#7|熱中症が命を奪う理由──死亡と後遺症を防ぐために
熱中症シリーズ
〜命を守る完全ガイド〜
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熱中症から命を守る
知らなかったでは済まされない、
予防・後遺症・暑さに備えるカラダづくり
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第1章|熱中症の正体を知る
#7|熱中症が命を奪う理由──死亡と後遺症を防ぐために
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熱中症で、命を落とす。
そう聞いても、
「よほど重症になった場合の話」
「倒れて救急車で運ばれるような人の話」
と思っていませんか?
しかし、熱中症の怖さは、
暑さで氣分が悪くなることでも、
水分が不足することだけでもありません。
前回の記事でお伝えしたように、熱中症が進行すると、
脳。
心臓と血管。
腎臓。
肝臓。
筋肉。
血液の凝固機能。
そして、全身の臓器へ影響が及ぶことがあります。
さらに重症化すれば、
命を失うことがあります。
そして、助かったとしても、
後遺症が残ることがあります。
だから熱中症は、
「少し休めば大丈夫」
と軽く考えてはいけない病氣なのです。
◼️|実際に、熱中症で命を落とす人がいる
2025年5月から9月までに、全国で熱中症によって救急搬送された人は、
100,510人。
消防庁が調査を開始した2008年以降、最も多い人数となりました。
そのうち、医療機関での初診時に、
中等症と判断された人は34,399人。
重症と判断された人は2,217人。
そして、
117人が死亡と確認されています。
ここで一つ、注意してほしいことがあります。
この「117人」という数字は、消防庁の救急搬送統計において、医療機関での初診時に死亡が確認された人数です。
熱中症による年間の死亡者すべてを表している数字ではありません。
つまり、この数字だけを見て、
「10万人運ばれて、亡くなるのは117人なら、それほど怖くない」
と考えてはいけません。
熱中症では、
その場で命を失う人だけでなく、
入院が必要になる人、
重い臓器障害を起こす人、
その後の生活に影響が残る人もいるからです。
◼️|なぜ熱中症で命を落とすのか
熱中症が命を奪う理由は、
単に、
「体温が高くなるから」
だけではありません。
体温調節がうまく働かなくなり、
カラダの中に熱がたまり、
脱水によって循環する血液量が減り、
脳や臓器へ必要な血液を届けにくくなる。
さらに高い体温そのものによって、細胞や組織にも大きな負担がかかります。
そうした変化が進むと、
脳の働きが乱れる。
循環が維持できなくなる。
腎臓や肝臓が障害される。
血液を正常に固める仕組みまで乱れる。
そして、
一つの臓器だけではなく、複数の臓器が正常に働けなくなる多臓器障害へ進むことがあります。
つまり重症の熱中症では、
「暑さに負けて倒れる」のではありません。
生命を維持するための仕組みそのものが、全身で崩れていくことがあるのです。
◼️|熱中症は「時間」が重要になる
ここで知っておいてほしいことがあります。
熱中症では、
どれだけ高い体温になったかだけではなく、高い体温にどれだけ長くさらされたかも重要です。
日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」では、
深部体温が40.5℃を超えた状態が続くと、予後が悪化することが知られているとして、迅速で効果的な冷却の必要性が示されています。
さらに、ガイドラインで取り上げられた研究では、38℃まで冷却するのに3時間以上かかった患者では、3時間以内に達した患者より、死亡や神経学的後遺症を含む転帰不良の割合が高かったことが報告されています。
この研究だけですべてを判断できるわけではありませんが、
ここからも、
重症化した熱中症では、異変に早く氣づき、できるだけ早く対応し、早く体温を下げることが重要
だと考えられます。
熱中症では、その時間がその後の状態を左右する可能性があるということです。
◼️|「助かった=元通り」とは限らない
そして、もう一つ知ってほしいことがあります。
熱中症は、
命が助かれば、それですべて終わるとは限りません。
重症熱中症では、
脳や腎臓などに大きな障害が起こることがあります。
その結果、
神経学的な障害が残ったり、
腎機能が十分に回復せず、
その後も治療が必要になったりする可能性があります。
実際、「熱中症診療ガイドライン2024」でも、治療を評価する重要な指標として、
死亡率だけではなく、
神経学的予後
そして、
人工透析などを含む後遺症
が挙げられています。
熱中症が怖いのは、
その日の体調だけを悪くする病氣ではないからです。
場合によっては、
その後の生活、
仕事、
運動、
そして人生そのものへ影響を残すことがあります。
◼️|見た目だけでは、カラダの中まではわからない
熱中症で特に注意したいのは、
外から見える状態と、
カラダの中で起きていることが、
必ずしも同じではないということです。
本人が、
「まだ大丈夫」
「少し休めばいける」
「もう少し頑張れる」
と思っていても、
カラダの中ではすでに熱が蓄積し、
脱水や循環の変化が進んでいる可能性があります。
さらに脳の働きまで影響を受け始めれば、
本人自身が、
自分の状態を正しく判断できなくなることもあります。
だから、
本人の「大丈夫」だけを判断基準にしてはいけません。
自分だけではなく、
家族。
仲間。
同僚。
子ども。
高齢者。
周囲にいる人の変化にも氣づくことが、
命を守ることにつながります。
◼️|熱中症で本当に怖いのは、「まだ大丈夫」という時間
熱中症は、
ある瞬間に突然、
軽症から重症へ切り替わる病氣として考えるより、
カラダの中で少しずつ限界へ近づいていく病氣として考えることが大切です。
暑い。
汗をかく。
水分が失われる。
熱を逃がしにくくなる。
循環が苦しくなる。
脳や臓器へ影響が及ぶ。
そして、その状態がさらに進んでいく。
その途中で、
どこかで止めることができれば、
重症化を防げる可能性があります。
だからこそ、
「倒れてから熱中症に氣づく」
では遅いのです。
倒れる前に氣づく。
重症になる前に止める。
これが、
熱中症から命を守るために、とても重要な考え方です。
◼️|今日から覚えておいてほしいこと
熱中症は、
暑くて少し氣分が悪くなるだけの病氣ではありません。
重症化すれば、
脳や臓器へ障害が及び、
命を失うことがあります。
助かったとしても、
後遺症が残る可能性があります。
そして、その結果を左右する一つの大きな要素が、
異変にどれだけ早く氣づき、対応できるかです。
だから、
我慢しない。
無理を続けない。
「まだ大丈夫」で判断しない。
自分だけでなく、周囲の人の異変にも目を向ける。
熱中症を軽く考えないことは、
怖がることではありません。
命を守るために、早く行動できるようになることです。
そのためには、
熱中症とは何かを知るだけでなく、
異変に早く氣づけることが重要です。
次回はまず、
ここまで第1章で学んできたことを一度整理します。
そして第2章では、
「熱中症では、どんな症状が現れるのか」
を一つずつ学んでいきます。
異変を知っていれば、
異変に氣づける。
そして、
氣づくことができれば、
命を守る行動を早く始めることができます。
|次回予告文
次回は、第1章の総まとめです。
ここまで7本の記事で、
熱中症とは何か。
なぜ起こるのか。
誰にでも起こり得ること。
予防できる可能性があること。
そして、重症化すると全身や命にまで影響が及ぶことを学んできました。
次回は、
#8|第1章まとめ──熱中症を正しく知ることが命を守る第一歩
ここまでの内容を一度整理し、第2章「熱中症の症状を知る」へつなげます。
|関連記事
今回の記事では、熱中症がなぜ死亡や後遺症につながるのかを解説しました。
その前提となる「熱中症でカラダの中に何が起こるのか」を知ると、今回の内容がさらに理解しやすくなります。
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|参考・出典
総務省消防庁|令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況
2025年5月〜9月の全国の熱中症による救急搬送人員は100,510人。初診時の傷病程度別では、中等症34,399人、重症2,217人、死亡117人と報告されています。なお、「死亡」は初診時に死亡が確認されたものです。
日本救急医学会|熱中症診療ガイドライン2024
重症熱中症では迅速な冷却が重要であり、死亡率だけでなく神経学的予後や人工透析などの後遺症も治療上の重要な転帰として評価されています。
※本記事の内容は、執筆時点で公的機関が公表している情報をもとに作成しています。
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