「病院事務のAI副業」 - たった一瞬で、AIの答えが変わった【実録vol.22】
元病院事務のAI副業実録 — 第二部・経験の映し
元病院事務がAIで副業に挑戦している実録です。
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vol.21を書き終えた夜、一つの文章が頭に残っていた。
「石ころを拾い続けてきた。それだけで、自分にしか書けないものを作っていた」
石ころを拾う視点。それが、AIに何かを渡す時にも働いていた。
意図的に、何度でも再現できるものなのか。
確かめてみることにした。
同じ質問、違う中身
スマホを開いた。AIに、同じ質問を三回投げてみることにした。
一回目は、経験をそのまま伝えるだけ。
二回目は、数字や状況を細かく足す。
三回目は、あの時見た表情や声のトーンを、そのまま渡す。
同じ質問。違うのは、何を渡すかだけだった。
医師の顔
一つ目に選んだのは、医師への増収指導だった。
vol.16で少しだけ触れた記憶だ。最初、資料を差し出した瞬間、医師の視線が一瞬だけ資料から逸れた。口元は笑っていたが、その笑いは長く続かず、何も言われないまま時間だけが流れた。何も言い返さず、次の日もまた資料を持って行った。
同じ経験を、三通りの渡し方でAIに聞いてみた。
①経験だけを渡した
プロンプト:
「医師に増収指導をした経験がある。最初は信頼されなかったが、何度も足を運んで説明を繰り返し、時間をかけて信頼を積み上げた。次にまだ信頼が薄い別の医師に増収指導をする際、どう進めればいいか3行で考えて」
回答:
- 相手の課題や考え方を丁寧にヒアリングする
- 過去の実績や改善事例を根拠にする
- 定期的に訪問し、疑問や不安に誠実に対応する
②数字や状況を足した
プロンプト:
「医師に増収指導をした経験がある。相手は50代の外科医で、これまで事務からの提案を受けた経験がなかった。資料はA4で3枚、診療報酬の算定漏れ箇所を色分けして示した。最初は資料を最後まで見なかった。次にまだ信頼が薄い別の医師に増収指導をする際、どう進めればいいか3行で考えて」
回答:
- 増収ではなく「診療の適正評価・負担軽減」の視点で改善点を1つ提案する
- A4一枚に絞り、その場で2〜3分で説明する
- 返答を急がず、一定期間後に再訪して信頼を積み重ねる
②は、手順が丁寧になっただけだった。
もう一度、あの日のことを思い出してみた。
資料を差し出した瞬間、いろんなことが同時に起きていた。医師の視線。口元の動き。診察室の空気。何を渡せば、この瞬間が伝わるのか。
全部は渡せない。多すぎると、AIも何を拾えばいいかわからなくなる。
迷って、一つだけ選んだ。視線が逸れた、あの一瞬。
③あの時見た顔つきだけを渡した
プロンプト:
「医師に増収指導をした。最初、資料を差し出した瞬間、医師の視線が一瞬だけ資料から逸れた。口元は笑っていたが、その笑いは長く続かず、何も言われないまま時間だけが流れた。何も言い返さず、次の日もまた資料を持って行った。次にまだ信頼が薄い別の医師に増収指導をする際、どう進めればいいか3行で考えて」
回答:
- 最初は資料を説明するより先に相手の現状や困りごとを質問し、「聞く時間」を多めに取って警戒感を下げる
- 増収の話は一般論ではなく、その医師の診療スタイルに合わせた小さな改善案を1〜2点だけ提案する
- その場で結論を求めず、「まずは一度試してみて、結果を一緒に確認しましょう」という伴走姿勢で信頼を積み重ねる
①は、誰にでも言えることだった。
②は、手順が丁寧になっただけだった。
③だけ、あの時の顔つきに答えていた。
数字を、どれだけ足しても出てこなかったものだった。
短くなった文
二つ目に選んだのは、クライアントからのクレーム対応だった。
ココナラで、あるクライアントから「マニュアルが使いにくい」という問い合わせが来たことがある。文面には「忙しいだけなので大丈夫です」と書いてあった。でも句読点の打ち方がいつもと違って、妙に短い文だった。何かに苛立っているような、でも本人はそれを表に出さないようにしている気配があった。
同じ状況を、三通りの渡し方でAIに聞いてみた。
①経験だけを渡した
プロンプト:
「クライアントから『マニュアルが使いにくい』という問い合わせが来た。返信メールを3行で考えて」
回答:
- マニュアルに関するご意見への感謝を伝える
- ご不便をおかけしたことをお詫びする
- 改善の参考にするため、具体的な使いづらかった点を尋ねる
②数字や状況を足した
プロンプト:
「クライアントから『マニュアルが使いにくい』という問い合わせが来た。相手は個人経営のクリニック事務長で、購入から3日後の連絡だった。返信メールを3行で考えて」
回答:
- 不便をかけたことへのお詫びを伝える
- より分かりやすく案内できるようサポートする意思を示す
- どの部分で困っているか、具体的な状況を尋ねる
③あの時感じた気配だけを渡した
プロンプト:
「クライアントから『マニュアルが使いにくい』という問い合わせが来た。文面には『忙しいだけなので大丈夫です』と書いてあったが、句読点の打ち方がいつもと違い、妙に短い文だった。何かに苛立っているような、でも本人はそれを表に出さないようにしている気配があった。返信メールを3行で考えて」
回答:
- ご多忙の中でも率直な意見を寄せてくれたことへの労いを伝える
- 「使いにくい」と感じた点を、無理に聞き出そうとせず尋ねる
- お急ぎでなければこちらで改善案を用意し、都合の良いタイミングでの返信を待つ
①は、定型のお詫びだった。
②は、少し丁寧になっただけだった。
③だけ、相手に説明の負担をかけない返信になっていた。
短い文の向こうにあった気配に、答えていたのは③だけだった。
低くなった声
三つ目に選んだのは、未払い患者との回収交渉だった。
電話が繋がった瞬間、相手は「払います」と即答した。声はしっかりしていた。
でもその直後、声のトーンが一段落ちた。言葉数が、目に見えて減った。
「払います」の後に、何か続くはずだった。理由か、言い訳か、謝罪か。何でもよかった。でも、何も続かなかった。
電話の向こうで、時間だけが流れた。こちらから何かを言うべきか、迷った。急かせば、閉じる。かといって黙りすぎれば、それも圧になる。
数秒、待った。
その数秒の重さが、数字には残らない。滞納期間や金額には、絶対に出てこない種類の重さだった。
同じ場面を、三通りの渡し方でAIに聞いてみた。
①経験だけを渡した
プロンプト:
「未払い患者との回収交渉をした経験がある。最初は支払いを拒まれたが、交渉を重ねて回収できた。次に別の未払い患者と交渉する際、どう進めればいいか3行で考えて」
回答:
- まず患者の事情を丁寧に聞き、支払いを拒む理由を把握して信頼関係を築く
- 支払い義務を冷静に説明し、分割払いなど現実的な選択肢を提案する
- 合意内容を明確に確認し、期限を設定して継続的にフォローする
②数字や状況を足した
プロンプト:
「未払い患者との回収交渉をした経験がある。未払い額は約8万円、滞納期間は半年だった。電話で複数回連絡したが繋がらず、最終的に自宅への郵送で連絡が取れた。次に別の未払い患者と交渉する際、どう進めればいいか3行で考えて」
回答:
- 複数の手段で丁寧に連絡を取り、支払いが難しい事情がないか確認する
- 患者の状況を聞いたうえで、分割払いなど現実的な支払い方法を提案する
- 支払期限を管理し、未履行の場合は院内ルールに沿って対応する
数字を、これだけ足しても、あの数秒の重さは影も形もなかった。
③あの時聞いた声だけを渡した
プロンプト:
「未払い患者との回収交渉をした。電話が繋がった瞬間、相手は最初『払います』と即答したが、その直後、声のトーンが一段落ち、言葉数が目に見えて減った。『払います』の後に続くはずの言葉が続かなかった。次に別の未払い患者と交渉する際、どう進めればいいか3行で考えて」
回答:
- 最初の「払います」は受け止めつつ、「ありがとうございます。では、いつ・いくら・どの方法でお支払いいただけますか?」と具体化して本気度を確認する
- 声のトーンや沈黙が変わったら急かさず、「何かご事情がありますか?」と開かれた質問で支払いを妨げる要因を引き出す
- 相手の事情に応じて分割払いや支払期日を合意し、最後に日時・金額を復唱して約束を明確にする
①は、手順として正しかった。
②は、手段が増えただけだった。
③だけ、電話の向こうの間に、答えていた。
三つとも、同じことが起きていた。
数字をどれだけ足しても、構造は変わらなかった。声のトーンや、目の動きや、句読点の乱れ。そういう小さなものを渡した時だけ、AIの答えは変わった。
石ころの中身
ここまで三つの事例を見てきて、一つ確信したことがある。
数字ではなかった。状況の詳しさでもなかった。
顔つき。声のトーン。句読点の乱れ。言葉にされなかった間。
どれも、小さすぎて、普段なら流してしまうものだった。
vol.21で、それを「石ころ」と呼んだ。
拾っていたのは、違和感だった。
一瞬だけ資料から逸れた視線。長く続かなかった笑い。「払います」の後に続かなかった言葉。句読点が、いつもと違っていたこと。
どれも、感情そのものではなかった。感情が、ふとこぼれた瞬間の違和感だった。
なぜ、気づけたのか
顔つき。声のトーン。句読点の乱れ。
誰でも、目の前にはあったはずだった。でも、大抵の人はそのまま流してしまう。
なぜ自分は、それを流さなかったのか。
増収指導で見た、一瞬だけ逸れた視線と、長く続かなかった笑い。あれは、医師への指導を何十人と重ねる中で、拒絶と警戒の違いを、体が覚えていったからこそ見えたものだった。
クレーム対応で気づいた句読点の乱れ。あれは、未払い患者やクレームの電話を、何百件と受けてきた中で、言葉と本音がズレる瞬間に、何度も立ち会ってきたからこそ拾えた違和感だった。
回収交渉で聞いた、「払います」の後に続かなかった言葉。あれは、責める側にも責められる側にも、両方の立場に立ってきたからこそ、聞き分けられた間だった。
一つひとつは、当時は気づいてすらいなかった。ただ、体が反応していただけだった。
なぜ、気づけたのか。
特別な理論があったわけじゃない。
ただ、昔から一つだけ意識していたことがある。
人は、言葉より先に、顔や声で本音を漏らす。
作り笑いと本当の笑顔は違う。
大きな問題は、小さな違和感の積み重ねから始まる。
知っていることと、気づけることは違う。
同じことは、画像生成でも起きる。
AIに「悲しい人を描いて」と頼めば、誰が見ても悲しいとわかる、絵に描いたような表情が出てくる。でも「悲しい人」に、たった一人として同じ顔はない。俯いたまま動かない目。無理に持ち上げた口角。声をかけても、少し遅れて返ってくる相槌。そういう、その人だけの小さな崩れ方を渡さない限り、AIは「悲しい人のテンプレート」しか描けない。
文章も同じだった。「苛立っている」と一言渡しても、AIは苛立ちのテンプレートを返すだけだった。視線が逸れた、笑いが続かなかった、言葉が続かなかった。そういう、その人だけの崩れ方を渡した時だけ、AIはその人にしか返さない答えを返してきた。
20年、現場でその崩れ方を見続けてきた。その蓄積が、たまたまではなく、毎回同じように、小さな崩れを見分けられる目を作っていた。
だから今回、AIに渡す前に、まず自分の中で三つのことをしていた。
その場面で、何を見たか。
数ある記憶の中から、この違和感を選んだ理由は何か。
そして、その違和感だけを、削らずに渡す。
経験が、見る目を作った。見る目が、拾うものを選んだ。選んだものを、そのままAIに渡した。
プロンプトのテクニックじゃない。20年かけて見てきたものが、渡せるものを決めていた。
聞いてみた
なぜ、こんなに違うのか。AIにそのまま聞いてみた。
プロンプト:
「同じ経験について、感情の描写を加えるとAIの回答が変わるのはなぜ?」
AIの回答:
「感情描写を加えることで、状況の文脈がより具体的になり、AIはその文脈に即した、より個別性の高い提案を生成しやすくなります。感情情報は、相手の心理状態や関係性の力学を推測する手がかりとなるため、一般論ではなく状況に適応した応答が可能になります」
正しかった。
でも、読んだ瞬間、何かが引っかかった。
「それだけじゃない」
そう思った。
資料を差し出した瞬間、一瞬だけ逸れた視線。「大丈夫です」の後にあった、いつもは来ない空白。「払います」の後に、続かなかった言葉。
AIにとっては、全部まとめて「感情情報」だった。
自分にとっては、全部別々の、あの日、あの瞬間の景色だった。
AIは、自分が渡された情報をどう使ったかは説明できる。でも、その情報がどんな一瞬だったかは、渡した本人にしかわからない。
説明できるのは、仕組みだけだった。
AIに、何かを聞いた。
AIは、渡されたものにしか答えられなかった。
数字を渡せば、数字なりの答えが返ってきた。違和感を渡せば、違和感に応じた答えが返ってきた。AIそのものには、色がなかった。
返ってきた言葉は、結局、自分が渡したものの映しだった。
普段、何を見て、何を拾い、何を見過ごして生きているか。それがそのまま、AIとの対話の中に映る。
AIを使うたび、自分の解像度を見せられている。そんな気がした。
あなたにも、あるはずだ
誰かのふとした表情。声のトーンの変化。文章の中の、小さな違和感。
仕事でも、日常でも、気づいていながら流してしまった瞬間が、きっとある。
それに気づけたのは、偶然じゃない。あなたがこれまで見てきたものが、気づかせている。
次にAIに何かを頼むとき、思い出してみてほしい。数字でも、状況でもなく、その一瞬の顔つきや声を。
何かが変わる。それは、もう確かめてある。
正直な現在地
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収益:1,700円
クラウドワークス:登録完了・案件待ち
ココナラ:サービスページ公開中・問い合わせ待ち
X:フォロワー410人・違和感接触装置として運用中
note:フォロワー1,100人・主戦場
有料記事:公開済み・全面アップデート済み
AIとのやり取り:工程ごとに分けて管理中
noteシリーズ:vol.22まで公開完了
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三回、同じ質問を投げた。
変わったのは、渡したものだけだった。
石ころは、感情そのものじゃなかった。感情が、ふとこぼれた瞬間の違和感だった。
AIは何も変えていなかった。変わっていたのは、いつの間にか自分の見る目だった。
この違和感の拾い方を、もう少し実践的な形にまとめました。
「石ころは、AIに渡せる」
vol.22で書いた検証を、誰でも今日から試せる形にしました。
(vol.23に続きます。)
👉シリーズ記事はマガジンにまとめてあります。
「AIで副業」を考えてる人、一緒に試行錯誤しましょう。質問はXのDMへ。
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