見出し画像

【ファジサポ日誌】205. セカンドの攻防 ~ 百年構想L第17節 ファジアーノ岡山(清水エスパルス戦) マッチレビュー ~

(※全文無料公開)
ご支援は任意です。
レビュー作成経費、作成中の筆者のコーヒー代に使用させていただきます。

何シーズンもファジアーノ岡山を観戦し続けていると、観戦日のルーティーンというものが出来上がる。もちろん現在は国内最高峰リーグを楽しめるという幸福な観戦環境に恵まれている訳ではあるが、観戦行為そのものが非日常から日常へとシフトする中、マンネリ化はどうしても避けられない。

そんな中、最近感じるのは比較的最近サポーターとなった新規層の溌溂とした姿である。自席(指定席)付近でリセールにより来場した、新規層と思われるサポーターたちが推しのユニ、グッズを着用しながらファジフーズに舌鼓を打ち、推しのプレーを中心に歓声を上げる。

聞くと新規のシーズンパス争奪戦に敗れたので、こうしてリセールが出た時を狙って観戦しているという。たまたま、まとまった席がリセールに出されていたので仲間と一緒に観戦出来ているという。

いつしか自分が当たり前になってしまったことが、新規のサポーターたちにとってはまだまだ新鮮なのである。

新スタジアム建設にあたっても、こうした層の観戦機会を確保できないことがクラブの大きな課題になっている。2026-27シーズンを前に、そろそろ次の層に観戦機会を譲る時が来たのかもしれないと思っている。

1.試合結果&メンバー

岡山が2-0の完封により、対清水通算2勝目を飾った。
第8節から第11節までは大敗を含む4連敗を喫した岡山であったが、第12節以降は5勝1敗の好調をキープしている。

地域リーグラウンド1戦を残し、岡山は5位に浮上した。この勝利によりWEST-Bの7位以上は確定も、混戦には変わらず最終順位については最高3位の可能性も残す。当然、プレーオフラウンドの相手もまだ分からない。

詳細は不明であるが、現在も負傷、故障による離脱者は一定数発生しているものと思われるが、リーグが終盤を迎えるに連れ、稼働可能な選手の中からベストメンバーを見い出せていることも好調の要因と考える。

5月とは思えない31℃という暑熱の中で行われた一戦であったが、岡山は走行距離、スプリント数で共に清水を上回った。現在の両チームが指向しているサッカーを踏まえると、この点はシンプルに勝敗に直結したと思われる。戦術的な部分については後ほど述べたい。

百年構想リーグJ1WEST第17節 岡山-清水 メンバー

岡山は3-4-2-1、清水は4-3-3、岡山は想定されたメンバーであったと思う。清水に関してはWG(23)北川航也の離脱の影響はあると思える最近数戦であり、CF(9)オセフンを軸とした前線の組み合わせについてはあらゆる選手、組み合わせを試しているように見える。

2.レビュー

岡山目線の対清水ということで言えば、4-3-3における中盤の数的不利をいかに克服するかといった点は、快勝した神戸戦に続きテーマの一つであった。結論を述べれば、セカンドボールの回収効率を高めるという点で岡山が優位に立つことが出来た。

清水のゴールキックと、岡山のゴールキックの場面を比較しながら見てみたい。

百年構想リーグJ1WEST第17節 岡山-清水 清水のゴールキックと岡山の守備

岡山は非保持時に大胆に陣形をボールサイドに圧縮していた。
選手同士の距離を短くすることで、中盤の数的不利など構わずにセカンドボールを回収しようとする構えである。
CF(9)オセフンは岡山の最終ラインと中盤のライン間に下りながら、ロングボールを落とそうとする。
これはマーカーとなる岡山CBを前方に引き出して出来たスペースに、前方への落としをシャドーの(38)髙橋利樹に走り込ませる。そして、つり出されたCB裏のスペースを岡山のWBがカバーすることにより出来るサイドのスペースをWGや同サイドのIHに走り込ませるねらいと考えられる。

前回のアウェイ戦を振り返ると、この清水の2つのねらいは効いていた。
岡山はCBを引き出されないよう、まずボランチがロングボールに競り合うことで対応しようとしていたが、その分、セカンドボールの回収役が不足し、清水に押し込まれる状況をつくられていた。
この点については前回対戦時のレビューでも触れているので参考にしていただきたい。

しかし、今回の対戦では岡山がコンパクトな陣形を築いたことで、(9)
オセフンにCBが付いていってもその後方のカバーが間に合っていた。
サイドのスペースについてもRWB(51)白井康介が中のスペースへ絞る、サイドのスペースを埋める作業を頻繁に行えていた。行える距離であったということが言える。

そもそも(9)オセフンに対応したCB(48)立田悠悟が空中戦において優位に立っていたと思う。相手ワントップの高さ、強さによっては(48)立田の中央での起用は大きな優位性となる。
その(48)立田の跳ね返し、(9)オセフンの後方への落としについても、岡山の陣形が縦にもコンパクトな分、2ボランチのみでなく2シャドーもこぼれ球争いに加われた点も大きかった。

セカンドボールの回収にあたっては清水のアンカー(10)マテウスブエノと両IH(6)宇野禅斗、(47)嶋本悠太が中盤で数的な優位性を発揮出来ていなかった。(47)嶋本はサイドへの配球、サイドのスペースへの飛び出しと、離脱前の(23)北川の役割を担おうとしていたこともあり、若干前目を意識したポジションを取っていたことも影響していたと思う。
一方、岡山は試合後のコメントからもわかるように(41)宮本英治、(5)小倉幸成のダブルボランチの回収意欲が非常に高かった。
自ずとセカンドボール回収で岡山が優位に立つ構造、背景がつくられていたと言える。

岡山は清水の前進がゴールキック、ロングボールを主体としたものと見切って、セカンドの回収に全力を注ぐという岡山の割り切った戦法が当たったと言える。

百年構想リーグJ1WEST第17節 岡山-清水 岡山のゴールキックと攻撃

岡山のロングボールに関しては、GK(52)濵田太郎のキックから飛距離を稼げる点が非常に大きい。2戦連続でスタメンを任されている(52)濵田であるが、その理由は(1)レナート・モーザーの課題もさることながら、彼のこのキック力がチーム戦術の肝になり始めていることが大きいと考える。

ターゲット、CF(98)ウェリック・ポポが(51)住吉ジェラニレショーンではなく主に(15)本多勇喜とマッチアップした選択も良かったと思う。まずこの空中戦とその後のボールキープで岡山が優勢に立つ。

そして、清水のゴールキック時同様にコンパクトな陣形を敷くことで、岡山のダブルボランチが思い切りボールサイドに寄せることが出来ていた。この点もセカンドボールの回収が上手くいった点と言える。
この時にシャドーの(27)木村太哉と(51)白井が清水の左サイドをしっかり監視していたことも清水のカウンターを未然に防ぐという点で機能していた。その分、(98)ポポの落としを(41)宮本がサポート、運ぶという場面は目立っていたように思う。

岡山の清水陣内での攻撃で良かった点は、速攻が難しい状況では素早く逆サイドに展開し直していたことである。相手陣内での速攻と遅攻の使い分けに関しては、LST(8)江坂任のみではなく各選手、その判断、スピードが磨かれていたように思う。

岡山の先制点もスローインからコンパクトな陣形で相手を引き寄せ、背後のスペースを突いた形である。
シンプルであるが、スローインからのワンタッチで無からチャンスを構築するというのは、J1昇格プレーオフでも見られた岡山得意の形である。

ここは(98)ポポのスピードが際立ったと思う。走法から見た目ではそこまでのスピード感は感じられないものの、走り切った距離を考えると相当なスプリント力があることがわかる。清水守備陣にしても距離の詰め方が今一つわからなかったというところかもしれない。
そして、簡単に奪えそうで奪えないボールキープ力も彼の最近の武器になっている。今シーズンはキャンプ中から頭角を現し始めていた(98)ポポであるが、初先発となった第7節C大阪戦で内容、数字共に結果を残したことで自信を深めている様子が伝わってくる。おそらく自身の武器(優位性)を理解し始めたものと推察する。
(51)白井もよく反応していた、彼のスプリントも目立った場面であった。

岡山の前半の攻撃については残念ながらノーゴールとなったCKからRCB(6)大森博が豪快にネットを揺らした場面も見事であったが、25分の崩しは再現性が高いと感じたのでぜひ見直していただきたい。

百年構想リーグJ1WEST第17節 岡山-清水 25分 岡山(27)木村の決定機に至る場面

この時間帯は清水がロングボールのみではなく、下から繋ぐことで打開を図ろうとしていたり、酷暑の影響もあったと思うが両チームともボールを動かそうとしていたと思う。
清水が左サイド(47)嶋本の運びからLST(21)松崎快にショートパスをつけるが、ここを岡山(51)白井と(41)宮本が挟み込んで奪い、後方の(6)大森に出す。
このタイミングで(98)ポポが足元で欲しがっており、これを見た(6)宇野が(98)ポポへのパスコースを消そうと寄せたタイミングで、(6)大森は空いた(8)江坂へパスを通す。
受けた(8)江坂は(98)ポポに預け、逆サイド寄りに走る。このタイミングで(27)木村も逆サイドに走る。(98)ポポが清水守備陣を引きつけて(8)江坂に出し、ドリブルで運んだ(8)江坂から(27)木村にラストパスが出された場面であった。

まず、ボランチ出身らしい(6)大森の瞬間的な配球が光った。
そして(8)江坂の逆サイドに走ったアイデアとその意図を感じていた(27)木村のラン、そしてここも(98)ポポのキープ力が光っていた。
そして、ボールも人も斜めに動くことで、清水の守備網を翻弄していることもポイントである。こうした攻撃はおそらくマルティネスコーチが就任した今シーズンの岡山が新たに鍛えてきた一面ではないだろうか。

ロングボールからのセカンド奪取が上手くいかず、岡山陣内で有効な起点をつくれない清水は、(9)オセフンが(48)立田ではなくLCB(43)鈴木喜丈と競るようになったり、ロングボール自体をシャドーの(38)髙橋に配球、また前述したように下から繋いだりと様々な打開策を試みていたが、少し整理出来ていないように見えた。それでも一度岡山陣内で起点をつくると、47分のようにセットプレーから決定機もつくれる。
岡山としても油断ならない時間が続いていたと言える。

前半の保持率はやや清水が高いものの、ほぼ五分。これが後半は一転して清水が60%以上の保持率を記録する。

清水は後半から2CBが開きGKとの3枚でビルドアップを開始、予めSBが高い位置を取り、岡山の陣形を左右に広げた上でロングボールを配球してきた。こうなると清水が持つ4-3-3の優位性が活かされてくる。
岡山としては、おそらく最も嫌なパターンの攻めであったと考える。

この後半の評価が難しいのであるが、リードしていた展開や暑さを踏まえて、岡山が清水にボールを持たせたとは筆者は見ていない。
清水が能動的にボールを握り、岡山が奪えなくなっていたと評価したい。

(9)オセフンは、岡山の陣形が広がったところでサイドに流れてロングボールのターゲットになる。例えば左サイドに流れた彼にロングボールが入ったタイミングで、岡山はLWB(88)山根永遠、(41)宮本、(8)江坂の3人で囲い込もうとするのであるが、前半と異なりコンパクトで無い分、(5)小倉が寄せてこれない。一方、清水は(9)オセフンの周囲に(6)宇野、(38)髙橋、そして高い位置を取っているRSB(5)北爪健吾がいる。4対3の数的優位をつくれていた。

清水がSBの攻撃関与からサイド攻撃に活路を見出していたのは左サイドも同様で、47分はビルドアップから岡山前線のプレスを無効化し、LSB(25)マテウス・ブルネッティかの運びから(21)松崎がハーフレーンでフリーになりクロス。岡山GKと最終ラインの間のスペースを狙う1点もののクロスであったが、ここは(43)鈴木が体を投げ出して守った。

岡山は高い技術を持つ相手にピッチを幅広く使われると、なかなか対抗策を持てない。前がかりな清水の裏のスペースが広がっていたこともあり、5-4-1のブロックを敷いて撤退。攻撃は背後へのカウンターにかけることになった。この試合のみに関して言えば、暑さ、状況、そして交代カードを踏まえると戦法選択自体は間違いではなかったと思う。寧ろ適切であった。

しかし、今後J1で生き残っていく成長面という点を考えると、後半開始直後からのこのゲーム展開というのは少々しんどい。2点リードなら相手に持たせても良いと思うが、「理不尽なゴール」も頻出するJ1を踏まえると、もう少し高い位置でサッカーをしたいものである。ミドルブロックによる構えなど、戦術的な部分については新たな引き出しも必要に感じた。

そして進境著しい(98)ポポであるが、現在の課題はその運動量にあると感じる。後半も出来るだけ長い時間、プレスを掛けられる体力を身に着けることが出来るかも今後の彼の活躍を左右する要素と考える。

岡山は、後半開始から20分を自陣での集中した守備で我慢し、やはり選手交代から活路を見出そうとする。(98)ポポに代えてCF(99)レオ・ガウショ、(27)木村に代えてCF(99)ルカオを投入、最近のパターンである3-1-4-2に変更する。

このフォーメーション変更はオプションとして機能しているように感じる。その背景にはアンカー適性が高い(5)小倉と、「ボックストゥボックス」を指向する(41)宮本の組み合わせとの親和性が高いことが挙げられる。

そして、課題となっていたのがこのフォーメーション時の2トップの組み合わせであったと考える。(9)レオと(99)ルカオの「スリーナイン」2トップに関してはアウェイ長崎戦でも試されたが、その関係性は機能したとは言い難かった。

岡山の2点目の場面は、この2人の関係性にヒント、活路を見出す意義があったと考える。長崎戦では比較的この2人が縦関係になる場面も多かったように思えたのであるが、3人目のプレーヤーが関与することでこの2人を並列に使えている点が大きい。(9)レオのゴール前でのスペース感知能力や相手守備者との間の取り方は巧いと思う。やはり彼はゴール前で仕事をしてもらい、チャンスメイクは(99)ルカオという形になるのであるが、得意の右足アウトサイドでラストパスを出せた点が大きかった。
そして、(41)宮本の関与である。(99)ルカオにボールが出たタイミングではかなり後方に位置していたように見えたが、あっという間に(99)ルカオの落としを拾える位置まで進出していた。ゲーム終盤に差し掛かる時間におけるこのスプリントは圧巻であった。

3.まとめ

以上、簡単に清水戦を振り返った。
おそらく前回のアウェイ戦を踏まえたであろう岡山の戦略がしっかり嵌り、そこから個の力を活かして先手を奪えたことが勝因である。また、攻撃面に関しては今シーズン当初よりも引き出しが増えている点も確認出来た。
課題はやはり相手にピッチを広く使われた時の対処と言える。
今は自陣ゴール前で我慢しながら有効に交代枠を使いながら凌いでいるが、このゲーム構造自体はJ2時代から大きく変わっているものでもなく、J1への定着を確かなものにしていくためには、もう少し戦術的引き出しを増やしたいところでもある。贅沢な悩みではあるかもしれない。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。

J1定着と総合型スポーツクラブへの成長を図る岡山、念願のJ2復帰へ向けて再チャレンジに挑む北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われる。
鉄道ファンでもあるが、最近は鉄分不足が続く。

ここから先は

0字

¥ 100

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?