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「任せる勇気」 マネジャーへのエンパワーメント #132

人は一人で達成できる目的には限界があります。
だからこそ、人は目的を共有できる仲間と組織をつくります。

しかし、同じ目的を持っていたとしても、個々の能力や経験はさまざまです。
その違いを活かしながら、組織として成果を生み出していく。
そのための仕組みがマネジメントです。

■ 組織はピラミッドの形をしている

多くの企業は、ヒエラルキー、いわゆるピラミッド型の組織を採用しています。
具体的には、トップである社長から部長、課長、スタッフというように職務別にピラミッド型の階層構造になっている組織形態のことです。

本来この形は、役割と責任を明確にするための合理的な仕組みです。
しかし現実には、この組織構造と実態が一致していないケースが少なくありません。

■ 任せられないマネジメントと丸投げ

よく見られるのが「任せられない」ケースです。

本来スタッフが担うべき業務を課長が抱え込んでしまう。
あるいは任せているつもりでも、細部にまで指示を出してしまうマイクロマネジメントです。

この状態では、スタッフは経験の機会を得られず、自立することができません。
一方で課長は業務過多となり、本来行うべきマネジメントが疎かになってしまいます。

逆に、丸投げも問題です。

仕事を任せること自体は問題ありません。しかし、本来マネジャーが担うべき責任まで部下に任せてしまえば、それはマネジメントではなく責任放棄です。

任せないことも問題。しかし、任せ方を誤ることもまた問題です。

マネジメントとは「任せるか任せないか」ではなくどう任せるかなのだと思います。

■ マネジメントに必要な視点・視野・視座

組織の役割によって、求められる視点・視野・視座は変わります。

担当者は、担当業務を深く掘り下げる虫の眼(ミクロの視点)

マネジャーは、組織全体を俯瞰する鳥の眼(マクロの視点)

さらに経営層には環境や時代の変化を読む魚の眼(時間軸の視点)が必要になります。

つまり、役割が上がるほど、見るべき視点は増えていきます。

担当者は虫の眼。
マネジャーは虫の眼と鳥の眼。
経営者は虫の眼・鳥の眼・魚の眼。
更には、立場によって持ち得た責任と権限が違う以上、見える景色(視座)が違うとも言えます。

この視点、視野、視座の違いを理解していないと、組織はうまく機能しません。

■ エンパワーメントという考え方

そこで重要になるのが、エンパワーメントです。
エンパワーメント(権限委譲)とは個人やチームに権限を与え、主体性と成長を促すマネジメント手法です。
本来の職務範囲を少し超えて仕事を任せることで、組織や個人が持つ潜在能力を引き出します。

例えば、状況に応じて上司が持つマネジメント権限の一部を部下に委譲する。
 
その結果
・裁量権が広がる
・意思決定の幅が広がる
・仕事の進め方の自由度が高まる
といった変化が生まれます。

もちろん、権限を委譲したからといって責任がなくなるわけではありません。
最終的な責任は権限を委譲した上司にあることには変わりません。

エンパワーメントは、適切に機能すれば、主体性、自律性、潜在的なマネジメント能力を引き出すことができます。
結果として組織の成果も高まります。

さらに重要なのは、人材育成の側面です。
一時的にでも上位の役割を経験することで、人は自分の視座を引き上げることができます。

■ 私自身の反省

これは私自身の経験です。
現在の事業の引き継ぎを受けた際、この事業は、保守的となり低迷してました。
短期的な立て直しのために、トップダウンによるマイクロマネジメントを徹底しました。
その決断の速さから短期で業績は回復しました。
しかし、それが私の判断を誤らせました。

例えば、毎年、約100人の社員に対して経営理念を直接伝える勉強会を実施してました。
経営トップが自ら語ることに意味がある。そう考えて続けてきた取り組みです。
しかし結果として、経営理念を伝える役割は私だけのものになっていました。
言い換えれば、マネジャーたちが部下に理念を伝える機会を私が奪っていたとも言えます。

現在は、トップダウン経営から現場が自律するボトルアップを高める取り組みをしています。

経営理念勉強会も、私に代わってマネジャーたちにも実施してもらっています。
その結果、理念は「聞くもの」から「自分たちが語るもの」へと変わりつつあります。

これは、経営の当事者意識の継承にもつながっていると感じています。

■ 任せることは簡単ではない

エンパワーメントで最も難しいのはどのタイミングで権限を委譲するかです。

判断を誤れば、丸投げになってしまいます。
また、権限を与えられたことを責任の押し付けと受け取る人もいます。

そのため近年では、エンパワーメントを取り組み易いように、そもそもの組織形態をヒエラルキーからフラットやホラクラシーと呼ばれる新しいものに転換する企業も出て来ています。

エンパワーメントは、一歩間違えれば逆効果になる可能性もあります。だからこそ、精神論ではなく、HRM(人的資源管理)の一環として戦略的に設計されるべきマネジメントだと思います。

任せることは、放置ではありません。
任せることは、信頼です。

そしてその信頼こそが、人を成長させ、組織を強くするのではないでしょうか。

任せる勇気を持つこと。それこそが、マネジメントの本質なのかもしれません。

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