[裏]第3話:可もなく不可もなくの男、邂逅する
ヤマナカさんとのお見合い当日
私はいつも通り、40分前に
待ち合わせ場所である
ホテル3Fカフェ前に到着。
お見合い決定から当日までの2週間。
その期間で私の状況はかなり変化していた。
5人の方とお見合い。
うち2人と仮交際に入っていた。
結婚相談所での活動の基本的なルールに
関してはあちこちで書かれているので
説明は割愛する。
仮交際2人の時点で私はキャパオーバー
と考えていた。
これ以上、仮交際人数を増やすことは
現実的でないし、お見合いを重ねても
仕方ないのでは、とも。
ついに邂逅
3Fから見える眼下のホテルエントランスに、
ヤマナカさんらしき女性が入ってきたのが
見える。
せっかくなので出迎えようと、
私はエスカレーターのそばへ。
エスカレーターで上がってくるヤマナカさんを
一目見て、私は思った。
「思ってたのと違う!
こんなに華やかでキレイな人なのか!」
ヤマナカさんと挨拶を交わす。
その笑顔は、
プロフィール写真のかたい表情ではない。
朗らかな、生来の陽性さをたたえた
笑顔だった。
お見合いの間中、
私の脳内では度々この言葉が鳴り響いた。
「思ってたのと違う!」
ここまで5人の方とのお見合いで、
ある程度「こんな感じなんだな」と
分かったつもりでいた
生半可な経験を吹き飛ばす衝撃だった。
【お見合いでのヤマナカさんの印象的な発言(の一部)】
①自分の婚活状況を(聞いてないのに)話し出す。
②仲人さんが用意したプロフィールに納得できず、自ら書き直した。
③中学時代、運動部の部長。かつ、生徒会長をしていた。
④私がプロフィールに書いた『好きな映画』を、あらかじめ観てきていた。
⑤帰りのエスカレーターにて。
「私って実際の身長よりでかく見られるんですよ」
※①②は彼女視点で2話、3話に書かれている。
①について。
一般常識として、相手の婚活状況について
尋ねるべきでないことはわきまえていた。
私から詮索したわけではない。
話し出したのはヤマナカさんのほう。
そこから結婚相談所的なプロフィールの
あり方について話すなかで、
基本的な価値観が近そうな感触を得た。
分かりやすいところだと
「料理できることをアピールしなければ
ならない」
といった"傾向と対策"があるのだが、
そういったことに対する違和感が
共通していた。
③に対して思ったこと、それは……
「マンガのキャラか!」
主人公のライバル的な存在として
登場してきそうだ。
④について、私はプロフィールに
好きな映画や作家名を書いていた。
お見合い相手であらかじめ観たという方は
いなかった。
驚くと同時に感激した。
⑤はただの軽口。
身長差30cm近いので、
私が1段低い位置にいてもなお
私のほうが上背がある。
私はそもそも寡黙。
ここまでのお見合い経験から
自分が喋るより聞き手に回った方がよい、
と学んでいた。
この日のお見合いでは
ヤマナカさんが話すのが8割。
明け透けな話題もするのだが、
下品さ、なれなれしさを感じることはない。
「婚活、うまくいかないんですよ~」
と語っていても、
そこにネガティブ感がない不思議。
全てにおいて、
プロフィールから勝手にイメージした像とは
まるで違った。
仕事ばかりの堅物でもない。
営業スキルとしての社交性を
発揮している風でもない。
レディを形容する言葉としては
ふさわしくないかもしれないが天真爛漫。
天性の魅力に出会った。
後々に、
ある人がヤマナカさんのことを評した言葉が
象徴的だったので拝借する。
「太陽みたいな人」
お見合いを終え
時間にして80分程。
お見合いを終え、駅の改札前で別れた。
お見合い前に私が考えていた
「これ以上、仮交際人数を増やすことは……」
云々は雲散霧消。
「そんなことにこだわっている場合じゃない。
仲人さんへ、仮交際希望の回答するぞ」
と決め、ふと気付く。
ここまでのお見合い相手からは
仮交際希望をもらえていたが、
今回も同様とは、ヤマナカさんがOKとは
限らないのでは?
