【短編 童話】第九章『聖夜の道しるべ』| 落ちこぼれ魔女ターナ
聖夜の恋人たち
魔女ターナとシエラの二人は
機械竜のストレス発散のあと、
彼と別れてマーケットに残った。
Xmasシーズンを愉しむ為に。
小雪がチラチラと舞う時間。
クリストキントの人形にご挨拶。
グリューワインで乾杯、
レープクーヘンやアーモンド菓子、
マジョラム香るソーセージを頬張り
もうお腹はいっぱいで身体も温まる。
屋台の棚に並ぶ黒いプラム人形、
ループレヒトを象った木工細工。
ガス灯と篝火の明かりが辺りを照らし
威勢のよい客引きの掛け声は騒々しく、
あちらこちらに響きわたる。
そうして二人は思い思いの賑やかな
マーケットでのひとときを過ごした。
「ン・ドゥール辺境伯のお城には
行かないの?」
シエラがさり気なく尋ねたが
首を傾げてターナが答える。
「うーん、うん。
特に約束してないよ?」
あゝ、とうなだれるシエラ。
「ケンはどうしたの?」
「ケン!? なぜ?」
ややあきれ顔のシエラ。
「……もったいない」
(そうだね。
この娘、これだから……)
頭を抱えるシエラは
ケンに同情せずにいられない。
(こういうときには占いしかない!)
やおら、懐から三枚のタロットを取り出す。
そのなかから一枚のカードを引く。
突然のことでターナが目を見張る。
「……むむ」
シエラが引き当てたのは、
「『The Lovers』!?」
まさかのカードに慌てるシエラ。
ターナにその動揺は伝わらなかった。
一通りマーケットを練り歩き、
中心地からの外れまで辿り着く。
ここから先の道は二手に分かれ、
真っ直ぐ行くと住宅街へと帰り
坂道の上に向かうと教会に着く。
ターナはてっきり教会に行くと思い
坂を上がろうとすると、
シエラは住宅街へと向かった。
「教会は?」
「私は異教徒だからネ」
と、ヒラヒラと手を振って
シエラはターナにサヨナラした。
振り向かないシエラにひと言、
「シエラ、良いXmasを。
メリー・クリスマス!」
ターナが彼女の背中に声をかけた。
ターナはシエラと別れたあと、
黙々と坂道を駆け上がり教会に辿り着く。
その門の前で待ち受けていたのは、
「ロボ」
白い息を吐いて
銀狼が座り込んでいた。
そこへ。
「ターナ……?」
ツリーの陰から顔を出したのは
「ケン!」
顔を綻ばせて喜ぶターナ。

「どうしたの?
アンヌおばさんとクララはどうしたの?」
ダッフルコートの肩に積もる
雪を振り払いケンは答えた。
「七面鳥を焼いてたらさ、
母とロボに急かされてさ。
あとは妹と選手交代」
鼻の頭を紅くして、
上気した頬を掻きながら微笑むケン。
ターナに言い訳せずにいられなかった。
ゴォォォ――ン。
教会の鐘が鳴る。
ターナがケンの腕にしがみつき
引っ張って行く。
「行きましょっ!」
急いで門をくぐるターナとケン。
二人を見送った銀狼は
くるりと向きを変えて帰路に着く。
教会の奥から聖歌の響きが
聖夜の街にさざめいた。
今は雪は止んでいた。
<#6 The Lovers>
つづく
Sunday 7pm Choir - Ave Maria(Franz Schubert)
次回 第十章
おかしなジンジャーブレッドマン
