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訪沼記 Vol.16

弊社には、年に1回、強制的に5連休を取得しなければならない福利厚生がある。

福利厚生。

なんて美しい言葉だろうか。

ただし、現実はそんなに美しくない。

持ちタスクを山ほど抱えている人間にとって、強制5連休とは「休め」という名の業務圧縮イベントである。休暇中に仕事が蒸発してくれるなら喜んで休むが、当然そんな都合のいいことは起きない。仕事は消えない。ただ未来の自分の机に積み上がるだけである。

しかも、この5連休を取らないまま年度を越すと、所属長が人事からどちゃくそ叱られるらしい。

つまりこれは、社員の健康を守る制度であると同時に、所属長を人事から守る制度でもある。人事という組織は、時に休暇を取らせるために人を追い詰める。なかなか哲学的だ。

多くの社員はお盆に合わせて夏休みにする。

しかし私は、お盆期間中の職場に漂う独特の緩い空気がわりと好きなので、カレンダー通りに出勤している。電話は少ない。メールも少ない。人も少ない。横から飛んでくるタスクも少ない。

普段は戦場みたいな職場が、急に高原の避暑地みたいになる。

私はその空気を愛している。

その結果、5連休を取得するタイミングを完全に逃した。

先々の予定も考えると、9月中に取得するしかない。そこにシルバーウィークを組み合わせた結果、私は9月の大半を休暇で過ごすことになった。

仕事は溜まる。
休みは増える。
心は安らがない。

この世はだいたい、何かを得ると何かを失うようにできている。

こうして迎えた、9月の遅い夏休み。

私は初日から始発の新幹線に乗っていた。

いつものように、3列席の窓側を予約する。

私は新幹線では基本的に3列席の窓側を取る。真ん中の席が空席のまま東京まで行ける可能性があり、そうなると2列席よりも空間的に余裕が生まれるからだ。

しかし、この日は出発時点から真ん中の席にご年配の女性が座っていた。

この時点で、3列席窓側のアドバンテージは死んだ。

しかもその方は、ちょくちょくトイレに行く。そのたびに、私の腿に手を置いて立ち上がる。

そこは手すりでも肘置きでもない。

旅の始まりから、知らない人の人生動線に自分の腿が組み込まれている。

幸先が良いとは言い難い。

そんなこんなで向かった東京での目的は、もちろんこれである。

「Aqours スクールアイドル活動展 Dive into Sparkle」。

会場の立地がとにかく良い。

東京駅八重洲口から出て徒歩3分程度。東京建物ピア&カンファレンスというビルでの開催である。

地方民にとって「東京駅から近い」は、それだけで正義である。

これが池袋開催だったら、おそらく「どうせグッズは事後通販あるやろ」と言って行っていなかった。そう思うほど私にとって池袋は魔境だった。


ところが、ビルにはたどり着いたものの、建物内で盛大に迷子になった。

気付けば、養生材が張り巡らされた施工中のエリアに入り込んでいた。

展示会に来たはずなのに、最初に見たのが現場である。

仕事から逃げてきたはずなのに、仕事みたいな景色に出迎えられる。油断するとすぐ現場に戻される。

さすがに平日午前中ということもあり、会場に他のお客さんはほとんどいなかった。

おかげでゆっくり見ることができたし、全キャラのQRも読み込んで、のんびりコンテンツを視聴できた。

これ、開始当初や休日はかなり混んでいたのではないだろうか。

人混みが苦手な地方オタクとしては、平日休暇の恩恵をここでようやく感じることができた。

もちろんVRも体験した。

しかも3回連続。

客よりスタッフさんの方が多い状況で、VR体験は私ひとり。
ここで恥ずかしがって控えめに動くと、逆に恥ずかしい。そう判断し、リアルのライブと同じくらいラブライブレードを振った。

全力である。
なんならコールも入れた。

ブレードを振ると各キャラのアイコンが舞い散るエフェクトが発生するようだ。しかし、振ったからといって確実にエフェクトが発動するわけではないらしい。
2人目の千歌ちゃんの中盤あたりからエフェクトが発動する条件を探り始めた。
こういうところがエンジニアであり元ゲーマーである。

3人分の視聴が終わり、後ろを振り返ると、スタッフさんが2人から4人に増えていた。

いつから見ていたのか。

なぜ増えたのか。

私はいったい何を見せられていたのか。

いや、見せられていたのは向こうである。

調子に乗ってあいにゃおじさんよろしくローアングルからスカートの中を覗き込まなくて本当によかった。人間、最後の理性だけは手放してはいけない。

VRゴーグルを被ると髪型が崩れるから嫌だなぁって思ってたけど、VRゴーグルのユニットを手で持って見るタイプだった。
画面を覗いた瞬間にMeta Quest系だと分かった。
VRゴーグルはケーシングで覆われていたけど、Meta Quest3Sということは分かった。
気持ち悪い人間である。


物販はオーダー用紙に欲しいグッズの数量を記入するとスタッフさんがバックヤードから持ってきてくれるタイプだった。
それを知らずに商品サンプルを眺めてて「在庫全然無いやん」って悲しくなってた。

チラッと見えたバックヤードには段ボールが山のように積まれていたので在庫はわりと豊富なのだろう。
品切れで買えないものもあるだろうと予想していたが、欲しいものはそれなりに買えた。

総計、2万円。

夏休み初日から財布がバグっている。

この展示会にチケット分の価値を見出せるかどうか…
わりと信心を試されるのではないか。
ただ、間違いなく言えるのは、現在進行中のアバター展開が刺さってない人は微妙だと思うし、プレミアムチケットの価格に少し疑問を持つかもしれない。

私はといえば、ステージ衣装をかなり近くから見られるので、一着一着しっかり観察しながらキャストさんの体をイメージした。個人的にはそんな不埒な時間を人の目を気にすることなく堪能できたことに9000円の価値はあったと思う。


展示会の観覧が終わって、ちょうど12時。

直近の新幹線を予約し、帰ることにした。

そう。

沼津にな。

前々から酷い雨になるという予報は把握していた。

前回のように予報に反して晴れることなど期待できないことも分かっていた。

それでも、この展示会は今回の夏休みでなければ来られなかった。そして、東京まで来たからには沼津に行きたい。

雨天で行動範囲は狭まるかもしれない。

それでも、たまにはそういう訪沼があってもいい。

旅とは、予定通りにいかないものを「まあ、そういう日もある」と言い換える営みである。

そして沼津は、その言い換えを受け止めてくれる街だと思っている。

新幹線であんぱんを食べて以降、何も口にしていなかったので、沼津到着早々に「とりう」さんへお邪魔し、いつもの唐揚げ定食のミックスをいただく。

安心安定の、とりうさんの唐揚げである。

本当は沼津餃子を食べたい気持ちもあった。
けれど、雨の中、スーツケースを引っ張りながら北口亭まで歩くのはしんどい。中央亭も時間的に品切れの可能性が高い。

大人になると、食べたいものより「今の体力でたどり着けるもの」が優先される。

お腹がかなり空いていたので、ご飯を大盛りにしてもらった。
すると、普段食べる量の3日分くらいのご飯が盛られてきた。

最近、惜しまれつつ閉店した秋葉原の「あだち」さんを思い出す。

江戸っ子なノリでマシンガントークを繰り広げながら暴力的な量のご飯を供すクセが強すぎるあのお店のスピリットをまさかの沼津で見ることになった。

ただし、美味しいので許される。

本日のお宿は、久しぶりのリバサイさん。

今回は会社の福利厚生の利用先に、たまたまリバサイさんが出てきた。見つけた瞬間に予約した。

福利厚生なので、タダ泊である。

タダ泊。

なんという強い言葉だろう。

このためだけに、人は多少の業務圧縮にも耐えられる気がする。

窓からの眺めは、富士山ビュー。

のはずだった。

当然、富士山はまったく見えない。

わざわざ少し割高な富士山ビューのお部屋を取ったのに、完全に台無しである。もっとも、宿泊費は福利厚生で賄われているので、文句を言う筋合いはない。

いや、でも見たかった。

人間は無料でも贅沢を言う。

幸いにも雨は上がっていて、傘をささなくても歩ける程度の天気には回復していた。

部屋にスーツケースを置き、バッグだけ持って早速外出する。

最初に向かったのは、チャトラコーヒーさん。

本当に、ここのプリンは絶品である。

一緒に注文したホットコーヒーは、今まで口にしたことのないフルーティーな酸味があった。プリンを食べて甘くなった口の中を、すっと引き締めてくれる。

とりうさんの唐揚げ定食で満腹だったはずなのに、プリンは何の抵抗もなく胃に入っていった。

甘いものは別腹。

この理論は、科学的根拠がどうこう以前に、実体験として正しい。

チャトラコーヒーさんを出た後は、いつものお買い物ルートを辿る。

アニメイト、ヌーマーズ、プレショ。

結局、ヌーマーズで舞台Tシャツデザインのキーホルダーを買っただけだった。

ヌーマーズ専売のAqoursちゃんモデルのハンディファンも売っていたが、充電端子がMicroUSBだったので見送った。
なぜType-Cにしなかったのか。
令和である。
令和最新型がMicroUSBはさすがに説得力が無い。
もう我々は、端子の向きで人生の貴重な数秒を奪われたくないのだ。

プレショは、気のせいか、それとも節電なのか、店内がやけに暗く感じた。

平日なのでお客さんもいない。

ただ、それだけではない寂しさのようなものも少しあった。
初めて沼津を訪れてプレショを訪れた時はすごい感動を覚えたものだ。あの頃の感動と思い出が濃いからこそ、現状を見て思うところが少なく無い。

それでも前々回の土曜朝は、行列ができるほど人でごった返していた。あれは普段の土日もそうなのだろうか。それともイベント効果だったのだろうか。

Xで話題になっていた、ぬるいのに値段が900円となかなか強気なレモンスカッシュも買ってみた。

ダイヤさんの缶の下のボタンを押した。

出てきたのは善子ちゃんだった。

なぜだ。

Aqoursにあまり詳しくない人が、パッツン前髪だけを見て「たぶん同じキャラ」と思い込んで配置したのではないか。
これがもしアニメショップの店員だとしたら万死に値する所業である。

北口から南口へ抜けるため、駅構内に入場してお誕生日コーナーを覗く。

梨子ちゃんのお祝いバージョンが完成していた。
沼津到着直後に見た時は、まだ設置作業中だった。つまり、この日からの掲出ということになる。

そういえば、千歌ちゃんの時も掲出初日の訪沼だった。

こういう巡り合わせは少し嬉しい。

念のため、この日のうちに沼津ラクーンの6階へ寄り道し、ブラメロのスタンディを見に行く。

事前情報の通り、ひっそりと飾られていた。
こんなに良いものを、なぜこんな場所に。

反対側には、以前も見た大型パネルがあった。

6階から駅前を見られなくなったという情報もあったが、この日は普通に沼津駅前を見渡すことができた。

この画角でいいから、ライブカメラを設置してほしい。

たぶん私は24時間垂れ流している。

ホテルに戻る途中、キングノーブルさんでAqoursちゃんアイコン刺繍のポロシャツが売っていたことを思い出した。

既製のポロシャツに、店舗で刺繍を入れてくれるとのこと。

20分ほどでできるということで、ご主人さんとお話ししながら待たせていただいた。

終始「Mサイズがいいんじゃない?」と勧められたが、私の場合、ポロシャツはオフ時にコンビニへ行く時などにゆったり着たい。なのでLサイズ希望を貫き通した。

しかし、後で自らのミスに気付く。

再来週も沼津に来る予定がある。

その時にポロシャツを買っていれば、梨子ちゃんとルビィちゃんの御商印を貰えたのだ。

これは完全にやらかした。

判断が早すぎる時、人はだいたい余計な損をする。

とはいえ、もう仕方がない。次に来た時は、上土商店街のどこかでお買い物をして入手しよう。

ポロシャツを受け取り、狩野川に寄り道しながらホテルへ戻る。

雨の影響で、川はいつもより増水していた。水も晴れている時より濁っている。

ホテルに戻り、横になった。
横になった瞬間に意識を失った。
気付いたら19時を回っていた。
唐揚げ定食とプリンのおかげで、まったくお腹が空いていない。

外を眺めると、雨はすっかり止んでいる。
これは自転車を借りて、びゅうおでチルするしかない。

そう思ったのだが、ここで問題が発生した。

リバサイさんの利点は、ホテルのエントランスにレンタル自転車のポートがあることだ。
しかし、この日はすべての自転車がずっと貸出中になっていた。

とりあえずコンビニまで歩いて飲み物を買いに行く。

その間に自転車が戻ってきていればいいなと思ったが、結局この日の夜は1台も返ってこなかった。

駅前か沼グラさんのポートで自転車を借りて、リバサイさんのポートに返却し、1台分の返却枠を埋めてやろうかとすら思った。
そうすると、リバサイに帰ってきたけど自転車を返却することができず、駅前か沼グラさんに返却しに行かざるを得ない人が必ず1名現れる。

発想がだいぶ邪悪である。

そもそも、この日は何かと噛み合っていなかった。

出発時の新幹線の座席問題もそうだが、自宅から駅までの移動から不運らしきものは始まっていた。

車のガソリン残量には余裕を持っていたはずなのに、途中で残量ゲージがガツンと下がり、警告灯が点灯。
駅に到着した時点で、走行可能距離は1km。
いつもの新幹線で帰った場合、駅近くのガソリンスタンドはすべて営業を終えている。
この時点で、私は翌日9時台離沼を余儀なくされた。

さらに天気予報では、東京も沼津も肌寒くなると言っていた。だから長袖の薄手のカットソーにジャケットを羽織って出かけた。
しかし実際は、普通に蒸し暑い。
汗が止まらない。
北国の20℃と、関東・東海の20℃は、もはや別物である。

服は汗で濡れては乾き、雨で濡れては乾きを繰り返した。そのせいで、若干においも気になってくる。

ホテルの空気清浄機の電源を入れたら、ものすごい音を立てて運転を始めた。

よほどだったのかもしれない。

機械は正直である。

そんな中で、レンタル自転車も使えない。

もちろん私自身の準備不足もある。けれど、噛み合わない出来事が妙に重なっている。

21時を回っても自転車が戻ってこないことを確認し、諦めて徒歩で遅い夕食へ出かけた。
お腹が減ってないとはいえ、何かを食べないと体調を崩してしまう。

いつもの大晃ラーメンさんは閉店時間が迫っていたので今回は諦め、比較的遅くまで営業している六文亭さんでチャーシューメンをいただく。

これでいいんだよ、という醤油ラーメンだった。
こってりか普通か聞かれたので、お腹の調子を考えて普通にした。それでも私にとっては、なかなか濃い方だったと思う。

夜の沼津駅Aqoursちゃん。

ライトアップはまだ桜ピンクにはなっていなかった。

ホテルへ帰る途中、いつもの夜景を見る。

御成橋の工事も終わり、美しいライトアップが戻ってきていた。
こういう景色をふらっと見られるのが、リバサイさんに止まる利点の一つだと思う。

久しぶりにリバサイさんの名誉支配人部屋にも立ち寄った。
そこには、初めて見るヨハネちゃんのスタンディがあった。

日付は今年の7月13日。
善子ちゃん生誕祭用の新しいスタンディかもしれない。

善子ちゃんのスタンディは、必ず裏を見なければならない掟がある。、

期待を裏切らないところは、さすきゃんである。
数々の女たちと婚姻を交わしてきただけのことはある。


食事を終えて、ようやくお風呂に入れる。
リバサイさんのお部屋のユニットバスは、湯船が広い。
フロントで無料配布されている入浴剤を入れて、ゆっくり入浴した。

お風呂から上がり、就寝の身支度を整えた後、この日の購入品を整理する。

とはいえ、ほとんどが展示会で買ったグッズである。

JR東海の推し旅キーホルダーは善子ちゃんだった。
どうやら今回の訪沼は、善子に愛されているらしい。
この版権絵の善子は、腰のラインがとても良い。後ろからその腰骨をガッツリ掴んで戸惑わせてみたい。

なお、このキーホルダーのシリーズのダイヤさんは、先日ルビィちゃんとの交換を希望している方がいたので、DMで連絡を取り、手持ちのルビィちゃんと交換していただいた。すでに入手済みである。

雨霧に霞む沼津市内。
こういう夜景を見られるのも、リバサイさんの最上階に宿泊する特権だと思う。

それでは、おやすみ沼津。

おはよう、沼津。

予報通りの雨降りである。

とはいえ、今回は内浦に行くわけでもない。そこまで致命的ではない。

香貫山の展望台が隠れるほど雲が低い。
計画の通りなら10月末に予定している訪沼で登る予定の山。
それがおそらくは今年最後の訪沼になると思う。
新しい思い出ができると思うと今から楽しみだ。

この日は朝食を食べ、荷物をパッキングしたらすぐにチェックアウトしなくてはいけないタイトなスケジュール。
そう思って朝食バイキング会場へ向かったところ、満席で30分ほど待つことになった。

時間がなかったため、朝食は断念。

朝食代が無駄になってしまった。

ただ、そもそも宿泊費が福利厚生でタダなので、これくらいはヨシとする。

というより、前日の暴飲暴食で胃がしばき倒されており、まだ全然回復できていない。

ホテルをチェックアウトし、狩野川方面を遠回りして駅へ向かう。

雨は、傘をさすかどうか迷うくらいの小雨だった。

今回の訪沼は雨に泣かされた。

ただ、捉え方によっては、今回は東京でのAqoursちゃん展示会ついでの訪沼とも解釈できる。

それなら、「せっかく来たのに」と残念がるのではなく、「こんな日もあるよね」と納得させることができる。

それに、再来週にはまた沼津に来ることができる。

次は出張の用件後にはなるが、予定では15時頃に東京を出て、16時頃に沼津着。

今回楽しめなかった沼津での夕食や、びゅうおでのチルタイムを楽しむ余裕は十分にある。

そんなわけで、今回は少しだけのお別れである。

2週間後なんてすぐよ。

また来るよ、沼津。

次はどうにか晴れてほしい。


After NUMAZU

今回は、とことんあいきゃん、つまり善子ちゃんに愛されているらしい。
秋葉原に到着すると、大きな広告が目に入った。

こんなに大きな広告を、秋葉原のオタクカルチャーの爆心地みたいな場所に打てるなんて、出世したね、あいきゃん。
さすが数々の女たちと婚姻関係を結んできた女だけのことはある。

今回、秋葉原ではいくつか用事があった。
そのひとつが、ゲーマーズオリジナルのオタ活用ミニショルダーバッグを買うこと。

最近、これくらいのサイズのショルダーバッグを探していたのだけど、なかなかドンピシャなものが見つからなかった。

そんな時、ヌーマーズを眺めていて、このバッグを見つけた。

別に缶バッジを並べて痛バッグにするつもりはない。けれど、大きさや収納力には特に問題がなく、作りも金額相当。もっと探せば良いものが見つかるかもしれないが、ひとまずこれでやり過ごそうと思った。

残念ながらヌーマーズは在庫を切らしているようだったので、秋葉原の本店で買うことにした。

これが大失敗だった。

会計の長蛇の列が、店の入口まで伸びていた。

しかも人口密度が高いせいか、とにかく暑い。

30分ほど並んで、ようやく会計。

レジで商品を渡すと、店員さんに「少々お待ちください」と言われ、バックヤードから包装のきれいなバッグを持ってきてくれた。
もしかして、ヌーマーズでも店員さんに伝えたら、バックヤードから出してもらえるシステムだったのだろうか。

もしそうなら、私はまたひとつ余計な遠回りをしたことになる。

人生、知らないだけで回避できた不幸が多すぎる。

会計待ちの間、列に並ぶ人たちや他のお客さんを何となく眺めていた。
このご時世でも、紙媒体の本を買う人が結構多いことに少し驚いた。

私はもう数年前から、完全に電子書籍に移行している。

発売日にすぐ読めるし、たくさんの本をiPadの中に入れて持ち運べる。

物理本の「本を読んでいる」という感覚も悪くないことは理解している。けれど、その感覚についても、私は電子書籍から得ることに成功している。

それにしても、なぜ一部の物理本派は電子書籍派に対して攻撃的になるのだろう。

こちらは別に、物理本を否定するつもりはない。

本くらい好きな形で読ませてほしい。

紙だろうが電子だろうが、読まない人間よりは読んでいる人間の方がまだマシである。

どうにか灼熱のゲーマーズから脱出し、次に向かったのはラジデパのシゲゾーンさん。

HDMI接続を無線化するツールが欲しかった。
仕事で使うものだから会社のお金で買ってもいいのだが、会社の諸々の機器に対応しなかった場合のことを考えると少し怖い。

なので、まずはプライベートで購入して試し、もし使えるならレシートを会社に出して精算してもらうことにした。

しかし、自腹で試すには5,900円は少し悩む。

HDMI無線化ツールとしては安い部類なのだろうけれど、悩んだ結果、今回は見送り。

次の上京時に再検討することにした。

次に向かったのは、いつもの旧キャプさん。

秋葉原には、ジャンク品のノートPCを販売する店がたくさんある。その中でも旧キャプさんは、外観、パフォーマンスともに質の高いジャンクPCを手頃な価格で販売することに定評がある。

固定店舗を持たないことや、おそらくリースアップ品を安く調達できる流通経路を持っていることが、あの価格につながっているのだろう。

以前は天気が悪いとお休みになっていたが、店舗らしき場所が室内になってからは、雨の日でも営業してくれる。これはありがたい。

しかしこの日は、店内が人で溢れかえっていた。

さらに、事前に紹介されていた商品の中に欲しいものがなかったので、今回は諦めることにした。

旧キャプさんから数十メートル離れた、ジャンクコンフルさんへ向かう。

ここでは、しっかり検査したうえでフォーマットされたHDDが、500円という信じられない価格で販売されている。

最近、自宅のNASのHDDの読み込みが遅い。

生産年が2013年頃なので、仕方ないといえば仕方ない。むしろここまでよく生きた。家電ならそろそろ人格が宿ってもおかしくない年数である。

箱の中にある数十台のHDDから、比較的新しいものを探す。

2022年製という、なかなか良さそうな個体を見つけたので、とりあえず横に置いておいた。

すると、別のお客さんに横取りされてしまった。

油断した。

秋葉原のジャンク売り場において、「横に置く」は確保ではない。

手に持つ。
抱える。
離さない。

これが基本だったのだ。

ここは法治国家ではあるが、ジャンク箱の前では自然界に近いルールが適用される。

散々探した結果、2021年製と2019年製の2台を購入した。

それぞれ500GBで、合計1,000円。

SSDほどではないにせよ、RAID次第ではそこそこの高速化が期待できる。

この日の秋葉原は、時折小雨が落ちる微妙な天気だった。

そのせいか、外の人混みはそこまででもないのに、店の中はどこも混んでいた。

ラジデパの店内があんなに混雑しているのは、初めて見たかもしれない。

今回の旅は、東京でも沼津でも、天気に振り回された感が強かった。

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