京極派に火をつけた女 ~京極派スペース抄~
「心のままに詞の匂ひゆく」ように歌を詠む――鎌倉・南北朝時代の和歌文脈において異色であったこの歌論を、京極派という和歌グループは選択しました。
そんな京極派について、X(旧Twitter)にて毎週お話しています。
この記事は、そんな京極派スペースの音声を読み物として整えた京極派スペーステキスト版の一部を抜粋したものです。
2026年4月10日放送スペース「散る花を詠んだ京極派和歌」、7月31日テキスト化した「散る花、見えない美しさ」より。
九条左大臣女という女性歌人が京極派のなかでどのように個性的だったか、それが京極派にどんな影響を与えたか、
ということを語った箇所を、今回テキスト版から抜粋しご紹介します。
全文を読みたい方はこちら(テキスト版)
音声で聴きたい方はこちら(ポッドキャスト)
京極派に火をつけた女 ~京極派スペース抄~
もともと彼女は御子左家の為家の孫で、両親が早く死んだとかいろんな事情があって為家に育てられたので、
ものすごくきちんとした正統的な歌も詠めるし、為家の教えがしっかり入っている人なんですよ。
その彼女が、しかし、京極派という「心を正確に表す」という、当時としては特異な歌論を打ち立てたグループに「あら、それはおもしろいわね」と感じるところがあって、加わった。
そこで彼女は心の表現をしようとしたけれども、
為家直伝の古典常識や和歌常識のしっかり入っている彼女にとって、心の自由な表現というのはなかなか難しい。
「心を詠むなんて、どうやったらいいのかな」
ということをいろいろと考えたときに、
彼女にとって、馴染んできた古物語は作り物の物語じゃないんですよね。
それは、彼女にとっての人生そのものみたいなもの。
その、すでに血肉となっている物語を、いまの自分の目の前の自然の様子に再発見する、というやり方で、
「馴染んできた『源氏』や古物語に託して自然を再発見し、詠むという形であれば、和歌の伝統にとらわれず心の自由な表現ができる」
と感じて、その方向で九条左大臣女は歌を詠んだんですね。
それが同時期の京極派の、ああでもない、こうでもないとやっていた中で飛び抜けて良かったんですよ。
他の歌人たちは、そんなことがまだできていなくて、
とっぴなことをしてみたり、ありのままに詠もうとして逆に奇をてらった形になってしまったり、和歌として破綻した方向に行ってしまったりしていた。
そんな中で、九条左大臣女が、「私はこんな風にやってみたよ、どう? 」と示してみせたものが、
「なるほど、そういう方向があるのか」ということで他の前期京極派歌人の刺激やヒントになった。
同時に、九条左大臣女が活躍し始めた2年後ぐらいに、京極派の皆さんにとって大事件である政変も起こったりして、自分の心を真剣に見つめざるを得ないというタイミングも重なります。
そうしたいろんな要素が重なって、京極派はそこから叙景歌という方向で大爆発してゆきます。
その京極派の大爆発に、いち早く先鞭をつけたというか、火をつけたのが、九条左大臣女だったということですね。
「京極派スペース抄」は以上です。ありがとうございました。
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