【ショートショート】人魚裁判所
「えー、罪状、器物損壊罪ね。被告人、申し開きは?」
「申し開き?だったら言わしてもらうけどな、先にうちの仲間に手出してきたのはあっちやぞ。何人やられた思っとる」
「ほう。とのことだが原告、どうなの?」
「え?いや、でもこっちは家を壊されたんですよ?」
「家なんぞなんぼのもんじゃい!こっちは何人もいかれとるんやぞ!」
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」
裁判長はため息をついた。
陸地の90%が海に沈んだ今、人類は粗末な家を海に浮かべ、魚との共存を余儀なくされていた。当然、問題は山積みだ。争いは人魚裁判所で公平に裁かれる。どちらにも偏らないよう、半魚裁判長は大忙しである。
今回は仲間を捕られた報復の住居損壊。だが人は魚を捕らねば生きていけない。
「しかもなぁ、こいつは弟の嫁を食っといて、『イワシは飽きたなぁ』なんぞぬかしよったんや!許されへんぞ!食うなら美味しく食わんかい!いわしたるぞガキ!」
「あ、そこなの?」と裁判長は瞼のない目をおっぴろげた。
「……食われるんはもちろんまっぴらやけどな、食うたからには感謝せえよ。感謝して海に返せ!ひねり出せ!こっちにもメシよこせ!」
「……判決、被告人は無罪。いいよね?」
「……はい」
「原告は食べた分だけ、彼らにお返しすること。これにて閉廷!」
半魚裁判長は次なる裁判の資料をめくる。
「『このタコやろう』に対する名誉毀損……被害タコ本人が出廷予定、か。やれやれ」
終
イワシの口が悪いですね。どうしても「いわしたるぞ」を使いたかったばかりに……
田原にかさまの毎週ショートショート【人魚裁判所】に参加させて頂きました。
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