせいだと思ったり思わなかったり。
田原にかさまの毎週ショートショート【じゃない不倫】に参加させて頂きました。
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