【ファジサポ日誌】207. 流動性 ~ 百年構想L第18節 ファジアーノ岡山(セレッソ大阪戦) マッチレビュー ~
(※全文無料公開)
ご支援は任意です。
レビュー作成経費、作成中の筆者のコーヒー代に使用させていただきます。
百年構想リーグ地域リーグラウンドも最終節を迎えた。
ファジアーノ岡山は接戦のJ1WESTにおいて最終順位が4~7位と幅広い可能性を残していた。
リーグ中盤で4連敗を喫して以降はG.W.連戦を含む6戦を5勝1敗の好成績でまとめ、そして最終節の相手は前回勝利したセレッソ大阪(〇2-1)ということで、サポーターの上位進出への期待も高まっていたものと思われる。
しかし、反撃はしたものの一度もイーブンに持ち込めない展開から2-3の敗戦を喫した。
そこに対戦相手の戦術的アップデートがあったことは否めない。
1度勝利した時と同じように2度目も簡単には勝たせてくれない。これが私たちが目の当たりする日本最高峰のフットボールリーグである。
1.試合結果&メンバー
前後半と終始C大阪にリードを許す展開となった岡山は、途中出場CF(9)レオ・ガウショの2ゴールで追い上げるも敗れた。
百年構想リーグ地域リーグラウンドは8勝10敗の6位でフィニッシュ、24得点25失点、得失点差-1の成績で終えた。プレーオフラウンドはEAST6位の浦和とホーム&アウェイで対戦する。
スコルジャ前監督の退任後、田中達也暫定監督の就任以降4勝2敗と持ち直した同チームとの対戦は岡山にとって良い力試しになるだろう。
一方、C大阪はこの勝利で地域リーグラウンドを2位という好成績で終えた。この最終節までいわゆる首位争いに絡むことはなかった同チームであるが、この岡山戦を含めて終盤に猛追した。それだけWESTは混戦であった証でもある。

岡山は前節清水戦(〇2-0)と同様のスタメンである。
リーグ序盤は選手のコンディションの影響も受けながらも様々な選手、組み合わせを試してきた岡山であったが、終盤戦を迎えるにつれ、徐々にメンバーが固定されてきた。
木山監督にとって、この布陣が現在のベストメンバーということだろう。
C大阪は昨シーズンの主軸FWラファエル・ハットンの退団に伴い、横浜FCからCF(9)櫻川ソロモンを獲得、彼を1トップに据えた攻撃の構築をずっと図っていたが、少々苦労していた印象である。
岡山がアウェイで勝利した第7節は、その(18)櫻川が先制ゴールをもたらしたが、やはり全体では彼を軸にした攻撃は上手くはいっていなかった。
そこで、現在は(13)中島元彦、(48)柴山昌也、(11)チアゴ・アンドラ―デ、(14)横山夢樹の前線4人が流動的にポジションを取りながら攻撃を進める「ゼロトップ」的な攻撃スタイルに切り換え、これがモノになりつつある状況である。
(9)櫻川、CB(4)井上瓈生人、MF(7)上門知樹など元岡山所属の選手が多いこともこの試合の楽しみの一つであった。
2.レビュー
特に後半はスコアが激しく動く試合展開であったが、前述したようにC大阪が主導権を握り続けた。その背景には、前項で述べたC大阪前線4枚の流動性とタイトなディフェンスが、普段着のサッカーの岡山を上回ったという構図がある。
この点を中心に述べてみたい。
前半の岡山は良い意味でいつもどおりのサッカーをしていた。
C大阪陣内右サイド寄りを中心にCF(98)ウェリック・ポポがロングボールをキープ、その周囲をRWBやシャドーらが衛星的に動き、彼の落としから前進、クロスに(98)ポポ自身や逆サイドのシャドー、WBが走り込む。
そして、守備時にはボールサイドへダブルボランチを中心に横圧縮、C大阪ボールに質量でプレッシャーを掛けて奪うと、素早くサイドチェンジ、WB、シャドーが広いスペースを縦に前進、C大阪の陣形を広げて出来たスペースへ、後方から味方が湧き上がるように駆け上がる。
シンプルながら岡山が継続的に極めてきた攻撃スタイルを如何なく発揮していたと言える。
しかし、この日のC大阪守備陣はタイトであった。GK(23)中村航輔を含めて最後の守りが堅かったことは言うまでもないが、両SB(27)ディオン・クールズと(66)大畑歩夢が、サイドに流れた岡山アタッカー陣に対して互角以上に渡り合っていた点は、好調の間、同じシチュエーションから突破、チャンスを築いてきた岡山にとって少々誤算であったのかもしれない。
こうしたC大阪のタイトな守備が、岡山のクロスやラストパスを少しずつ狂わせる。前半の決定機逸が岡山の勝機を失わせるきっかけになったことは間違いないと思った。
一般的に巧い選手が揃っているC大阪との対戦では、同チームにボールを持たれる展開が想定されるのであるが、この試合の保持率は岡山が47.4%(JSTATs)を記録した。今シーズン平均値(42.0%)よりは高い数値であったといえる。これはC大阪が前節の名古屋戦(〇6-1)から意図して、相手にボールを持たせる疑似カウンターを狙っていたことも影響していたと考える。岡山には持たされる局面もあった。
結果的に岡山はリードされた展開で「疑似」ではなく、前掛かりになったところをカウンターから失点したのであるが、「奪う」、「狩る」という岡山のバイオリズムを少々崩される展開をC大阪は企図していたともいえる。
自分たちのサッカーを表現出来ている一方で、何だかいつもと空気が違う。
その違和感がスコアとなって現れたのがC大阪の先制点であったといえる。

C大阪(14)横山の先制ゴール自体は筆者もゴラッソであったと思う。LCB(43)鈴木喜丈の脇に(11)アンドラ―デと(14)横山の2人に走り込まれてしまい(43)鈴木も対応のしようが無かったとは思う。
このシーンの粗探しよりは(14)横山が逆サイドまで入り込み、数的優位をつくった背景を押さえておきたい。
そこで上図を示すのであるが、C大阪の攻撃の流動性にはしっかりとした設計があった。まずビルドアップからRSB(27)クールズが岡山LWB(88)山根永遠を引きつける。この時、サイドに流れた(11)アンドラ―デやRSHが基本配置となる(48)柴山が(27)クールズのパスを受けようと下りない点にミソがある。
あえて、RSBと前線の間にスペースをつくり、ここを使う素振りを見せるのである。何となく(27)クールズの「演技」が上手かったように見えた。
岡山はこのスペースをCH(41)宮本英治が埋めようとする。
ポジション的にはLST(8)江坂任が埋めても良いのだが、今の岡山の攻撃の強みはカウンターである。
ボールを奪った際に出来るだけ(8)江坂は前方に、中に配しておきたい。
このスペースに岡山の中盤を1人引き出すことがC大阪のねらいであったと考える。つまり岡山ボランチを引き出す一方でC大阪は(48)柴山が岡山のボランチ脇に下りて、(19)石渡ネルソンや(10)田中駿汰らと3ボランチを形成し数的優位をつくるのである。
そしてサイドに張った(11)アンドラ―デの落としや、それを引き取った(48)柴山からのショートパスを拾わせるのである。
C大阪はゼロトップ気味ではあるが、(11)アンドラ―デは得意のサイドで確実に「1トップ」の役割を果たしていた。そして彼らが左サイド寄りで人とボールを集めることで、逆サイドの(14)横山が中に入ってくるのである。
つまり、この仕組みが(14)横山の先制点の伏線になっているのである。
岡山はこのリーグ戦で中盤の数的不利構造に苦戦し、そしてそれを克服してきたが、今回は全く別の形でこの構造をつくられてしまったといえるのである。実際に岡山は(48)柴山をなかなか捕まえられなかった。
全く別の形と述べたが、よく考えるとイッサム・ジェバリが下りてくるガンバ大阪の組み立てにも若干似ている。
大阪勢、なかなかお洒落である。
C大阪の攻撃の厄介さは下りた(48)柴山がボールを持った後の攻撃にもあった。(13)中島元彦を使った段差攻撃、彼自身のドリブルによる運び、そしてサイドに張った(11)アンドラ―デが中に入り直す動き、更には4人全員が並行に岡山3CBに対して数的優位をもって縦に走る等、その流動性はまさに多彩であり、岡山の3失点のうち後半の2失点の各局面はミス絡みであったのかもしれないが、シンプルにこの流動性についていけなかったように筆者には見えた。
岡山の最終ラインには有力な対抗策はあまり無いように見えたが、強いて挙げるなら、中央CBが仮に(18)田上大地であったならどのような駆け引きをしたかということである。筆者の想像でしかないが、ひょっとしたら彼なら、思い切って高いラインを設定したかもしれない。
そう思う理由は、引いてその前で段差を使って攻撃されるよりも、C大阪に敢えてシンプルな裏抜けを狙わせた方が、相手アタッカーと各CBとの個の駆け引きに持ち込めるからである。彼にはそんなギャンブルを確実性のある勝負に転換してしまう不思議な力がある。
今シーズンの岡山は実は自陣で引いて守っている時こそが、攻撃のチャンスであったりする。この構想リーグで岡山のロングカウンターは驚異的な質を示しているのである。この点については、まとめ記事で採り上げたのでよろしければ確認いただきたい。
つまり、上述したC大阪の攻撃局面に関しても一度ボールを奪えれば、岡山の勝機に切り替わっていた可能性もあったのである。しかし、C大阪のよく設計された構造上の優位性が、岡山の攻撃の起点となるボール奪取をも許さなかったということである。
もう一点、この試合には岡山サイドに大きなポイントがあった。
54分、RST(27)木村太哉に代えてCF(9)レオ・ガウショを投入し、3-1-4-2にシステムを変更したことである。
既知のとおり(9)レオは反撃の2ゴールをマークした。いずれも素晴らしい形からであり、今後の彼の活躍が岡山の決定力不足解決のキーになりそうという点を踏まえれば、彼に十分なプレー時間が与えられた点を好意的に捉えることはもちろん出来る。
しかし、この試合の勝負という点では、普段終盤のオープンな展開で用いている3-1-4ー2に変更したことにより、1点差で時間が十分にある状況ながら岡山は明らかにパワープレー的に前がかりになってしまった。
そこからあっさりとカウンターを喰らい、痛い2失点目を喫した訳であるが、定石どおりであれば(99)ルカオを投入し、前半から起点をつくりながらも、今一つ中へ突破できない左サイドの突破口とするべきであったと考える。とはいえ、木山監督には点差以上の閉塞感があったのかもしれない。
これも意図したチャレンジであったとも捉えることも出来る。
3.まとめ
以上、盛り上がるべき各ゴールシーンに一切触れない異色のレビューであったかもしれないが、筆者にとってはC大阪が編み出した流動性から、改めてJ1の厳しさを味わった試合でもあった。
岡山に期待することは、この流動性に合わせた複雑な戦術を設計することではない。あくまでも自分たちの愚直なスタイルに持ち込むための戦略である。また、糧にしていこう。
今回もお読みいただき、ありがとうございました!
※敬称略
【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。
J1定着と総合型スポーツクラブへの成長を図る岡山、念願のJ2復帰へ向けて再チャレンジに挑む北九州の戦いぶりを追っていく。
日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。
岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われる。
鉄道ファンでもあるが、最近は鉄分不足が続く。
ここから先は
¥ 100
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
