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「今日いちばんになれる?」と聞かれた朝|🧺日常の余白

末っ子の最近の口ぐせは、いちばん。
朝起きてすぐ、
寝ぐせでくしゃっとなった髪のまま、
ゆっくりドアを開けて出てきた。
まだ少し寝ぼけた声で、目元をこすりながら、

パパ〜、今日いちばんになれる〜?

毎朝のように、いちばんになれるか聞いてくる。

かけっこが速くなりたい、
お友達よりうまくお絵かきしたい。

そういういちばんも、
成長には大切なことだと思う。

だけど、末っ子のいちばんは、
誰かとの競争ではない。


今朝も、そんなやりとりから始まった。

幼稚園行くよ〜

パパー、今日いちばんになれる〜?

ん〜、頑張ったらなれるんじゃないかな?

分かった〜。
頑張るから、パパも頑張って!

こんなやりとり。

末っ子の大好きなジャムパンを用意して、
制服を並べて、
水筒を置いておく。

はいっ、上脱いで〜
はいっ、ばんざいして〜

次、くつした〜
はいっ、座って〜

ひと通り制服を着せたら、
テーブルまでエスコート。

むしゃむしゃ食べ始める末っ子。
口の周りにジャムをつけながら、
パンをほおばっている。

ここからは、
しばらく一人で食べてくれる時間。

その間に、
私も急いで自分の用意を済ませる。

なんとか用意ができたタイミングで、

食べた〜!

テーブルの方から、
出発の合図が聞こえた。

テーブルまでお出迎え。

行くよ〜、と手をつないで玄関到着。
靴を履かせたら、勢いよくドアを開ける。

さあいこうか!

パパ抱っこっ!

抱っこしてたら遅くなるよ!

いいから、抱っこしてっ!

急いでたんじゃなかったっけ?

そう思いながら、
とりあえず抱っこする。

抱っこすると、
首のあたりに回された腕に、
ぎゅっと力が入った。

でも本当に重たい。
末っ子は、もう年長さん。

そりゃ重たいよね、と
腕に力を込める。

腕がもつところまで、
そのまま抱っこで幼稚園へ向かう。

まだ余力があるうちに、

もう重たいよ〜、降ろしていい?

と聞いてみる。

案の定、

だ〜め〜っ。

腕が限界に近づいたところで、
もう一度お願いして、
ようやくそっと下ろす。

そこからは、
友達の話をしながら歩く。

そこでまた末っ子から、

パパ!いちばんだよっ!

末っ子の声に応えるように、
ぎゅっと手をつないで、
少しだけ末っ子を引っ張るように歩く。

ほら、あと少しだよ!

幼稚園が見えてきた。
何人か子どもたちがいる。

ほらっ!門、まだ閉まってるよ!

やった!いちばんだ!
ほらパパ、早く!

末っ子の足取りが軽くなる。

今度は末っ子が、
私を引っ張るようにして、
駆け足ぎみに門まで。


園児たちが今か今かと、
門が開くのを待っている。

末っ子も、
その並びに入っていった。

友達と並んで、
何かを話している。

さっきまで抱っこをせがんでいた背中は、
もうこちらを向いていなかった。

そろそろ開門。

園長先生がやってきた。
待ちわびた子どもたちから、

せんせい、はやく〜!

ガラガラ〜と、門が開く。

園長先生が子どもたちに、

せーの!

おはようございます!

みんな一斉に駆け出していく。

末っ子も振り返ることなく、
あっという間に見えなくなった。

最近は、もう振り向かなくなった。
それでも、姿が見えなくなるまでは見送ってしまう。

少し息を吐いて、
目的地を会社に変えた。


私が思っていた「いちばん」と、
末っ子が見ていた「いちばん」は、
少し違っていたのかもしれない。

末っ子の「いちばん」は、
誰かに勝つことではなくて、
門の前でみんなと、
門が開くのを待つことだった。

そして、開いた瞬間に、
一緒に走り出すことだった。

駆け出していく瞬間、
さっきまで握っていた小さな手の温もりだけが、
こちらの手のひらに残った。

朝の忙しい時間。
早く戻ってやることはたくさんある。

それでも、
少しだけその場に残ってしまう。

パパ〜、今日いちばんになれる〜?

きっと明日の朝も言われるだろう。

だから、
私は少し早めの時間に、
目覚まし時計をセットした。


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