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タクシー運転手が事故を起こしたらどうなる?|クビになるのは、実はまれです【Her Shift】

赤信号で止まっていた前の車に、コツンと車体が近づいた。ぶつかってはいない。でも、心臓がドクドクいっている。ハンドルを握る手が、少し汗ばんでいる。

運転を仕事にするかどうかを考えるとき、多くの方の頭をよぎるのが「もし事故を起こしてしまったら」という不安だと思います。会社をクビになるのではないか。お金を全部自分で払わされるのではないか。免許を取り上げられて、仕事そのものを失うのではないか。考え出すと、きりがありません。

この記事では、実際に事故が起きたとき、何がどこまで起こるのかを、順番に確かめていきます。結論から言うと、不安に思っているほど重い結果になることは、実は多くありません。


壁①:そもそも、どこまでが「大きな事故」になるのか

まず知っておきたいのは、事故が起きたからといって、すべてが会社の大問題になるわけではないということです。

軽い接触や、けがのない物損事故であれば、警察への届け出と保険での対応で収まることがほとんどです。国土交通省が定める自動車事故報告規則では、運輸支局への報告が必要になる事故の基準が細かく決まっていて、たとえば24時間以内の速報が求められるのは、死者が2人以上、または重傷者が5人以上出た場合や、飲酒運転がからんだ場合など、かなり限定されたケースです(※1)。

つまり、ヒヤリとする出来事のすべてが、国にまで報告される「重大事故」になるわけではないということです。ここで安心はできても、では実際に事故が起きたら、どんな順番で何が起こるのでしょうか。

壁②:すぐにまた運転できるのか

意外と知られていないのが、事故のあと、すぐにハンドルを握れるとは限らないという点です。

死亡事故や重傷事故を起こした場合(その前の1年間に事故がなかった人)、または軽傷事故を繰り返した場合(その前の3年間に事故があった人)は、次に乗務する前に「特定診断」という制度を受ける必要があります(※2)。国の関連機関である自動車事故対策機構(ナスバ)のカウンセラーが、事故に至った状況を聞き取り、再発を防ぐための助言をしてくれる仕組みで、時間はおよそ2時間、手数料は9,300円です(※2)。

罰というより、もう一度落ち着いて運転と向き合うための時間、というのが実際の位置づけに近いと思います。とはいえ、その間は仕事を離れることになるので、正直、収入への影響がまったくないとは言えません。ここで気になるのが、お金の話です。

壁③:お金の負担は、自分持ちになるのか

事故を起こすと、修理費や治療費を自分の給料から払うことになるのではないか、という不安を持つ方も多いと思います。

まず、すべての自動車には「自賠責保険」という保険への加入が法律で義務づけられています。これは被害者のけがや死亡に対する補償で、死亡は3,000万円、後遺障害は等級に応じて75万円から最大4,000万円、けがは120万円が上限です(※3)。ただし、自賠責保険は人身損害だけが対象で、車や物への損害は補償されません(※3)。

そこで多くの会社は、対人・対物とも上限のない任意保険にあわせて加入しています。会社によって加入内容には差がありますが、事故の相手への賠償は基本的に会社の保険でまかなわれる、というのが一般的な形です。運転手個人がその都度、全額を請求されるようなことは、通常は想定されていません。

ちなみに、事故のたびに給料そのものが大きく減らされるわけでもありません。タクシー運転者の年収は全国平均でおよそ450万8千円、働き盛りの40代ではおよそ499万円から521万円、東京ではおよそ570万円というデータがあります(※4)。歩合の割合が高い会社では乗務を休んだ分だけ収入が変わりやすいのは事実ですが、事故そのものを理由に基本給を減らす、という仕組みが一般的にあるわけではありません。

お金の不安が少しやわらいだところで、次に気になるのは、会社との関係ではないでしょうか。

壁④:会社をクビになるのか

正直にお答えします。よほど重大な事故や、飲酒運転のような法令違反がない限り、一度の事故だけで解雇されることは、実はまれです。

日本の労働契約法では、解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になる」と定められています(※5)。不注意による事故は、誰にでも起こりうることです。それだけを理由に簡単に人を辞めさせられる、という仕組みには、そもそもなっていません。

もちろん、始末書の提出や研修の受け直しなど、会社としての注意や指導はあります。繰り返し事故を起こしたり、重大な法令違反がからんだりした場合は、より重い処分につながることもあります。「絶対にクビにならない」とまでは言えませんが、「事故を起こしたら即クビ」という認識は、実際とはかなり違います。

会社との関係が見えたところで、最後にもうひとつ、自分自身の運転免許がどうなるのかを見ておきます。

壁⑤:運転免許はどうなるのか

これは会社の判断とは別に、公安委員会が決める話です。

人身事故を起こすと、基礎点数に加えて、事故の結果に応じた点数が加算されます。前歴がない場合の目安は、軽傷事故(30日以上3か月未満のけが)でおよそ6から9点、重傷事故(3か月以上、または後遺障害)でおよそ9から13点、死亡事故でおよそ13から20点です(※6)。そして、免許停止になるのはおよそ6点から、免許取消になるのはおよそ15点からとされています(※6)。

物損事故だけであれば、原則としてこの点数はつきません。人身事故であっても、軽いけがであれば、免許が止まるほどの点数には届かないことも多いということです。ここでも、「事故=即免許取消」ではないことがわかります。

正直に:大変な面もあります

ここまで「思っているより重くない」という話を中心にしてきましたが、大変な面がないわけではありません。

事故で自分がけがをした場合、仕事中や通勤中であれば労災保険の対象になり、治療費の全額給付や、休業4日目からの休業給付(給付基礎日額のおよそ60%、特別支給金とあわせて実質80%程度)を受けられます(※7)。ただ、収入が完全に元どおりになるわけではありませんし、事故そのものの精神的な負担は、制度では埋めきれない部分です。繰り返し事故を起こせば、免許や会社での立場が厳しくなっていくのも事実です。安全運転を心がけることの大切さは、どれだけ制度が整っていても変わりません。

まとめ:選択肢と判断材料として

事故を起こしたら、報告の基準に該当しない限り大ごとにはなりにくいこと。特定診断という仕組みで、また落ち着いて運転に戻れること。お金の負担は基本的に会社の保険でまかなわれ、年収そのものが事故のたびに崩れるわけではないこと。解雇は簡単にはできない仕組みになっていること。免許への影響も、事故の重さによって段階があること。

一つひとつ見ていくと、「事故を起こしたら、すべてが終わる」というイメージとは、だいぶ違う実際の姿が見えてきます。もちろん、事故を起こさないに越したことはありませんし、繰り返せば重い結果につながることも事実です。それでも、漠然とした不安だけで一歩を踏み出せずにいるとしたら、実際の仕組みを知ることが、判断材料の一つになるはずです。

運転そのものへの不安も含めて、向き不向きをチェックする形でお話ししています。
この記事は、女性のためのドライバー転職サービス「Her Shift(ハーシフト)」(運営:株式会社Unitas)がお届けしました。

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この記事について 株式会社Unitas(Her Shift運営)。子育てと仕事を両立しながら働く社員が多くいる会社です。「働き続けられるかな?」を考えるときに何がわかっていると安心か、同じ目線で考えながら、会社にじかに聞いた情報をもとにお届けしています。 記載のデータは執筆時点の公開情報に基づきます(各記事内に出典を明記)。

※1 国土交通省「自動車事故報告規則」(最終改正:令和2年3月31日国土交通省令第20号)第2条・第4条。死者または重傷者が発生した事故等は運輸支局への報告義務があり、死者2人以上・重傷者5人以上・飲酒運転をともなう事故等は24時間以内の速報義務がある。https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/content/000268272.pdf ※2 独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)「特定診断I」。死亡・重傷事故を起こし、かつ事故前1年間に事故がない者、または軽傷事故を起こし、かつ事故前3年間に事故がある者が対象。再度乗務する前に受診。所要時間およそ2時間、手数料9,300円。https://www.nasva.go.jp/fusegu/tokutei1.html ※3 国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」。自賠責保険(自動車損害賠償保障法にもとづき全車両に加入義務)の支払限度額は、死亡3,000万円、後遺障害(常時介護)4,000万円・(随時介護)3,000万円・(その他等級)75万円〜3,000万円、傷害120万円。対物損害は対象外。https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/about/payment/index.html ※4 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年賃金構造基本統計調査によるタクシー運転者の現況」(2026年5月公表)。全国平均の年間推計額450万8,200円(前年比8.7%増)、40〜44歳498万5,500円、45〜49歳521万3,100円、東京都570万3,500円。https://taxi-japan.or.jp/zius/wp-content/uploads/2026/05/令和7年度賃金構造基本統計調査.pdf ※5 労働契約法第16条(解雇)。厚生労働省資料「法第16条において、権利濫用に該当する解雇」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/11_0003.pdf ※6 交通違反の点数制度(道路交通法にもとづき警察庁が定める全国共通の基準)。神奈川県警察「点数制度による運転免許の取消し・停止」に掲載の情報をもとに作成。人身事故の付加点数は死亡事故13〜20点、重傷事故(3か月以上または後遺障害)9〜13点、軽傷事故(30日以上3か月未満)6〜9点。前歴がない場合、6点以上で免許停止(30〜180日)、一般違反行為で15点以上の場合は免許取消(欠格期間1〜5年)。https://www.police.pref.kanagawa.jp/tetsuzuki/menkyo/mes83040.html ※7 労災保険(業務災害・通勤災害)の給付。療養給付は必要な療養費の全額、休業給付は休業4日目から給付基礎日額のおよそ60%(特別支給金20%とあわせ実質80%相当)。宮崎労働局(厚生労働省)「労災保険給付の種類と内容」(掲載情報は令和3年4月1日時点)。https://jsite.mhlw.go.jp/miyazaki-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/rousai_in/rousai_02.html

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