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転進濮陽_C-3 Prologue:軽ノリ呂布軍生き残りTRPG

濮陽へ転進。


>呂布Node

上将たちは陣幕で移動についての最後の打ち合わせを続けているようだ。慌ただしく野営撤去に動く兵士と、監督に声を張る部将たち。その間をあちらの営、こちらの営と、進捗を把握するための小者たちが巡っていた。
出立の時刻が近い。

「曹性さん、歩兵も大丈夫そうですか?」
自分の営はもう騎馬をまとめ終わったらしい。続いて撤収が終わりそうな歩兵営に、若い騎兵——張遼が徒歩で近づいてきた。

「荷駄がだいぶ減った。まぁあと半刻もいらん」
俺の言葉に、張遼はほっとしたように目を細めた。
「道々は必ず視界に騎兵を入れておくようにしてください。視界に入っている位置なら10呼吸もあれば必ず突破してみせます」
「そりゃたのもしい。あちこちに武装豪族がうろうろしてやがる。遭遇戦だと、どうしても歩兵から削れるからな…」
「後詰には成廉と自分が交代で入るのでよろしくお願いします」

軍靴や馬蹄の跡が錯綜する、黄河南岸の細かな砂地。
話が終わった後も張遼はすぐに自営に戻る様子もなく、その場で所在無げに、朝日に乾いた砂を靴先で削っていた。

向こうは中軍、こっちは新参の歩兵部将。席次も兵科も全く違う。年齢も近いっていうのに、まさかの"さん"付けで来たか。俺とは顔見知り程度でしかないだろうに。
この若い騎兵は今、誰とでもいいから何か話したい気分なんだろう。

「改めて見渡してみると大軍勢だな」
どうとでもとれるような言葉を続けてみた。

兵だけが集まるもんだから、そりゃあ荷駄も少なく見える。だが、人数が急激に膨れ上がった軍は連携がうまくいかず、どうにも居心地が悪かった。

「荷駄や輜重も動く長距離の日に、晴れて良かった。……湿った砂地に馬が脚をやらなくて済む。あ。雁門にはこんな厄介な砂地は少ないんですよ」
「そうなんだ。俺は河内のあたりだ。まあここいらはこんなもん——」

言いかけて、言葉が止まる。
(……いや。違う)
黄河がこれだけ近いのに、吸い込む息はからりと乾いて心地よい。この時期の中原で、この日差しは嫌な感じだ。


——降らなさすぎる。



>陳宮Node

そのほど近く、陳宮が布陣していた丘でも、営の撤収作業が進んでいた。
その帷幄の奥——。

「軍は引き続き私が自分で率いる。部将も十分だ。濮陽までは呂布たちと並走するので、いまなら兵を割ける」
軍略武官らしく前線指揮用の札甲で身を固めた陳宮が、簡易的な地図を見せながら、二人の腹心——許汜と王楷にこれからの展開を示していた。

「情報が足りない。許汜は護衛隊とともに南進し、一時的に張邈に接続。ことに張超がどこまで踏ん張っているのかを探ってくれ」
「王楷は供回りだけを連れ、論客として直接呂布の指揮に入るんだ。話は呂布につけてある。
……あのばかどもは輜重が薄い。道々、できるだけ吸収もさせろ」

自分の采配に、二人の間に緊張が走ったのが目に見えて分かった。だが異はないはず。それが最善手だからだ。
ゆっくり一呼吸分の沈黙ののち、まず頷いたのは許汜だった。
「任せろ。だが途上の土着豪族の様子も見るとなると日はかかる。復帰は直接濮陽になるぞ」
「わかった。しっかり内部から観察してくるよ」
続いて王楷も応じ、外交官二人はそれぞれの任務へと引き払っていった。

二人が去ったあと、陳宮は地図を物入れ袋にねじ込みながらもう一度自分自身を確認する。

今から向かう濮陽は、自分が生まれ育った故郷、東郡の郡治。曹操幕下に入る前から、その土地も人もよく知っている。

これ以上ない。呂布軍も居れば倉亭津の渡河戦とはわけが違う。
圧倒的な土地勘と地の利。そこに呂布の武が加わる。強大な一振りの剣だ。

その利点に比べれば、濮陽を戦場にすることにも、いざとなれば焼き払うことにも躊躇はない。

兗州は完全にデフォルトした。
当初の計画そのものは完遂している。——成功だ。
成功だが……曹操の兗州帰還は許している。

いまや兗州全土に、武装した小集団が満ち満ちてうようよ蠢いていた。熱にあぶられた泥のあぶくのように、湧いては消えることを繰り返すそれは、もはや自分が何者なのかも見失っているかのようだ。
触覚を抜かれた虫のように、右往左往と、誰からの制御も把握も受けずに動くその無秩序な戦争の気配が、熱い澱のように州を覆いつくしていた。
ふん。まるで肥溜めだな。

「……許汜、王楷、注意して行け」

ふいに自分の口を衝いた言葉をその場に置き去りにするように、天幕から一歩外に足を踏み出す。
途端、白い日差しに目を焼かれて立ち止まった。
もう夏が近い。
近いとはいえ……。


それにしても、暑い。




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