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【SB:第2部】ワイルド・ブラッド:インタールード③ どきどきビデオ鑑賞会

▼前回▼


「いらっしゃいませ〜」
 男性定員の接客ヴォイス。
 美少女と、かわいい系の男子が、狭い入口から、店内に入ってくる。
 レンタルビデオ屋『WING』。
 双葉行きつけの店だった。
 なぜ、双葉の姿かというと、いつも学校帰りに直にこの店来ているから。
「へぇ〜。こんなとこ、はじめて来た、あれ、なんだろ、この、のれん」
「バカ! そっちは……」
 肌色とピンクのコーナーだった。
 牙は回れ右した。
「は、ははは……」
「またおまえは、そういうアレを……」
 ところ狭しと並ぶ棚。
 <若木>の夢が、いっぱい詰まってる、棚。
 目をキラキラさせてビデオテープを選ぶ双葉を、牙は赤くなりつつ、盗み見る。
(か、かわいい……)
 いつもの冷血双葉とは、また違った感じにかわいい。
(だ、だめだ、こんなこと考えちゃ……)

「赤羽、決まったよ! 赤羽は何にする?」
 ビデオ抱える双葉。太陽学園の制服がキマってる。白いブラウスに、青いベストとスカートだ。
「い、いや、僕はいいや」
 ちなみに牙は、ワイシャツに、ブルーのスラックス。
 レジカウンターに行くと、あからさまに定員の男性が牙を睨んできた。
「何この中学生? 双葉ちゃんのなに?」
「はは。金さん、ダチでーす!」
「……中学生?? きんさん???」 
 牙が不機嫌になる。目がすげく嫌がっている。
「双葉ちゃん、観たがってた、『ウィニングランデブー』入荷してるよ!」
「ほんと? 嬉しい‼︎」
 今度は頬が、引きつりまくる。
(なんか、ムカつく)
「双葉さん!」
 牙は双葉の手を取った。
「早く、行こう!」

「なんだよ、赤羽、痛てーなぁ」
 双葉が手を解いて、振った。
「そんなにビデオ観たいなら、早く言えよ」
「ち、ちが……」
「?」

 道を歩く2人。
 ボブヘアがよく似合う双葉に、見惚れる。
 薄い茶色の瞳は、クールな一重。
(僕たちって、はたからどう見えるんだろう)

「ただいま〜」
 海山家。
 白い、平均的な広さの、かわいい家だった。庭には自転車が3台、停まっている。
「お母さん、友達つれてきたよ」
「お友達?」
 海山ママが嬉々としてやってくる。
「ま〜ぁ、可愛らしいお嬢さん」
「男です!」
 牙が吠えた。
「お、おとこ?」
「制服、ズボンでしょ、お母さん」
「そ、そんな、こんな日が来るなんて……きょうは、お赤飯ね!」
「お母さん、なに言ってんの?」
 双葉は呆れた。

 とりあえず、階段攻略して、2階に上がる2人。
「こ、これが、双葉さんの部屋?」
 白い壁に映画のでかいポスター。デスクには、最新のパソコン。
 棚には、ビデオやCD、漫画本など。
 気になるベッドは、かわいいピンク色。
「おまえ、何言ってんの」
 双葉は急に制服を脱ぎ出した。
「ぎゃー!!! ふた、若木‼︎」
「なに? ふつう、着替えるだろ、帰宅したら」
「……」 
 牙は、後ろ向いて、手で顔を覆った。

 ホラーだった。
 いきなりホラー映画だった。
「あれ、これ……」
 <世界一の吸血2>だった。
「もう続きが?」
 謎だった。
 双葉は、真剣に画面を観ている。
 半袖に、ショートパンツ。ラフな格好から覗く、白い手足が眩しい。
 思わず、また見惚れる。
 ふと見ると、綺麗な指をした手が、絨毯の上に無造作に置かれている。
(手、繋ぎたいな)
 息を呑んで、手を伸ばしかける。
 それを必死で引っ込める。
(い、いかん! これは、若木。しかも、僕は振られん坊将軍……)
 ため息が出る。
(双葉さん……。いいな、双葉さんに思われる人は)
 一体どんな人?
(いや待て、双葉さんは若木。なら、若木に思われる人??)
 映画に集中しすぎて、こっちにまるで気がつかない双葉。
(あぁ、このまま時間が止まらないかな……)

「お邪魔しました!」
「赤羽、送ってくよ」
「れぇ⁈ 双葉さん、夜道は危ないよ」
「んだと⁈」
 部屋着にジャンバーひっかけて、双葉が追いかけてくる。
「俺は、男!」
「いや、どうも見ても、女の子でしょ。危ないよ」
「なんだと⁈」
 帰り道。辺りの電灯は光ってるけど、やっぱり心配だ。
「も、もういいよ、帰りなよ」
「む〜。俺が弱いみたいに!」
「だってどうみても、女の子じゃないか!」
 牙は、双葉のいる後ろの壁に、両手を勢いよくつけた。
「え……?」
 壁に双葉を閉じ込める。
「無防備すぎ! 人の気も知らないで!」
「え、あの。赤羽?」

 その時だった。

「わ〜〜ん!」
 足元で、変な声がした。
 犬だった。
 とても、かわいい、ちわわ。
「か、かわい……飼い主さんはどこ?」
 牙が呟く間もなく、
「うわぁぁぁぁ!!!」
 双葉が勢いよく、抱きついてきた。
(え……)
「い。犬、犬犬犬⁉︎」
「だ、大丈夫、こんなかわいいワンちゃんは、噛みつかないよ」
「で、でも……」
 双葉の柑橘類の香りがする。
 牙は息を呑む。
 女の子らしい柔らかい体が、自分に急接近している。
 さらさらの、色素の薄い髪に手が届きそう。
 もうなんつか、心臓が破裂しそうだ。
(やばい、なんか、しあわせ……)

「やっっぱり、だめぇぇぇ!!!」

 気づくと、双葉は若木にチェンジしていた。
「え、泣いたの?」
「うるせぇ!」
 若木のパンチが、牙の顔面に決まった。
「さっきから、バカにしやがって!」 
 若木が踵を返す。肩を怒らせて歩いていく。
「ま、待って……あれ? なんか、変だな……」
 牙がおでこを押さえて、俯く。
 顔を上げた瞬間、その瞳が、赤黒く光った。


▼次回▼


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