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日本一のサウナに学ぶ「自分の居場所」のつくり方― 水戸「ゆるうむ」で感じた福祉建築へのヒント ―

茨城県水戸市に行くと話したとき、
キツキテラスや府内のおうどんのデザイナー・長内研二さんからこう言われた。

「水戸なら『SPA&ごはん ゆるうむ』がいいですよ。間違いないです。」

長内さんは、いわば“サウナの師匠”。
その人が言うなら間違いないだろうと、迷わず足を運んだ。

「SPA&ごはん ゆるうむ」という場所

2024年、水戸市にオープンした温浴施設。
日本最大級のタワーサウナを中心に、複数のサウナやお風呂が楽しめる。

ボタニカルをコンセプトにした空間は、
単なる設備の集合ではなく、

「人がどう過ごすと心地よいか」まで設計されている場所だった。

外見は普通のスーパー銭湯


ここは「自分の居場所を探せる施設」

実際に訪れてまず感じたのは、

ここは、他人の目線や人との距離感を自分で調整しながら、
自分に合った“ちょうどいい居場所”を見つけられる空間だということ。

誰かに合わせる必要がない。
何をしてもいいし、何もしなくてもいい。

それぞれが、それぞれの過ごし方や過ごす場所を自由に選べる。

タワーサウナに込められた“願いの回収”

まるで映画館のようなしつらえのタワーサウナで感じたのは、
「今までできなかったことを、ちゃんと叶えてくれている」という設計だった。

サウナ室で、堂々と寝そべる。
本当はやってみたい。でも、どこか遠慮してしまう。

「迷惑かな」
「怒られるかな」

そんな空気を読んで、結局できなかった。

そんな小さな“やりたかったこと”や、
できなかったときのちょっとした寂しさ。

ゆるうむのタワーサウナは、
それをひとつひとつ丁寧に拾い上げて、
「ここではやっていいよ」と許容してくれる。

だからこれは、ただの大型サウナではない。

過去に感じた遠慮や我慢ごとまで、肯定してくれる空間だった。

「座れない悲しさ」をなくす設計

さらに驚いたのは、ととのいに関するキャパシティの設計。

サウナ後、整い椅子に座れない。
あの瞬間の“絶望”は、サウナ好きなら誰もが知っている。

しかしここでは、
利用者数に対して十分な数の椅子が用意されている。

つまり、

「サウナに入ったあとに、気持ちよくととのえない」という
体験の“詰まり”が起きないように設計されている。

これによって体験の満足度は大きく変わる。

これは、

「サウナにおける不満が生まれるポイントを事前に特定し、潰している設計」だと感じた。

環境そのものが「ととのい」をつくる

外気浴スペースでは、小さなプールに水が力強く吹き出し、
水の音がととのい空間に響く。

まるで滝のそばにいるような感覚。
音、空気、湿度、水しぶき――すべてが心地よい。

つまりここでは、

設備(椅子や風呂)だけでなく、
“空間環境そのもの”が体験をつくっている。

これは一段階上の設計だと感じた。

「巣」を選べる休憩空間

休憩室も印象的だった。

広い空間の中に、さまざまな居場所が用意されている。


  • 畳で静かに休みたい人

  • ハンモックで漫画を読みたい人

  • 小さな穴にこもりたい人

  • ヨギボーに寄りかかり開放的に過ごしたい人

それぞれが、自分に合った「巣」を選べる。

ここには「こう過ごすべき」という正解がない。

つまり、

過ごし方そのものを、利用者側に委ねている設計になっている。

サウナランキング1位は伊達じゃない

サウナランキング1位というのは、やはり伊達じゃない。

実際に体験してみると、
その評価が話題性やデザインだけではなく、
人の行動を細部まで読み込んだ設計の積み重ねであることがよくわかる。

確かにすごい

そしてもうひとつ感じたのは、

この広さは“意図しても簡単には再現できない条件”だということ。

水戸という土地だからこそ実現できた、
贅沢とも言える空間の余白。

都心ではコストや敷地制約によって削られてしまう「空間のゆとり」が、
ここではそのまま体験価値になっている。

広さは、ただの面積ではない。

人が遠慮せずに振る舞える「心理的な余白」を生み出す要素になる。

ゆるうむは、
場所と設計が噛み合うことで成立した、非常に完成度の高い空間だった。

サウナ関係者がたくさん来てる

福祉建築へのヒント

この体験を通して、強く思った。

「自分の巣や隠れ家を選べる設計」は、福祉にも必要だ。

これまでの障害者入所施設は、


  • 一律の空間

  • 同じ過ごし方

  • 同じリズム

になりがちだった。

でも本来、人はもっとバラバラでいい。


  • 一人でいたい人

  • にぎやかが好きな人

  • 音が苦手な人

だからこそ、

「いる場所や、することを自分で選べること」そのものが支援になる。

結び

「整う」とは、
単に身体がリラックスすることではなく、

ありたい自分の姿や、心地よいと感じる状態を、
誰にも遠慮せず、そのまま肯定できることなのかもしれない。

そしてそのためには、


  • 自分に合った場所を自由に選べること

  • 誰にも邪魔されない時間があること

  • やりたいことが、そのままやれる体験があること

が必要になる。

ゆるうむは、
その“当たり前だけど難しいこと”を実現していた。

福祉の現場にも、
こうした「選べる暮らし」を広げていきたい。


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釘宮謙悟 「やさしさは、社会を面白くする。」そんな実践を発信していきたいと思っています。いただいた応援は、取材や書籍購入など次の発信のために活用させていただきます。