オルカンは分散だけの道具ではない。稼働率100%の装置だ
これまでの記事では、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)が採用している「時価総額加重平均」という仕組みの合理性と、巷で言われる「欠陥」をあえて放置するメリットを整理した。
今回は、なぜ「ただ持ち続けること」が管理上の最善策と言えるのか、その理由を整理する。
オルカンという道具の真の価値は、単なる分散ではない。投資における「稼働率(アップタイム)」を100%に保てる点にある。インデックス投資の名著『敗者のゲーム』には、「稲妻が輝く瞬間」というエピソードが登場する。市場のリターンの大部分は、ごく短期間の急騰日に集中しており、数十年の投資期間のうち「最高の数日間」を逃すだけで、利益が大きく減少してしまうという事実が示されている。
この稲妻が「いつ」「どこで」光るかは予測できない。あるときは米国市場かもしれず、またあるときは予期せぬ新興国かもしれない。だからこそ重要なのは、予測を放棄し、「どこで光ってもよいように全世界に網を張る」こと、そして「いつ光ってもよいように稼働率を100%に保つ」ことである。
ここで「時価総額加重平均」という仕組みが機能する。この方式は、市場価格の変化に応じて保有比率が自動的に調整されるため、余計な売買を必要としない。これが、低コストの決定的な理由である。売買が最小限であれば、手数料や税金といった確実な資産の目減り、すなわち摩擦が抑えられる。「徹底的に低燃費で、何もしなくてよい」という仕様は、暴落時であってもシステムの電源を切らずに稼働を続けるための支えとなる。
「相場が怪しいから一度止める」という判断は、稼働率を下げるだけでなく、再起動のたびに確実なコストを支払うことになる。時価総額加重平均という低コストな仕組みで、世界中のどこかに落ちる稲妻を待ち続ける。一見すると何もしていないように見えるが、それは「敗者のゲーム」に陥らないための行動である。

